2020年アメリカ大統領選挙では記録的な数の有権者が投票し、ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領になることになった。就任式が行われる2021年1月20日、私たちは政策の変化だけではなく、大統領の個性においても大きな変化が見られるはずだ。このような変化は現大統領と次期大統領が着用する時計にも表れている。現アメリカ大統領ドナルド・トランプは、トップブランドによるゴールドの時計ばかりを着用しているが、バイデン氏はさまざまな時計を着用している姿が確認されている。ひょっとすると、次期大統領は時計愛好家なのかもしれない。
まずは簡単にトランプ大統領の時計から見ていこう。彼はイエローゴールドのパテック フィリップ エリプスを着用している姿がよく目撃されている。このモデルはゴールドブレスが備わるゴールドの時計にもかかわらず、トランプ氏のような人間にとっては控えめな時計である。第45代アメリカ大統領は、ピンクゴールドのヴァシェロン・コンスタンタン ヒストリック ウルトラファイン 1968を着用していたことでも知られている。彼は2016年の選挙活動中に幾度もこの時計を着用していた。そしてトランプ氏の贅沢なライフスタイルにふさしい3本目の時計は、ゴールドのロレックス デイデイト。
これら3本の時計は、ジョー・バイデン氏の時計とは非常に対照的である。トランプ氏とバイデン氏はどちらも評判の高い一流ブランドの時計を所有しているが、そのスタイルやステートメントには明らかな違いが見られる。それでは「スクラントンの息子」と呼ばれるジョー・バイデン氏がどんな時計を着用しているか見ていこう。
ティソ T-タッチ
ジョー・バイデンはオバマ政権で副大統領を務めていた2010年、第一世代のティソ T-タッチを愛用していた。当時、彼はこのスポーツウォッチのステンレスバージョンをブラックのラバーストラップと合わせて装着していた。ティソはこの高度計、クロノメーター、コンパス、アラーム、温度計、気圧計などの機能を搭載した時計を、冒険好きな人向けとして市場に売り出した。これらはどんな人にも便利な機能で、ベゼルにあるサファイアクリスタルをタッチするだけで操作ができる。
現在ティソは、第2世代のT-タッチを複数提供している。ジョー・バイデンのステンレスモデルは、彼のスポーツ好きな性格にぴったりだ。2020年11月の選挙戦での勝利宣言を行うため、演壇へ走るバイデン氏の姿を見れば明らかのように、彼は体調維持に最大限の努力を費やしているようだ。一部のファンは、今年の初頭に演壇から降りるスロープでつまづいたトランプ大統領とバイデン次期大統領は対照的だと指摘をしている。
セイコー 7T32-6M90 クロノグラフ
ジョー・バイデンが2期に渡って副大統領を務めた際に着用していた2本目の時計は、セイコー 7T32-6M90 クロノグラフ。このクォーツ式のステンレスと金メッキ製スポーツクロノグラフ時計は確かに目立つ。これは少なくとも“ジョー・バイデンのセイコー時計”として知られるようになるまで、セイコーコレクターの間で「ホット」な時計として見なされてこなかった、無名の時計である。7T32-6M90 クロノグラフは、もともと1990年代後半から2000年代初頭にかけて販売されていた。それから約20年以上経過した今でも、ジョー・バイデン氏はこの時計を愛用している。
“バイデンのセイコー”のような時計の利点は、同じようなモデルをお手頃の価格で入手できること。1990年代後半のセイコークォーツ時計は、 (まだ) 定番時計として見なされていないため、コレクターの間で特に人気がある時計とは言えない。そうは言っても、市場には90年代に発売されたセイコー時計はそこまで多く存在しないので、もし購入したいと思っても入手できるまで時間がかかるかもしれない。これから大統領となる人物が今もセイコー 7T32-6M90 クロノグラフを着用していて、なおかつ同じようなモデルがお手頃な価格で見つかることはとても素晴らしいことである。
オメガ シーマスター ダイバー 300M
ジョー・バイデン氏の手首に最もよく見かけらる時計は、オメガ シーマスター ダイバー 300M。ブルーの文字盤とベゼルを備えた前世代のシーマスター、いわゆるジェームズ・ボンド シーマスターを身に着けている時期大統領の姿が何度も目撃されている。しかし、バイデン氏が所有するコレクションにはこれ以外のモデルもあるようだ。2020年の選挙活動の際には、ブラックの文字盤とベゼルを持つ最新世代のシーマスター ダイバー 300Mも着用していた。
この2本のオメガ シーマスターを所有している事実は、バイデン氏が時計愛好家だということを示している。オメガを選ぶということは、彼は品質を見分けることができ、ただ高級で派手な時計を求めているわけではないことを意味している。この時計は彼のキャラクターに合い、多くの人々が前副大統領に与える高い評価と一致する。ジョン・F・ケネディ大統領が1961年の就任式にオメガの時計を着用していたことから、バイデン氏がこの時計を選んだのではと推測する人もいる。これが真実かどうかに関係なく、バイデン氏が長年の間オメガファンであることは知られている。
オメガ スピードマスター プロフェッショナル
そのことはこのリストで紹介する最後の時計によってのみ証明される。ジョー・バイデン氏の最もアイコニックな画像の1つに、リーバイスのデニムシャツにオメガ スピードマスター プロフェッショナルを着用している、2017年に出版された「InStyle」誌のカバー写真がある。このムーンウォッチにより、バイデン氏は時計コミュニティーに多くのファンを作った。バズ・オルドリンが1969年7月20日に月面に足をおろした際に着用していた時計と同じ時計を、アメリカ大統領が着用することは非常に筋が通っている。なんといっても月面着陸は、アメリカ史 (および時計史) において象徴的な瞬間だったのだから。
アポロ11号がニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズを乗せて月へ向かったとき、バイデン氏は26歳だった。彼がスピードマスター プロフェッショナルを着用するのは、この時計がNASAと関連し、初めて月に到着した時計で、アポロ13号乗組員を地球へ無事生還させるのに役立った時計であるからだと思いたい。バイデン以前の大統領はなぜこの時計を愛用していないのか、と不思議に思ってしまう。いずれにせよ、ジョー・バイデンにオメガ スピードマスターは非常に似合っている。彼の大統領任期が、スピードマスターを着用する場面を多く含む、素晴らしいものとなることを願うばかりである。