長い間、高級時計の世界はロレックスやオメガ、パテック フィリップといった伝統あるブランドが支配してきた。しかし、最近では多くの新進気鋭の若手ブランドが登場し、その作品を発表している。彼らの多くが、革新的な方法で伝統的な時計製造技術に最新のテクノロジーやユニークな素材を融合させている。さらに、斬新でモダンなデザインや先進的な技術を採用するだけでなく、コストパフォーマンスにも優れている。こういった若手ブランドの存在は、時計業界が革新的でダイナミックであり続けるために一役買っていると言えるだろう。また、彼らにはトレンドに素早く対応し、顧客の要望を満たすことができるという強みもある。歴史が浅いゆえに、まだ知名度が低いと思うかもしれないが、コレクターや時計愛好家の間ではすでによく知られた存在だ。そこで今回は、これから人気となるだろう新進気鋭の注目ブランドを5つ紹介したい。
ノルケイン – 伝統とスポーティなデザインの融合
ノルケインは、2018年にスイス時計産業の中心地であるニドーでベン・カッファーが創業したとても若いブランドだ。古くから時計産業と深い関りを持つ家系出身のカッファーは、高品質で伝統的なスイス時計製造を象徴する独立ブランドの創業を目指していた。同時に、モダンでスポーティなデザインを持つ時計を作りたいとも。ブライトリングの元オーナーの息子であり、時計業界のエキスパートであるテッド・シュナイダーや元NHL選手で同ブランドのアンバサダーを務めるマーク・ストライトらのサポートを受け、ノルケインは瞬く間に、時計業界で新進気鋭のブランドとしての地位を確立することに成功した。同ブランドは自身を冒険家やアウトドア愛好家のための高級時計ブランドと位置づけている(詳しいブランド紹介はこちら)。独立ブランドであることにこだわるノルケインでは、ケニッシ社と共同開発した自社製のムーブメントを採用している。ラインアップは、アドベンチャー、フリーダム、インディペンデンスの3つのコレクションからなり、アドベンチャーのダイバーズウォッチ ネベレストはノルケインファンから特に人気で、フリーダム 60クロノはクラシカルなデザインのクロノグラフだ。一方、インディペンデンスでは、実験的でユニークな時計がそろっている。人気のインデペンデンス スケルトンはまさにそんな時計だ。
ミン – ミニマルでモダンなスタイル
ミンは、マレーシアの写真家で時計愛好家のミン・テインが2017年に設立した独立時計ブランだ。設立からわずか数年ながらも、すでに時計市場でその地位を確立している。伝統的なスイスの時計づくりと、ミニマルでモダンなデザインを融合させ、ブランドを成功へと導いた。その幾何学的な形とクリアなラインが特徴だ。見た目だけでなく、現代的で革新的な技術を重視する、目の肥えたコレクターを主なターゲットとしているミンでは、展開する時計を小規模かつ限定とし、時計コミュニティと密接なかかわりを大切にしている。時計はスイスで製造されており、ETAやシュワルツ・エティエンヌといったスイスの有名ムーブメントメーカーと提携している。17.01はミンの最初のコレクションで、発表当初から時計ファンから大きな注目を集めた。以降、20.01や27.01といったコレクションを発表し、同様に高い評価を受けている。
オートランス – 革新的、カラフル、遊び心満載
オートランスの歴史は、2004年に実業家のギョーム・テトゥがスイス、ニューシャテルに会社を設立したことから始まった。同ブランドは、その革新的なアイデアで知られ、複雑で遊び心のあるケースフォルム、スケルトン仕様の文字盤、そしてカラフルなデザインの時計を特徴としている。定番の時計デザインや機能から逸脱した新しいコンセプトの時計を作っており、ジャンピングアワーやレトログラードのミニッツディスプレイといった複雑機構や表示が含まれる。このミニッツディスプレイは、2011年に発表されたHL Ti 2モデルなどに搭載されている。 また、オートランス トゥールビヨン 01のようにトゥールビヨンを搭載したモデルもあれば、時刻を分散表示するモデルもある。その一例がHL 04だ。ムーブメントについては、スイスの有名ムーブメントメーカー数社から供給を受け、また自社でも開発を行っており、自社で製造された部品と、ソプロッドやラ・ジュー・ペレといったスイスの専門メーカーから購入したムーブメントを組み合わせている。
ファーラン・マリ – クラウドファンディングで成功へ
2021年にキックスターターキャンペーンでスタートしたブランド、ファーラン・マリは、短期間で時計界にその地位を確立した。創業者のスイス人工業デザイナー、アンドレア・ファーランとサウジアラビア人の経営者、ハマド・アル・マリは、時代を超越したデザインを持つヴィンテージウォッチに対する情熱を共有している。彼らのコレクションも、クラシックでエレガントなデザインで、往年のデザインと最新の時計製造技術を融合させたものだ。ファーラン・マリが最初に発表したメカクォーツ搭載のクロノグラフは、パテック・フィリップ1463 “Tasti Tondi” を彷彿とさせる外観だった。ファーラン・マリではこのスタイルの時計を「Castagna」と「Rosso Grigio」という名前で展開している。一方、メカニカルラインでは、機械式ムーブメントを搭載した時計を展開し、ムーブメントは、スイスのラ・ジュー・ペレやETA社から調達している。同ラインには、「Mare」、「Disco」、「Sector」、そして「Nero Sabbia」と「Outback Elegy」と種類がある。ヴィンテージウォッチが持つクラシックな魅力にインスパイアされたファーラン・マリの時計は、高品質、かつ優れたコストパフォーマンスを提供している。
ジェラルド・チャールズ – ジェンタのデザインのモダンな時計
ジェラルド・チャールズは、時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタによって2000年に設立されたブランドだ。デザイナーのクリエイティブなビジョンを新たな方法で表現することを追求し、革新的なフォルムに、スイスが誇る時計製造の伝統を融合させている。同ブランドを象徴するのは、柔らかなラインと非対称のフォルムが特徴的なケースで、マエストロとマスターリンクの2つコレクションを中心として展開している。マエストロは、貴金属またはチタン製の超薄型の3針時計とクロノグラフを組み合わせたもので、スケルトン仕様の文字盤を持つものもある。マスターリンクには2モデルがあり、マエストロのケースデザインを踏襲しつつ、一体型ブレスレットを備えている。マスターリンク ブルーはブルーの文字盤、マスターリンク シルバーはシルバーの文字盤を持つ。ムーブメントについては、ジェラルド・チャールズの工房で製造された自社製のもののみが採用されている。
まとめ
特別感、革新性、優れたコストパフォーマンスなど、今回紹介した5つのブランドは、それぞれの強みでもって、今後も高級時計市場でさらに重要な存在となる可能性を大いに秘めている。それは、それぞれの時計が価値を維持し、あるいは上げる可能性を持っているということを意味する。そのため、コレクターや投資をしたいという人は、これらのブランドに注目しておく必要があると言えるだろう。