ここ数年間、新しいGMTウォッチのリリースが増えてきている。ブランド各社はGMTウォッチが頻繁に旅に出る時計愛好家たちの実用的なニーズを満たすことを認識しているのだ。2つ、あるいは3つの異なるタイムゾーンの時刻を同時に表示できる時計は非常に便利である。さらに、GMTウォッチの多くは、とてもかっこいいルックスなのだ。伝説的なロレックス GMTマスターによってこのカテゴリーはかつて定義されたのだが、今ではさまざまな素晴らしいGMTマスター風のルックスのものと、見事な独自の特徴的なルックスを持つものが入り混じっている。しかしこのすべての時計が複数のタイムゾーンの時刻を表示し、それがGMTが著者のお気に入りの時計の複雑機構である理由だ。では、現在市場に出回っているGMTウォッチの中で、最も過小評価されているものをいくつか見てみよう。
1. ロレックス GMTマスター II “ルートビア” Ref.16713
まずはロレックス GMTマスター IIから始めよう。これはスタンダードなGMTマスターではなく、あの有名な “ルートビア” バージョンだ。このゴールド&スチールのロレックス GMTマスターは、アイコニックなブルー&レッドの “ペプシ” ベゼルを持つステンレススチール製バージョンからの変わり目だった。ロレックス GMTマスター II ルートビアは、有名な炭酸飲料に似た、ブラウン&ゴールドの2トーンのベゼルのためにその名を得た。ロレックスは初代GMTマスター ルートビアを1970年ごろにリリース。これは新しいベゼルカラーの他に美しいブラウンの文字盤を持ち、また初のロレゾール(ロレックスで2トーンの時計を意味する名前)のGMTマスターでもあったのだ。初代リファレンスである1675/3は、非常に独特なアワーマーカーを持つ有名なフジツボダイヤルも備えていた。この時計はまた、「タイガー・アイ」や「タイガー・アウゲ」というニックネームも獲得した。後者は同じ名前の貴石を意味するドイツ語である。加えてこれは、この有名な映画スターが所有し、出演作の中で何度か装着していることから、「クリント・イーストウッド」としても知られている。
初代のロレックス GMTマスター ルートビアは、今では見つけるのは難しい。したがって、ロレックス GMTマスター II ルートビアの第2世代であるRef. 16713を入手する方がずっと簡単で実際的である。ロレックスはこのモデルを1980年代後半に発表しrて以来、2006年まで製造してきた。先代ロレックス GMTマスターに比べたときのロレックス GMTマスター IIの利点は、主な時針を個別に調整でき、真のGMTとして機能する点だ。伝説のロレックスキャリバー3185により、これが可能となったのだ。その他の変更点にはサファイアクリスタルへのアップグレード、またスタンダードなアワーマーカーへの変更などがある。ルートビアがもしかしたらこの先ヒットするかもしれないと考えられる理由は、誰もが2トーンの時計を好むわけではないからだ。著者は個人的にゴールドとスチールのコンビネーションの時計、特にロレックス デイトジャストとGMTマスター ルートビアが大好きである。ジュビリーブレスレットと組み合わせると、その配色と素材によるレトロな魅力だけなく、現代にも通じるロレックススタイルを持つ時計を手に入れられるのだ。Ref.16753を探し始めてみると、ロレックスがブラックの文字盤とブラックのベゼルを持つ2トーンの時計も作ったことにすぐに気づくだろう。これは間違いなく美しい時計だが、ルートビアほど注目に値するものではない。価格はおよそ180万円からスタートし、良いコンディションのものでは290万円までにもなる。その見返りに、非の打ちどころのないスタイルの素晴らしいGMTウォッチを手に入れられるのだ。
2. グランドセイコー SBGJ237
GMTマスターのスタイルが大好きではあるが、GMTウォッチ1本に145万円も払いたくないという場合には、グランドセイコー SBGJ237が最適なオプションである。グランドセイコーは数多くのGMTウォッチを作ることで知られている。このブランドのファンの多くは、1960年代からのアイコニックな44GSモデルをベースとしたGMTウォッチを好むが、グランドセイコーは有名なGMTマスターのデザインをいかした、一連のGMTスポーツウォッチも作っている。SBGJ237には、グランドセイコーは44.2mm径のステンレススチール製ケースを採用。これは大型に聞こえるが、この時計は実際に着用してみると予想よりもずっとなじみやすい。ブルー&ホワイトのサファイヤガラスベゼルが備わり、傷に強い点に加えて、暗闇でしっかりと発光する。セイコーのルミブライト蛍光塗料は非常に効果的で、ベゼルの下部と合わせて見事な効果を発揮する。このベゼルにはもう一つのひねりが効いている。というのは、日中の部分が、通常の午前6時から午後6時までではなく、午前6:30から午後5:30までとなっているのだ。
ケース内部には、グランドセイコーはハイビートキャリバー 9S86を搭載。グランドセイコーはこの、現代のほとんどの時計が採用する毎時28800振動に比べて毎時36000振動というより早いスピードのムーブメントで知られている。このために、全体的な正確さが向上している。その上、文字盤の上を秒針が滑るように動くのは素晴らしい眺めだ。グランドセイコー SBGJ237にはステンレススチール製ブレスレットが付属する。ブルーの文字盤とブルー&ホワイトのベゼルのコンビネーションと合わせて、ロレックス GMTマスターとゆうに張り合える、すっきりとしたデザインの優れたGMT時計が手に入るのだ。SBGJ237の定価は79万2000円で、ロレックスGMTマスター(Ⅱ)よりも大幅に低い。中古品でなら価格はおよそ66万円からスタートしており、スタイル、技術的なスペック、完璧な仕上げという点を考えるとまさに掘り出し物である。同じ時計をフレッシュなブルーの代わりに温かいダークグリーンの文字盤で、レザーストラップと合わせて欲しいなら、上品な兄弟モデルのグランドセイコー SBGJ239をチェックしてみて欲しい。
3. オメガ シーマスター プロフェッショナル 300 GMT “50周年記念モデル” Ref.2534.50.00
このリストの最後の1本は、見事なオメガ シーマスター プロフェッショナル 300 GMT “50周年記念モデル” だ。このシリーズの前回の記事では、著者は実は今回の記事にとっても良い追加の1本となるオメガ シーマスター プロフェッショナル 300GMT “グレートホワイト” を取り上げた。シーマスター プロフェッショナル 300 GMT Ref.2534.50.00は、実質的にグレートホワイトの兄弟モデルである。これは41mmのステンレススチール製ケースとステンレススチール製ブレスレットを持ち、あの有名なシーマスター ボンドシリーズの一つである。ブラックのアルミ製24時間表記ベゼル、レッドの24時間GMT針、レッドのGMTの表記が加えられたことで、この時計は若干異なる存在感を放つ。これらの特徴が、このシーマスターを本格的なダイバーズウォッチから、旅先での全てのニーズに応えるクールなルックスのGMTへと変えた。この時計はシーマスターコレクションの50周年を祝ってリリースされた、このブランド初のGMT時計だったのだ。というわけでやはり、これは特別なタイムピースであり、当時のジェームズ・ボンド、ピアース・ブロスナンが手首に装着して宣伝されもしたのである。
その41mmサイズのケース内には、オメガのキャリバー1128が搭載されている。このムーブメントは、ETA 2892の上級バージョンであるオメガのキャリバー1120にGMTモジュールが追加されたもの。ムーブメントは非常に信頼性高く、厚さはわずか3.6mmと、時計の全体的な厚みをスリムに抑える役割を果たしている。この自動巻ムーブメントのパワーリザーブは44時間で、COSC認定済みである。ベゼルに配置された特大の24時間表記の数字が気にならなければ、価格に見合った素晴らしい時計を手に入れられるのだ。オメガ シーマスター プロフェッショナル 300GMT “50周年記念モデル” Ref.2534.50.00の価格はおよそ45万円からスタートし、60万円ほどまで達する。スタイルとレガシーという点に関して手に入るものを考えれば、これは大した金額ではない。
というわけで、いまだに過小評価されたままの、優れたGMT時計3本をご紹介した。それぞれの時計が、異なるタイムゾーンをまたぐ旅の素晴らしいお供となる。他にも素晴らしい隠れた名品について紹介する、このシリーズの今後の記事もお楽しみに。