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過去100年間で最も収集価値の高いロレックス パート2

Thomas Hendricks 著
2025年3月7日
11 分
ONP-1487 2-1 (1)

過去100年間で最も収集価値の高いロレックス パート2

高級時計の世界で、特定のロレックスモデルはその他の時計よりも優れている。それは、ロレックスが優れた品質を提供しているという理由だけでなく、希少性やコレクターからの高い人気にも起因する。今回のパート2では、画期的なGMTマスターからコアなコレクター向けのデイトナまで、最も人気の高いロレックスを引き続き探っていきたい。パート1をまだご覧になっていない方は、先にそちらを読んでほしい。モデルを選定する際に使用した基本的なルールについても説明している。では、過去100年間で最も収集価値の高いロレックス パート2を進めていこう。

ロレックス GMTマスター

ロレックス GMTマスター 6542 トロピカルダイヤル
ロレックス GMTマスター 6542 トロピカルダイヤル

グリシン エアマンは技術的には初のGMT時計であり、ロレックスより2年早い1953年にデビューしたが、GMTマスターほどの文化的影響力はなかった。グリシンがこのカテゴリーを創り、ロレックスがこのカテゴリーを定義したとも言える。結局、誰が最初にそれをやるかではなく、誰がより優れた成果を出すかが重要だ。当時は航空黄金時代であり、ロレックスはパンナム航空からの要請を受け、パイロット向けにGMTマスターを開発した。ここから、GMTマスターのストーリーと伝統がスタートした。また、この時計がロレックスで初めてのラグジュアリー感あるスポーツウォッチであるという点も重要だ。当時、人々は一度のフライトで大洋を横断できるようになり、世界を飛び回る新しいライフスタイルに対応できる時計を手にしたのだった。今回、筆者がまず紹介するのは、1954年または1955年にデビューしたとされるGMTマスター Ref. 6542だ。このリファレンスの時計はもともと、ベークライトと呼ばれるアクリル素材で作られたベゼルを備え、ベゼル上の数字にはラジウム塗料が施されていた。このタイプのベゼルは壊れやすく、塗料に放射性物質が含まれてた。1961年には、このラジウム塗料のせいでがんになったと主張してロレックスを訴えたアメリカ海軍士官もいた。ロレックスは当時すでにこれらを蓄光料のないメタル製に交換していたため、オリジナルのベークライトバージョンはさらに希少なものとなっていた。また、ジェームズ・ボンドファンなら、6542は『007 ゴールドフィンガー』でプッシー・ガロアが着用していた時計としてご存じのことだろう。6542に続いて最も収集価値の高いロレックスGMTマスターは1675で、1959年から1980年まで製造され、ロレックス史上最長の製造期間の一つとして知られている。6542と1675の違いを簡単に見分ける方法は、ケースの側面にあるリューズガードを確認することだ。初期のGMTマスターは、ブルーとレッドの2色ベゼル(現在ではペプシベゼルと呼ばれている)で知られている。ただし、少し変わったモデルを探している場合は、ビビットなピンク色のフクシアベゼルを備えたGMTマスターをチェックしてみてほしい。一部の噂とは異なり、ベゼルはこの色で製造されたもので、退色によるものではない。同様に、ベゼルがすべてブルーの1675「ブルーベリー」を選択することも可能だ。ただし、専門家の間ではこれらの真正性について議論があることを知っておいてほしい。ブルーのベゼルは販売店で販売されたことはないが、ロレックスサービスセンターのテスト用ベゼル、特別な顧客向け、軍用の注文、または単なるアフターマーケット製品であった可能性がある。

ロレックス GMTマスター Ref. 1675 フクシアベゼル
ロレックス GMTマスター Ref. 1675 フクシアベゼル

ペプシファンでないなら、「ファットレディ」としても知られるブラックとレッドのコークベゼルを備えたRef. 16760を選択する手もある。「ファットレディ」という名前は、12時間針と24時間針を独立させたことで、より厚くなったキャリバー3085を収容するためにケースも厚みが増したことに由来している。このキャリバーによって、着用者がタイムゾーンを移動しても、ムーブメントが停止することなく12時間針を1時間単位で前後に移動できるようになった。

ロレックス デイデイト

ロレックス デイデイト

次に紹介するのは、ロレックスのツールウォッチ以外で最も収集価値の高いデイデイトだ。この時計は、リンドン・B・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード、ロナルド・レーガンといったアメリカ大統領の愛用時計であったことから、「プレジデント」としても知られている。マリリン・モンローはジョン・F・ケネディに、ケースの裏蓋に特別なメッセージが刻まれたデイデイトを贈ったそうだ。ケネディ大統領は職員に時計を処分するよう指示したと伝えられているが、後に約1800万円でオークションで落札された。ただし、それが本当にその時計なのかどうかは、疑問が残る。このモデルは、基本的にオイスターブレスレットとジュビリーブレスレットの中間のようなプレジデントブレスレットを備えているため、遠くからでも簡単にそれと見て分かる。もう一つの特徴は、もちろん文字盤の上部に表示される曜日だ。さらに収集価値のあるものを探す場合、アラビア語、ヘブライ語、または中国語で書かれた文字盤を持つデイデイトを探してみてほしい。手頃な価格帯では、1803のような4桁のデイデイトは非常にクラシックで、現行の類似モデルの定価の約3分の1で購入できる。デイデイトの文字盤には幅広いバリエーションがあるので、収集価値を高めるには、ストーンダイヤル、ウッドダイヤル、ステラダイヤル、スタンプダイヤル、またはシルバーでかぎ爪のようなクローダイヤルやドアストップダイヤルなどの珍しいアワーマーカーを搭載したモデルを探すのが近道だ。ベゼルとブレスレットに樹皮のような模様が彫り込まれたバーク仕上げのバリエーションも、年々収集価値が高まっている。

ロレックス サブマリーナー

アイコニックなロレックス サブマリーナーの歴史
ロレックス サブマリーナー 6204

次に紹介するのは、ロレックス史上最も重要な時計であり、歴史上最も重要な時計であると考えられている時計だ。そう、ロレックス サブマリーナーだ。サブマリーナーは、ダイバーズウォッチ、そしてツールウォッチの青写真と言える時計だ。サブマリーナーは、ロレックス、高級時計、あるいは時計と聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるモデルだ。サブマリーナーには、70年以上の歴史の中で12種類以上のモデルがあり、分類方法にもよるが、数百種類のバリエーションが存在する。これを念頭に置いて、市場で最も広く収集されているサブマリーナーの概要を説明しよう。1953年は、エクスプローラーやターノグラフなどのモデルとともにサブマリーナーが誕生した年だ。サブマリーナーを筆頭とするこの世代の時計は、ロレックスにとって過酷な環境に対応できる本格的なツールウォッチメーカーとして変革を遂げるターニングポイントとなった時計たちだ。サブマリーナーは1953年に誕生したが、ロレックスによって正式に発表または販売されたのは1954年になってからのことだ。文字盤に「Submariner」と記された最初の時計はRef. 6204で、ペンシル針と比較的薄いケースが特徴だ。特徴的なメルセデス針は、1954年頃に6205とともにサブマリーナーに採用された。約1年後、エクスプローラー Ref. 1016で使用されている文字盤に似た3、6、9の数字のアワーマーカーを持つエクスプローラーダイヤルのRef. 6200が登場した。このモデルは数百本ほどしか製造されなかったと推測されており、現存する個体はさらに少ない。ただし、Ref. 5512、5513、そして次世代の6538にはエクスプローラーダイヤルが採用されているものもある。

ロレックス サブマリーナー 6538

「ビッグクラウン」Ref. 6538は、多くの人が最も収集価値のあるサブマリーナーだと考えている時計であり、1956年から1959年にかけて生産された。この時計は、『007 ドクター・ノオ』でショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役で着用していたもので、ベゼルの赤い三角形と大きなリューズから簡単に識別できる。この時計には、クロノメーター認定ムーブメントを搭載しているかどうかに応じて、2行表記のバージョンと4行表記のものがある。

ロレックス デイトナ

サブマリーナーよりもさらに収集価値のある時計が一つある。それはロレックス デイトナだ。サブマリーナー、デイトナ、デイトジャストは、ロレックスと聞いて最初に思い浮かべるモデルだ。最初にデイトジャストを購入し、次にサブマリーナー、そしてその後デイトナへと進んでいくのが最も一般的な流れだ。とはいえ、その成り行きや好みは人それぞれだ。

ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref. 6238 「ポール・ニューマン」:史上最も高価なロレックス
ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref. 6238「ポール・ニューマン」

デイトナはロレックスが製造した最初のクロノグラフではないが、デビュー以来製造され続けている唯一のクロノグラフであり、今後もこれに代わるものが出る可能性は低いと思われる。面白いことに、この時計は発売当初は商業的に振るわず、1980年代後半に自動巻きのゼニス デイトナが登場した頃からようやく売れ始めた。これについては後ほどもう少し詳しく説明したい。もちろん、時計収集が主流になったのは、2017年のオークションでポール・ニューマンが所有していたデイトナが1700万ドル(約20億円)を超える価格で落札されたあたりからだ。デイトナやヴィンテージ時計、ロレックスの収集だけではなく、時計収集全体がポップカルチャーに浸透したのだ。ある有名人がロレックスのコレクターで、彼が落札者だったという噂を聞いたことがあるが、それはここで話すことではない。筆者のお気に入りのデイトナはブラックダイヤルのプレデイトナ Ref. 6238だが、正式な初代デイトナは1963年に登場したRef. 6239である。この時計は37mm径で、有名なバルジュー72をベースにした手巻きキャリバー722を搭載していた。デイトナは、1965年にRef. 6240でねじ込み式プッシャーにアップグレード。これにより、当時のロレックスの他のスポーツウォッチに合わせて防水性が50mから100mに向上した。これは、ブラックのアクリルベゼルを備えた初のデイトナモデルでもあった。この間、数種類の文字盤から成るバリエーションが同時に販売されていただけでなく、複数のスチール製デイトナも並行して販売されていた。

ロレックス デイトナ ビッグレッド
ロレックス デイトナ ビッグレッド

1971年から1988年にかけては、改良されたムーブメントを搭載した、今では有名なRef. 6263および6265があった。ねじ込み式プッシャーはデイトナの定番となったが、スチール製やアクリル製のベゼルも引き続き展開されている。これは、6263と6265の収集価値の高い「ビッグ レッド」とシグマダイヤルのバリエーションが発売された時代でもある。デイトナのさまざまなバリエーションが同時に登場していることから、この時期のモデルがいかに実験的であったかがわかる。最も手頃な価格でありながら収集価値の高いデイトナは、おそらく1988年から2000年まで製造された16520「ゼニス」デイトナだ。これらは、大幅に改良されたゼニス エル・プリメロキャリバーを搭載していたためゼニス デイトナと呼ばれており、皮肉なことに、ロレックス初の自社製自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載した次世代の116520よりも収集価値が高い。さらに収集価値の高いものを求めるなら、パトリッツィダイヤルのゼニス デイトナを探してみてほしい。コレクターに人気のサブダイヤル外周に見られる独特のパティーナが特徴的である。これまでは主にヴィンテージに焦点を当ててきたが、収集価値のある現代のロレックス デイトナといえば、レインボー デイトナ、グリーンとゴールドの「ジョン メイヤー」デイトナ、そして新しいデイトナ ル・マンが有力候補だ。これらの時計は、その素材からだけでなく、人気で希少なことから収集価値が高く、高価となっている。

非常に豪華で派手なデイトナ レインボー Ref. 116595RBOW
ロレックス デイトナ レインボー Ref. 116595RBOW

4桁のリファレンスに戻り、皆さんが待ち望んでいたポール・ニューマン デイトナについてお話ししたい。ポール・ニューマン デイトナとは、4桁のデイトナに特有のエキゾチックダイヤルを意味する。唯一の違いはその文字盤だが、ポール・ニューマン デイトナは標準モデルよりも20倍希少であると推定されている。これらの文字盤はロレックスではなく、シンガーという会社によって製造されたため、ロレックス以外のクロノグラフにも「ポール・ニューマン」文字盤が見られるのだ。これらの文字盤の希少性と世界最大の映画スターとのつながりが、オークションや中古市場で非常に高い値段が付く理由となっている。デイトナは発売当初は大ヒットには程遠く、小売価格が高めのこれらのエキゾチックダイヤルモデルはさらに売れ行きが悪かったことを覚えておいてほしい。実際、ポール・ニューマン デイトナのレシートを確認すると、購入されるまでに10年とは言わないまでも、数年間ブティックのショーケースに展示されていたことが確認できる。これを聞いて、タイムマシンさえあれば、と思ってしまうのは筆者だけだろうか。

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記者紹介

Thomas Hendricks

Thomas Hendricks

私はもともと時計を見て育ったわけではありません。しかし、大学を卒業してから数年後、私はオンラインポータル「Watchonista」でライター兼マーケターとして就職。同僚は私に向かって冗談半分で「誰も後戻りできない時計の世界へようこそ!」と言いました。現在はChrono24でプライベートクライアントアドバイザーとして、人生の大事な節目に完璧な時計を探す人々のお手伝いをしています。

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