高級時計と時計収集の世界を素晴らしいものにしてくれている要素の一つが、多種多様なモデルと時計ブランドです。時計界にはあらゆるスタイル、予算、好みに合うものが存在します。しかし、一つの時計ブランドだけを選ぶとしたら?数あるブランドから、たった一つを選ぶというのは簡単ではありません。果たして、Chrono24マガジンのライター陣はこの問いにどう答えるのでしょうか。ブランド選びにChrono24が設定したルールは以下の通り。
- この先ずっと身に着けたいと思うブランドを一つだけ選ぶ
- 予算は問わない
- サイドルール:「ワイルドカード」を使って、選んだブランドの時計のうち、一つだけを他のブランドのものと交換可能。「ワイルドカードウォッチ」にはどんな時計が選ばれるのでしょうか。
筆者は生涯のパートナーとなる時計ブランドとして、コレクター垂涎の数々のヴィンテージモデルを抱え、スイス時計業界を象徴する老舗ブランドでありながらも、気取らずどんなシーンにも身に着けられ、筆者のスタイルに合うブランドを選んだ。そのブランドとは、ジャガー・ルクルトだ。
なぜジャガー・ルクルトなのか?
筆者がジャガー・ルクルトを好む理由は、その時計製造への真摯な姿勢である。1833年の創業以来、時計製造の歴史に常に欠かせない存在であり続けて来た。レベルソは、時計業界初の反転式ケースを備えた時計だ。メモボックスは、世界初の自動巻きアラーム時計だ。最高峰の精度を実現する多軸トゥールビヨン「ジャイロトゥールビヨン」や、温度や気圧のわずかな変化からエネルギーを供給する置き時計「アトモス」も、ジャガー・ルクルトが発表したものだ。これらは筆者にとって、ハイライトの一部に過ぎない。これらのアイコンがすべて自身のコレクションになると想像したら、たまらなく素晴らしいものだ。また、ジャガー・ルクルトはデザイン面でもバラエティーに富んでいる。レベルソは、ブランドのフラッグシップモデルであり、レクタンギュラー型のアールデコ調デザインが特徴だ。そしてマスターコレクションは、クラシカルでエレガント。そのラウンド型ケースは時代を超越したデザインで、手首にさりげなくフィットする。日常使いに最適なシンプルでクリーンな外観で、洗練されたコンプリケーションが印象的だ。一方、ポラリスコレクションは、力強くスポーティなモデルでありながらも、決して大きすぎず、また目立ちすぎない。そして女性向けには、ジュエリーの美しさと高度な時計製造技術を融合させたランデヴーコレクションがある。
ジャガー・ルクルトは、筆者がコレクターズアイテムとして最も魅力を感じるヴィンテージモデルを持つブランドでもある。例えば1950年代に発表された時計の中には、世界初のリューズのない自動巻き時計であるフューチャーマチックがある。あるいは、高精度の耐磁時計であるジオフィジックも。これらのモデルはすべて時計製造の歴史において欠かせないものであり、同時にジャガー・ルクルトの時計がいかに時代を生き残ってきたかを証明する印象的なものたちだ。
一生モノのジャガー・ルクルト
もし筆者が一生もののジャガー・ルクルトを1本だけ選ぶとしたら、同ブランドで最も有名なレベルソ、正確にはレベルソ・トリビュート・クロノグラフを選ぶだろう。この時計を選んだ理由は、トリビュート・クロノグラフは、典型的なレベルソが持つアイコニックな一面を持ちつつも、ケースを反転させるとスケルトン仕様のクロノグラフが表れ、1つで2つの時計を楽しめるからだ。同時に、ストラップも簡単に交換でき、さまざまなシーンや気分に合わせて着けることができる。また、レベルソ・トリビュート・クロノグラフは、筆者が愛してやまないジャガー・ルクルトのすべてを体現している。ブランドのDNAを受け継いだ反転式ケースとクラシックなアールデコ調デザインからは、積み上げてきた伝統や歴史を感じることができる。しかし、その外観とは対象的にこの時計は未来を見据えている。 搭載されているのは自社製キャリバー860で、スケルトン仕様の文字盤によって、さらに印象的に仕上げられている。レトログラード式の30分積算計が特徴だが、スケルトン仕様の文字盤からムーブメントの重要パーツが見えるよう、配置にも工夫がされている。例えば、クロノグラフの作動を制御するコラムホイールをはっきりと見ることができる。もちろん、仕上げにも細心の注意が払われ、すべてのエッジは面取りされ、ブリッジにはジュネーブストライプが施されている。筆者にとってレベルソ・トリビュート・クロノグラフは、技術面で秀でているだけでなく、ブランドの豊かな歴史へのオマージュでもある。スポーティなエレガンスと時計製造における高いクラフツマンシップを巧みに融合させたこのモデルは、ステンレススティール製で、日常のどんなシーンにも使える完璧な1本だ。
ワイルドカードウォッチ:気軽なデイリー・ビーター
ワイルドカードウォッチを選ぶのは、一生モノの時計を選ぶよりずっと大変だった。ロレックスのデイトナでも、パテック・フィリップのワールドタイムでも、何を選んでも構わないから、ついあれこれ考えてしまったからだ。でも、正直なところ、筆者のワイルドカードウォッチはカシオのG-SHOCKだろう。読者の皆さんの中には、なぜラグジュアリーというカテゴリーには入らないこの時計を選んだのか、不思議に思われるかもしれない。高級時計の世界に長く身を置くほど、時計に対する好みが一風変わってくるというのはよく言われることだ。それは確かであり、筆者はちょっと変わった時計にも惹かれる。そして、筆者自身は高級時計の世界に長く身を置けば置くほど、シンプルで堅牢なクオーツ時計の良さを再認識するようにもなった。そのため筆者の理想のコレクションには、定期的なメンテナンスは必要なく、電池交換だけで済む時計もラインアップされる。時計なしで家を出ることは考えられないので、メンテナンスが楽な時計も必須だ。また、外出先によっては機械式時計を着けていきたくない時もある。G-SHOCKは、スポーツをしている時や愛犬と遊んでいる時など、何よりも頑丈さが求められるシーンにいつでも寄り添ってくれる。心置きなく時計を身に着けたいときのパートナーとして欠かせないのだ。そして、他の時計にはないG-SHOCKのユニークなキャラクターも惹かれてやまない理由の一つだ。