ロレックスの時計がすべて、メーカー希望小売価格より遥かに高い値段で取引されているとお思いだろうか?ここでご紹介する3本はサブマリーナやデイトナのようなアイコンウォッチのことを考えると、大半の時計愛好家にスルーされてしまっているモデルだ。ではこの3本は出来が悪いのだろうか?むしろその逆だ。他のモデルにない遊び心や大胆さ、妥協のなさを感じさせてくれる。だがその結果、サブマリーナやGMTマスター IIほどの人気は「まだ」得られていない。高級時計の世界では状況はいつ変わるか分からない。特別だったりユニークなモデルならなおさらだ。そのようなモデルのうちのひとつが製造中止となったら、見過ごされがちだったベンチウォーマーが時計愛好家やコレクターの間で突然もてはやされることがあるものだ。時計ファンの間で現在まだノーマークのロレックスの時計3本をご紹介しよう。
ロレックス ヨットマスター:洋上の万能選手
ロレックス ヨットマスターは非常に特別なロレックスだ。この点については、時計愛好家のほとんど誰もが異論のないところだが、この高貴な印象の時計はベンチ入りしたままで、日常生活で見かけることはごく稀だ。これは恐らく、ロレックス ヨットマスター 40の「派手さ」のためだろう。というのも、このモデルは豪華すぎるサブマリーナと見られかねないからだ。サブマリーナに近いことは否定できないが、決して控えめなツールウォッチではない。ケースはよりエレガントで丸みを帯び、鏡面仕上げとなっている。ベゼルには高品質のプラチナを使用し、オイスターブレスレットのセンターリンクにはポリッシュ仕上げを施すなど、より高級感を強調している。文字盤は美しいサンバースト仕上げだ。秒針と時計のモデル名がカラーで強調されている。明るいブルーのアクセントが入ったロジウムバージョンはとりわけ素晴らしく、筆者はこのバージョンが非常に気に入っている。40mm径というサイズもほどよく、ほとんどの方に合うだろう。手首での存在感はあるが、丸みと若干小さめのサイズのおかげで、サブマリーナよりも遥かにエレガントな印象だが、それがいい。そもそもヨットマスター 40は、カラーアクセントによって他のロレックスモデルよりも遊び心が感じられる、かなり主張の強い時計だからだ。万人受けはしないかもしれないが、遊び心と高貴なキャラクターは他とは違って新鮮だ。200万円前後からという価格はかなりのものだが、他のロレックスの名機と比較すると市場価格はまだ控えめなものだ。なにしろ、公式のメーカー希望小売価格で170万円近くするのだ。もし現行のヨットマスター 40がいつか製造中止になり、新しいカラーコンビネーションに置き換わったとしたら、価格はまたかなり上昇する可能性がある。ヨットマスター 40は価格上昇の可能性を秘めた美しい時計なのである。
ロレックス ミルガウス:(なぜか)最も不人気なロレックス?
もう2年も前から時計ファンからはロレックス ミルガウスが製造中止になるのではないかと思われてきたが、今のところまだカタログに載っている。現行のミルガウスは、このままでは恐らくロレックスで最も不人気なモデルだろうから、正直言って少し驚いている。率直に言おう。ミルガウスのプロポーションはあまりいいとは思えない。直径40mmなのはまったく問題ないが、ラグトゥーラグが50mm近くあり、厚さも13mm以上というのは、この種の時計としては明らかに大きすぎる。しかし、ミルガウスの文字盤と独特で神秘的なグリーンのサファイアガラスは非常に魅力的でユニークだ。その製造プロセスは極秘で、縁がまるで光っているように見える。文字盤上のオレンジのカラーアクセントは稲妻の形をした秒針と素晴らしくマッチしており、他の時計にはない特徴だ。最大1000ガウスの磁場に耐える、完全に科学に特化した時計にふさわしいデザインだ。
ロレックス ミルガウスが気になるならば、黒文字盤のバージョンをお勧めする。この独特な時計の持つ特徴をすべて備えていながら、Zブルーダイヤルのような過剰さはない。グリーンのガラスにブルーの文字盤とオレンジのアクセントという組み合わせはやりすぎだと思う。黒文字盤のもう一つのメリットは魅力的な市場価格である。このバージョンなら130万円前後で購入できる。ただし、古いモデルには独特のグリーンサファイアガラスが採用されていないので注意が必要だ。そのため、筆者ならもう少し予算をかけて、最新のリファレンス116400GVを買うだろう。このモデルは150万円から入手可能で、ロレックス公式のメーカー希望小売価格に極めて近い価格だ。
ロレックス シードゥエラー:サブマリーナの不人気な姉妹モデル?
ロレックス シードゥエラーはロレックス ヨットマスター 40ほどの行き過ぎた遊び心はなく、ロレックス ミルガウスほど癖もないのに、他のロレックスのアイコンウォッチと比べると明らかに人気がない。プロ仕様のダイバーズウォッチであるシードゥエラーの現在の市場価格は、公式のメーカー希望小売価格からそれほどかけ離れてはおらず、200万円前後が多く見られる。人気がない理由はサブマリーナと外見が似ていることと、シードゥエラーの妥協のなさとが相まった結果だろう。シードゥエラーはサブマリーナよりも客観的に見て優れており、より先進的、よりプロフェッショナルではあるが、その一方でサイズも大きく、重さもある。直径43mm、厚さ15mm以上とやや大きめのどっしりした時計で、誰の腕にもフィットするというわけではない。しかし、あなたの手首サイズが大きめなら、あるいは大きめサイズの時計がお好みなら、このプロフェッショナルダイバーズウォッチはあなたにぴったりかもしれない。
シードゥエラーは非常に堅牢で、なんと1220mの防水性を備えている。オイスターロッククラスプはお馴染みのグライドロックシステムだけでなく、フリップロックエクステンションも追加で備えている。シードゥエラーは本格的なダイバーにとってはファーストチョイスだ。深海に潜ることはない時計コレクターも、この時計を一度じっくり見てみると良いだろう。見た目は少し大きめの普通のサブマリーナに見えるかもしれない。サブマリーナと同じアイコニックなデザインだが、赤い文字を採用することでより魅力的で特別な印象になっている。数年後には、このリファレンスにコレクターが殺到することは間違いないだろう。