私が映画に登場する素晴らしい時計についての記事を初めて書いてからわずか数ヶ月足らず。もちろん、あれは世の中にある膨大な数の選択肢のごく少数にすぎなかった。というわけで、私はハリウッド俳優たちを夢中にさせる他の時計についての2本目の記事を書くことにした。最初の記事を書いたときとは異なり、幸運なことに、新型コロナウィルスのパンデミックの終わりもようやく見えてきつつある。できればこれが、私たちみんながもうすぐ映画館の大きなスクリーン上で再び映画を楽しめるということを意味しているのだといいのだが。しかし、その日が来るまでは、せめてさまざまな動画配信サービスを使って、素晴らしい時計が登場する映画を見て楽しもうではないか。では、どんなものがあるのか見ていこう!
『地獄の黙示録』: ロレックス GMTマスター ref. 1675、セイコー 6105-8110/9 “キャプテン・ウィラード”
まずは本物の名作映画である、1979年公開の『地獄の黙示録』からスタートしよう。映画の中でマーティン・シーンは、これ以降時計愛好家たちがセイコー “キャプテン・ウィラード” と呼ぶようになったセイコー 6105-8110/9 ダイバーズウォッチを着用している。ちょうど昨年、セイコーはこのアイコニックなタイムピースの復刻版をリリースし、多くのファンを喜ばせた。この映画にはマーロン・ブランドも出演しており、彼はここで通常のブルー&レッドのペプシベゼルを持たない伝説のロレックス GMTマスター ref. 1675を着用している。その上、このベゼルのないGMTマスターはオリジナルのステンレス製ブレスレットではなく、レザーストラップを採用しているのだ。2019年、ブランドが劇中で実際に着用した時計が、オークションで驚愕のおよそ2億1064万円という金額で落札された。このセイコーとロレックスは、これまで映画の中に登場した時計の中で、最もアイコニックな2つの時計である。
『アメリカン・サイコ』: ロレックス デイトジャスト 16013
私はブレット・イーストン・エリスの著作の大ファンである。そこにはしばしば、大袈裟で派手な贅沢三昧の1980年代のイメージが描き出されている。映画化された彼の最も有名な作品のひとつ、『アメリカン・サイコ』においても、そのイメージが背景となっている。クリスチャン・ベールが作中のウォール街の銀行家、パトリック・ベイトマンを演じるのだが、彼はどんどん正気を失い、連続殺人を犯していく。時計という点について言うと、原作の小説の方ではロレックスが26回出てくる。その原作に忠実な映画では、パトリック・ベイトマンはロレックス デイトジャスト 16013をジュビリーブレスで愛用している。1980年代始めにリリースされたこの時計は、ウォール街のやり手銀行マンにぴったりだ。ここでひとつ興味深い裏話をしよう。ロレックスは狂った殺人鬼のストーリーと関連づけられることを嫌い、映画の製作陣に作中でブランド名が出る際には全て「時計」という言葉に置き換えるように要求したのだ。しかし、最終的にパトリック・ベイトマンのロレックスはこの要求にも関わらず映画ファンたちの間で非常に人気のデイトジャストとなった。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』: ロレックス デイトナ、ロレックス デイトジャスト、IWC ビッグパイロット
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に多くのロレックスが登場することは驚きではない。まず第1に、このジュネーヴを拠点とするブランドは豪華さの究極の表現であり、金と権力を持つ人間が明らかに選ぶものだからである。2つ目の理由は、この映画の監督、マーティン・スコセッシがロレックスのブランドアンバサダーだということ。したがって、この映画のロレックスとの繋がりは非常に直接的であり、おそらく主な登場人物にふさわしい時計を用意させるのは簡単だっただろう。ではレオナルド・ディカプリオが見事に演じたジョーダン・ベルフォートから見ていこう。ベルフォートは金無垢のロレックス GMTマスターをジュビリーブレスで愛用…しているだろうか?ディカプリオはタグ ホイヤーのブランドアンバサダーであるため、ロレックス GMTマスターに見えるものは、実は1992年まで製造されていたクオーツ式18Kゴールドのタグ ホイヤー 1000 シリーズなのだ。映画の中でベルフォートは派手なゴールドコーティングの施されたタグ ホイヤー 2000 エクスクルーシブ ref. WN5141のダイヤモンドベゼル付きバージョンも着用している。
もうひとつの伝説的な演技は、ベルフォートの上司、マーク・ハンナ役を演じたマシュー・マコノヒーによるものだ。彼はコンビのロレックス デイトジャスト 16233を着用している。最後に、この映画でジョナ・ヒルが演じるドニー・アゾフ。大金持ちの彼はブラックベゼルが備わる金無垢製ロレックス コスモグラフ デイトナ ref. 116528を着用している。この映画の時計という点について言うなら、これこそスターである。脇役の何人かはIWCのアイコニックなビッグパイロットウォッチを着用している。このように、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』には見事なタイムピースが盛りだくさんだ。
ジェームズ・ボンド: ブライトリング トップタイム、ロレックス クロノグラフ プレ・デイトナ、セイコー 7549-7009 “ツナ缶”
私は前回の記事の一部で有名なボンドウォッチについて書いた。当然のごとく、中でもロレックス サブマリーナとオメガ シーマスター 300Mが最も広く認知されており、最もよく取り上げられる傾向がある。しかし、ボンドは他にもさまざまな時計を着用し、それらを任務達成のために使用している。初期の例としては、Qが『サンダーボール作戦』でボンドに与えたブライトリング トップタイム 007。この大幅に改造された1962年発売のトップタイム ref. 2002にはガイガーカウンターが内蔵されており、これが作中でボンドの役に立つのだ。豆知識: 実はこれが、Qによって改造された初めてのボンドウォッチである。
もうひとつのアイコニックなボンドウォッチといえば、ジョージ・レーゼンビーが『女王陛下の007』で着用したロレックス クロノグラフ ref. 6238。レーゼンビーはボンドのお気に入りであるロレックスサブマリーナ ref. 5513と、かなりレアなこのref. 6238を着用している。後者のモデルは極秘任務中にその存在をあらわにする。レーゼンビー演じるボンドはヒラリー・ブレイ卿になりすまして、スイスアルプス山中にあるエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドの研究所へ潜入する。これは本当に見事な時計で、私のお気に入りのヴィンテージロレックスでもある。
3番目の注目に値するボンドウォッチは、別名 “ツナ缶” としても知られるセイコー 7549-7009。ロジャー・ムーアはこの時計を『ユア・アイズ・オンリー』のダイビングシーンで使っているが、これこそまさにセイコーがツナ缶をデザインした目的なのだ。目新しいガジェットを内蔵せず、改造もされていないボンドウォッチが、時計自体に備わっている機能で本来の目的を果たすのを見るのは非常にいいものだ。
『ラブ・アゲイン』: ロレックス バブルバック、ロレックス サブマリーナ
素晴らしい時計が登場するもうひとつのハリウッドのヒット映画は、楽しいロマンティックコメディの『ラブ・アゲイン』である。この映画では、ライアン・ゴスリングがスタイリッシュな女たらし、ジェイコブ・パーマーを演じている。ゴスリングはこの映画で合計36セットの違う服装を着用しているが、時計に関してはたった2本のみ。1本目はブラウンのレザーストラップを付けたイエローゴールドのロレックス バブルバック ref. 3372。1930年代から1940年代にかけて生産されたバブルバックは現代の基準からするとかなり小さめである。このref. 3372は直径わずか32mmだが、気品ある存在感を放っている。パーマーが着用する2本目の時計はロレックス サブマリーナ ref. 16610だ。これはバブルバックと素晴らしい対比を成す完璧な現代的時計であり、そのセンスの良さと上品さでどんな場面にも映える。
さて、これが人気映画に登場する素晴らしい時計のまとめ第2弾である。もちろん、他にも取り上げるべき映画と時計はたくさんある。したがって、映画に登場するベストウォッチの記事第3弾も検討している。お楽しみに!