2019年01月31日 | 更新日: 2021年05月28日
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自動巻き時計とその仕組みを紹介

Tim Breining
自動巻き時計とその仕組み

自動巻き時計とその仕組み

現在市場で販売されている機械式時計の大部分には、自動巻きムーブメントが搭載されている。このタイプの機構では定期的に時計を着用するだけでゼンマイが巻かれ、手動で巻く必要がない。しかし、自動巻き時計はどうやって自動的に巻き上がるのだろうか。時計をたまにしか着用しない場合、ウォッチワインダーは必要だろうか。また、それ以外にも気を付けるべき点についてこの記事で紹介していく。

自動巻き時計について

自動巻き時計とは、手でゼンマイを巻く必要がなく、時計自身で巻き上げるメカニズムを搭載する時計のことをいう。もちろん、時計が手を伸ばしてゼンマイを巻き始めるわけではなく、ムーブメントを動かすエネルギーは、どこからか供給されなければならない。自動巻き時計のエネルギーは、着用者の動きによって供給されるのだ 

世界初の自動巻き時計はすでに18世紀に製造されていたのだが、これが広く普及したのは、20世紀初頭に腕時計が世間に広まってからであった。腕時計という新しいタイプの時計を着用する習慣により、時計はポケットに静かに収まっているのではなく、手首に着けられて常に動かされるようになった。そして、この変化が自動巻き上げ技術の躍進に一役買ったのだ。

自動巻き機構の仕組み

腕の動きによって、どのようにムーブメントのゼンマイが巻き上げられるのだろうか。手巻き式時計の場合、それはリューズを回すことによって行われるが、自動巻き時計ではローターがその役割を果たす。時計のケースバックが透明なガラスであれば、裏面からローターの動きを眺められる。手首の位置を変えたり腕を動かしたりすることでムーブメント内のローターが回転し、歯車によって時計が巻き上げられる。その際に十分な動力を生み出すために、ローターはタングステンや金、またはプラチナなどの重い素材で製造されている。

自動巻き時計を手で巻くことができるか

搭載されているムーブメントによっては、自動巻き時計を手動で巻き上げられない場合がある。そのような時計の針が止まってしまった場合、再び針が動き出すまで時計を振る以外に巻き上げる方法はない。しかし、大抵の近代的なムーブメントには手巻き機構も搭載されている。時計を頻繁に着用しなかったり、あまり動かさなかったりする場合、このオプションは非常に便利だ。

自動巻き時計を定期的に手で巻くべきではないかどうかはムーブメントの種類によって異なり、一概には言えない。この質問に関しては、メーカーが提供している情報を確認するのが一番だ。一般的に言えることは、不必要に手で巻くと部品の消耗率が高まるということだ。

Panerai Radiomir 5567
写真: Bert Buijsrogge

自動巻き時計のひげゼンマイは切れない

手巻き時計とは異なり、リューズの巻き過ぎによって自動巻き時計のひげゼンマイが切れてしまうことはない。なぜなら「スリッピング・アタッチメント」と呼ばれる部品が、香箱内でゼンマイをスリップさせることで破損を防いでいるからだ。つまりリューズをどれだけ回転させてもムーブメントに問題は発生しない。自動巻き時計を手で巻く時、時計内の音に注意深く耳をかたむけると、ひげゼンマイがスリップする音が聞こえるはずだ。それによってパワーリザーブ表示がなくとも、時計が完全に巻かれたことを知ることができる。

ウォッチワインダーに関して

ウォッチワインダーとはコレクターが時計を飾り、保管し、巻き上げた状態に保つことができるショーケースである。時計と同じように、ウォッチワインダーも手頃な商品から高級品まで様々な価格で提供されている。

時計を数本でも所有している方であれば、おそらくウォッチワインダーの購入を一度は検討したことがあるだろう。その場合、とりあえず便利でお手頃価格の製品を買うべきだろうか。それとも、初めから高価なウォッチワインダーを購入するべきだろうか。

ウォッチワインダー

例のごとく、その質問に対する回答は購入の動機によって異なる。便利さを求めるならば、ウォッチワインダーの購入は間違いなく良い決断だろう。なぜなら、ウォッチワインダーの使用によって何度も時計の時刻を合わせる必要がなくなるからだ。もし永久カレンダーなどの複雑機構を搭載する時計を所有している場合、度重なる手動調整は非常に面倒な作業となる。

しかし、残念なことにウォッチワインダーの使用には欠点もある。ワインダーが時計を毎日必要以上に巻き上げるよう設定されている場合、それによってムーブメントが余計に摩耗してしまうのだ。従ってウォッチワインダーの選び方に関していえば、少なくとも1日あたりの回転数のプログラミングや設定を行えることが望ましい。安い価格の製品を買う場合、ソケットタイマーの使用をおすすめする。

ウォッチワインダーが潤滑油の樹脂化を防ぐという風評が今でも根強くある。しかし、時計には半世紀前から合成潤滑油が使用されており、実際のところ自然の油と違い樹脂化することはない。時計の摩耗を減らし、次のオーバーホールまでの期間を長くすることを望み、時刻と日付を時折手動で合わせることを厭わないのであれば、ワインダーを使う必要はないだろう

安心して時計を楽しむ

自動巻き時計の意義と目的は、毎日時計を手で巻く負担を減らすことである。この記事を読んだ後に、自動巻き時計の取り扱いを難しいと感じた方もいるかもしれない。しかし、心配することはない。もし時計を手で巻くことを楽しいと感じているならそうするべきであるし、ウォッチワインダーに置かれた時計を見るのが好きなのであればそうすればいい。自分が好きなように時計を楽しむことが一番なのだ

ここで挙げたすべての注意点は単なる傾向であり、それを厳格に守らなかったからといって時計がすぐに壊れてしまうわけではない。むしろ、この新しく得た知識を頭の片隅に置きながら、自動巻き時計を安心して楽しんでほしい。なぜなら、それによって時計が持つ素晴らしい技術の価値をより一層感じることができるからだ。そして、まさにこの価値の認識こそが、時計コレクションにとって重要な観点なのではないだろうか。

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記者紹介

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2014年に工学部の学生であった際に、時計への興味を見いだしました。初めはちょっと興味があった時計というテーマは、徐々に情熱に変わっていきました。Chrono24 …

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