今回は、現在市場に出回っているロレックスの中で最も希少で人気がある、収集価値の高いモデルについて見ていきたい。
今回のリストについて、何よりも今後のリサーチ時の手引きとして活用してもらえたらと思っている。このリストを見れば、ロレックスのラインアップの中でも特におすすめなモデルを簡単に把握することができる。また、専門用語が多数出てくるが、Z番のシリアルナンバー、マーク5ダイヤル、フラット4、フロッグフットロゴといった細かい専門的な情報まで網羅するのは、現実的ではないので詳しくは触れていない。
そして、今回は可能な限り比較的手頃な価格のモデルを多く含めるように努めた。たとえば、希少で高価なポール・ニューマン デイトナが取り上げられているが、より入手しやすいゼニス デイトナも入っている。
また、「ボーナスポイント」とは、時計の魅力を高める要素や特徴を指すが、頻繁に登場するため、その都度の言及は省略している。ケースに研磨が施されていない非常に状態の良いモデルは常に高価になる。ティファニーの刻印やドミノ・ピザのロゴが入った時計も常に高価だ。同様の現象は、ミラーダイヤルやトロピカルダイヤル、または色あせたゴーストベゼルでもよく見られる。こういった「ボーナスポイント」となる特徴をいくつか備えたモデルの場合、市場価値が飛躍的に高まる。今回紹介するモデルは、こういった要素を含んでいるものがほとんどのため、毎回この部分について触れてはいない。
また、市場やコレクターの嗜好も常に変化するものであり、希少なロレックスの場合、市場価格はリファレンスごとだけでなく、個々の時計ごとにも異なるため、価格についてはあまり触れていない。価格推移の大まかな目安は、例えばChrono24でエクスプローラー Ref.1016の商品ページを最下部までスクロールしたり、Chrono24のウォッチコレクションを利用したりして、確認することができる。
最後に、貴金属製モデルや宝石をあしらったモデルは、ほぼ省略している。これらは素材の性質上高価であり、Chrono24で価格の高い順に並べ替えると、現行のゴールド製サブマリーナーと希少なヴィンテージモデルが並んで表示されるが、希少なヴィンテージモデルの方がゴールド製サブマリーナーよりも最終的には収集価値が高い。
ロレックス オイスター パーペチュアル
ロレックスは、1926年にロレックス オイスターで(おそらく)世界初の防水腕時計を開発した。「おそらく」と言うのは、あまり知られていない企業がその10年ほど前にこの技術を開発したという証拠が出てきているためだ。1927年、イギリス人水泳選手メルセデス・グライツがロレックス オイスターを着用して10時間かけてイギリス海峡を泳ぎ切ったことで、ロレックスはニュースで世界中に知られることとなった。
1931年、ロレックスは360度回転するローターを搭載した初の自動巻きムーブメントを発表。史上初の自動巻き腕時計についても議論の余地はあるが、特許を取得したロレックスのこのシステムは、その後登場したほぼすべての自動巻きムーブメントの礎となった。防水ケースと自動巻きムーブメントの2つの技術があれば、ロレックスのスポーツウォッチにとって最も重要なDNAの2つの要素を手に入れたことになる。これらのダイバーズウォッチは、普段使いに最適で、どんな状況にも対応でき、頻繁に着用すれば何年も正確に動き続ける。
オイスター パーペチュアルは長い間、ロレックスのエントリーレベルのスポーツウォッチであったため、サブマリーナーやデイトナほど収集価値のあるバリエーションは多くない。

近年、カラーダイヤルのロレックス オイスター パーペチュアルがトレンドだが、なかでも一番人気なのが「ティファニー」ブルーバージョンだ。これらのカラフルな文字盤は製造期間が1年間だけだったことから、特別感が増している。2023年には、セレブレーションダイヤルのオイスター パーペチュアルが発売され、これも中古市場では人気モデルとなっている。ヴィンテージのオイスター パーペチュアルには、レアなトゥルービートがあり、1秒に1回振動する機械式ムーブメントを搭載している。対して、現代的なロレックスのムーブメントは1秒間に8回振動する。このトゥルービート機能は、患者の脈拍をより正確に測定するために医師向けに販売されたものだ。このモデルは生産数が少なく、特殊なムーブメントの修理や交換部品の入手が容易ではなかったため、現存するものは収集価値が高くなっている。

その他に注目すべきオイスター パーペチュアルは2つあり、イエローゴールドのブレスレット、特に質感のあるゴールドのブレスレットが付属したイエローゴールドの個体と、短期間だけ発売されたオイスタークォーツデザインに機械式ムーブメントを搭載したRef. 1530だ。当時時計業界を支配し、スイスの時計業界に大打撃を与えた安価で高精度なクォーツ時計に対抗するため、ロレックスが電池式ムーブメントを搭載したオイスタークォーツを開発したことを覚えている方もいるだろう。Ref. 1530は、まさに1970年代風のオイスタークォーツ製ケースの中に機械式キャリバーを搭載した、両方の魅力を持つモデルだ。
ロレックス デイトジャスト
ロレックスはChrono24で最も売れているブランドであり、デイトジャストはロレックスのベストセラーモデルだ。こちらは典型的な普段使いの高級腕時計であり、ロレックス40周年にあたる1945年にデビューして以来絶対的な定番となっている。デイトジャストは、文字盤の窓に日付を表示する初の自動巻きクロノメーター腕時計で、このモデルのために特別に作られたジュビリーブレスレットと、特徴的なフルーテッドベゼルを備えていた。収集価値のあるデイトジャストを見つける簡単な方法の一つは、カラーダイヤルを見つけることだ。ロレックスはカラーダイヤルよりもシルバーの文字盤を多く生産した。そのため、ブラック、ブルー、あるいはパームダイヤルのデイトジャストは、当然ながらより収集価値が高くなる。コレクター向けのデイトジャストを比較的手頃な価格で手に入れるもう一つの方法は、評価の高い販売事業者から状態の良い人気の1601といった4桁のリファレンス番号を持つモデルを探すことだ。手頃な価格ではないものの、さらに収集価値の高いデイトジャストを探している場合は、ストーンダイヤル、ウッドダイヤル、またはプレジデントブレスレットを備えた貴金属製デイトジャストをチェックしてみてほしい。さらに特別感があるのは、樹皮を想起させるベゼルやバンブーベゼルなどだが、これらはかなり珍しく探すのも大変だ。文字盤の話に戻るが、珍しいデイトジャストのバリエーションを探している人向けに、別の動画で数十種類のデイトジャストの文字盤バリエーションをランキング形式で詳細に紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
ロレックス ミルガウス
エクスプローラーとエクスプローラー IIを取り上げる前に、ミルガウスについても簡単に触れておきたい。ミルガウスは1956年に発表され、発電所、医療施設、研究室などで働く人々のために特別に設計された耐磁性時計だった。それまでは、機械式時計の精度は電磁機器によって損なわれる可能性があり、故障した時計で我慢するか、着けるのを止めるのどちらかしか選択肢がなかった。

欧州原子核研究機構(CERN)での試験の結果、ミルガウスは1000ガウスまでの磁力からムーブメントを保護できることが判明した。これがミルガウスという名前の由来だ。ムーブメントを磁気の干渉から保護するために、軟鉄製のファラデーケージが使用された。ファラデーケージを収めるため、ケースは少し厚くする必要があり、またミルガウスは、そのストーリーからGMTウォッチほど市場の大多数向けではないため、大人気の時計となることは決してなかった。それでも、収集価値のあるミルガウスは複数ある。まずは、わずか数年間しか製造されなかった初代のミルガウス Ref. 6543だ。1956年に登場した好景気にあたるRef. 6541は、特徴的な稲妻の秒針が追加され、独自の地位を確立した。これらは、スムースベゼルまたは回転ベゼル、特徴的なワッフル状の文字盤を備え、収集価値が高い。その後に発売されたRef. 1019を探してみるのも良いだろう。これは、1988年に生産終了となるまで発売されていた、最後のヴィンテージミルガウスだ。このモデルは、ブラックまたはシルバーの文字盤バージョンがある。そして、約20年後に登場した現代のミルガウスは、以前のモデルに比べてはるかに多く市場に出回っている。2023年に再び製造中止となり、通常は生産終了によって中古市場で価格が上昇するが、今回はほとんど影響がなかった。そのため、収集価値のあるミルガウスを探している場合、ヴィンテージの個体を選ぶべきだが、価格はかなり高額となる。
ロレックス エクスプローラー、エクスプローラー II
1953年、エドモンド・ヒラリー卿とテンジン・ノルゲイは、現在ではプレ・エクスプローラーとして知られるロレックスを身に着けてエベレスト登頂に臨んた。この成果を受けて、ロレックスはエクスプローラーを開発。エクスプローラーは一般的にサブマリーナー、デイトナ、GMTマスターほど収集価値は高くない。というのも、エクスプローラーは、実際にエベレスト登頂という偉業を達成した時計というわけではなく、それを記念するために作られた時計だからだ。

エクスプローラーの中でも、最も収集価値が高いのは、1960年から1989年まで生産されたRef. 1016だ。初代エクスプローラーではないが、最も重要なモデルであり、多くの人が最もシンプルでありながら最も美しいロレックスの文字盤と評価している。詳細に触れるつもりはないが、フロッグフットロゴやアンダーラインダイヤル、エクスクラメーションポイントダイヤルなどを持つRef. 1016を見つけると、それらはボーナスポイントとなる。さらに、ロレックス アルビノ Ref. 6610、またはロレックス コマンドーなどを探すこともできる。コマンドーは、1960年代後半にアメリカ軍またはAbercrombie & Fitchのため、2年間のみ製造されたエントリーレベルの時計だ。これは、Abercrombie & Fitchが2000年代初頭のようなカジュアルなアパレルブランドではなく、信頼性の高いアウトドアブランドとして知られていた時代の話である。現代のエクスプローラーは収集価値が低いが、他のエクスプローラーよりも際立っているのは「ブラックアウト」エクスプローラーだ。Ref. 1016の後、1990年にRef. 14270が登場し、工場から出荷された最初の個体には3、6、9時位置にブラックのエナメル数字が施されていたようだ。これは、サファイアクリスタルを採用したロレックスの中で最も希少なモデルと考える人が多く、現代的なモデルの中でも特に見つけにくい個体の一つだ。ここで、1971年にデビューしたエクスプローラー IIについて簡単に触れておきたい。エクスプローラー IIは、地下深くで昼夜を把握する必要があった洞窟学者のために設計された時計だ。現在では、複雑機構を搭載したGMT時計としてよく使用されている。エクスプローラー IIの最初のリファレンスは1655だった。この時計の素晴らしいところは、良い意味で時代を感じさせる数少ないロレックスのスポーツウォッチの一つであることだ。ロレックスの時計はタイムレスなデザインで知られているが、Ref. 1655は、前後どちらの時代にもそぐわないデザインで、まるでタイムカプセルのようだ。これらは、イタリア語で「大きな矢」を意味する「フレッチョーネ」というニックネームで呼ばれることが多い。また、「スティーブ・マックイーン」とも呼ばれることもあるが、実際に彼が所有していたわけではない。

収集価値のある現代的なモデルとしては、ホワイトの文字盤で知られるポーラーダイヤルのエクスプローラー IIなどがある。その理由は、ロレックスのスポーツウォッチではホワイトの文字盤が珍しいことと、時が経つにつれて文字盤に心地よい温かみを帯びることがあるためだ。現代のポーラーダイヤルでは、材料が改良され、より耐経年性が向上しているため、このような経年変化によるパティーナは発生しない。
パート2をぜひお楽しみに
まだ定番のロレックスモデルが足りないと感じている方もいるかもしれない。パート2の記事では、サブマリーナーやGMTマスター IIなどのロレックスのアイコニックなモデルを取り上げていきたいと思うので、ぜひ楽しみにしていてほしい。