2018年11月08日
 9 分

オメガ シーマスター デビルをいつか着用したい理由

Jorg Weppelink
オメガ シーマスター デビルをいつか着用したい理由
OMEGA Seamaster De Ville, 写真: Bert Buijsrogge

自身が好む時計について執筆するのは難しい。なぜなら伝えたいことが山ほどあり、文字数が足りなくなることがあるからだ。時計には、何日も語り合えるほどの題材がある。個人的な時計について、長文を書かずにどう短く伝えられるのか。とりあえず書き始め、どう終えるかはあとで考えることにする。まるで自身の時計へ対する愛情のように。

全てのきっかけを作った時計

よくある時計ストーリーだが、私の場合も父が機械式時計の素晴らしさを教えてくれた。父は私が生まれる11年も前からすでに、私に時計を好ませるような基盤を築いていた。1966年、20代前半の父は最初の勤務先によるはじめてのプロジェクトのため、イギリスのベッドフォードに3ヵ月間滞在した。父はその間に貯金をすることができ、オランダへ戻った後に最初の給料で素晴らしい時計を購入した。

父は、200ギルダー (11万円) で手巻き式のオメガ シーマスター デビルを購入した。手巻き式のシーマスター デビルを選んだ理由は、自動巻きの時計より薄く着用しやすかったからだ。そして父はよくこの時計を腕に巻いていた。私は、いつもこの時計を着けている父を見て育った。それ故に、父との思い出の中には欠かせない一品となっている。

引き出しから取り出された時計

OMEGA Seamaster De Ville Image Bert Buijsrogge
OMEGA Seamaster De Ville写真: Bert Buijsrogge

1990年代初頭、父は25年間愛用していたこの時計を着用しなくなった。理由は、一度もメンテナンスへ持って行かなかった事により、時計が動かなくなってしまったからだ。よってこの時計は、引き出しの中に何年も収納されたままの状態でいた。父は10年ほど前に定年退職をしたのだが、退職の少し前に私は母とちょっとした計画を立てた。そしてこの時計を修理に出し復活させ、子供兄弟で定年祝いとしてプレゼントした。動くこの時計を受け取った際に浮かべた父の表情を、私は未だ鮮明に覚えている。父が愛用していたこの時計にまた息を吹き返えさせたい、という私たちの想いが、父を感激させた。私はその瞬間を一生忘れない。そして父はそれ以降、毎日この時計を着用している。私もいずれ、父のオメガ シーマスター デビルを着用することができる日が来ることを願っている。それを着用できることは、私にとってかけがえのない光栄となる。

初めての時計

私自身で選んだ時計の中では、若い頃いくつかのスウォッチ時計を着けていたのを鮮明に覚えている。198912歳の頃、最初のスウォッチを決めるのに永遠に悩んでいたことを記憶している。種類が満載で悩み、他の誰もが持っていない時計が欲しかった。母は呆れ返っていたが、私は最終的に選んだスウォッチ バー オリエンタルにとても満足した。この時計は特に気に入っていた。この記事を書いている際に、実際どのスウォッチ時計が自身初の時計だったかを再確認する必要があった。どの時計か思い出した時、ストラップにドラマーが表示されていたことを思い出し、それが私の音楽へ対する情熱に繋がっている事に気がついた。今でも音楽は私の人生に欠かせないものであり、このことにはすでに12歳の頃に気付いていたようだ。

情熱は伝染する

Omega Seamaster 300M, Image: Bert Buijsrogge
Omega Seamaster 300M写真: Bert BuijsroggeChrono24で出品商品を見る

スウォッチ時計をいくつか着用した後、長い間時計に興味を持たなくなり、スポーツと音楽に没頭していた。フラテロ・ウォッチの創立者であるロバート・ヤン・ブロア氏に出会うまで、時計に対する情熱は更新されなかった。ロバート・ヤン氏と私は、同じビルに住んでいる間に親交を深めた。2003年にそのビルへ入居した際、私たちはすぐに共通点を持っている事を知った。それは、お互いの両親はオメガの時計を所有していること。一つのことが次へと繋がり、次第に時計について多く語り始めていた。

ロバート・ヤンの時計に対する知識と情熱は、見聞きしたことはあるがよく知らなかった時計やブランドに興味を持たせ、幸いにも時計に対する情熱を再点火させてくれた。その後、時計に関することを読み始め、ロバート・ヤンを通して時計を何より愛する人々と知り合うことができ、驚異的な技術で時計を製造し、その技術に大きな情熱を抱く多くのブランドについて知識を得られるようになった。私にとって、そのようなことが時計の世界をとても魅力的なものにしている。

今日に至るまで、ロバート・ヤンと私に共通する根本的なことは、時計ブランドに対する感情的な部分やブランドにまつわる事だ。私たちは、誰もが理解できる純粋なストーリーを持つ、高性能な時計に対する愛情を共有している。そういったストーリーは、ブランドの歴史、優れた技術性、デザイン、または個人的な経験から成り立つことがある。何より重要なのはそれが正真正銘であることで、時刻を示すただの道具を見栄え良くするために作り上げられたストーリーではないことである。素晴らしいストーリーを商品のイメージと組み合わせずに、ただのイメージだけで商売をするのは、私は嫌いである。イメージのみに基づいて商品を売ると成功しやすいのは明らかだ。ブランドが小売業環境で成功するための戦略とアイデンティティーを作成する仕事に就いている私は、そのことを自身の経験から把握している。しかしその経験により、実質的なことが欠如していると、人のブランドに対する理解が長期間続かない可能性が高いことも知っている。

ハートを奪う

Audemars-Piguet-Royal-Oak-Jumbo Image Bert Buijsrogge
Audemars Piguet Royal Oak Jumbo写真: Bert BuijsroggeChrono24で出品商品を見る

高度な技術と数百年もの歴史を持つ産業の一つとして、時計ブランドは時計を愛する人たちの純粋な繋がりを作る素晴らしい機会を与えてくれる。だが、そのことが多くの時計ブランドには欠けている。隔週で時計が売れるわけでもなく、特に過去何年かの間で時計の売り上げが減少している中、人との繋がりを実現するのは大切である。よって、多くの人のハートをどう掴めるかについて考える必要がある。ここが多くのブランドに不足していることだ。ブランドが人々に送るメッセージの多くはブランド自体に絶対的な重みがあるような印象を与え、自身のイメージを押し付けるような保守的な方法で説得しようとしている。このような方法は、今日もこれからも成功しない戦略である。

Omega-Speedmaster-Moonwatch Image Bert Buijsrogge
Omega Speedmaster Moonwatch写真: Bert BuijsroggeChrono24で出品商品を見る

とは言ったものの、時計の世界を素晴らしい産業にするためにはどうすればいいか理解しているブランドもある。そういったブランドは、素晴らしい歴史を持ち、大企業であることは驚くべきことではないはずだ。父が所有している故に私のオメガに対する愛情は永遠に続くが、親友にもオメガの大ファンが多くいる。それ以上に、オメガは筋が通るストーリーを作り出すことと過去へ敬意を払うことの大切さを理解している。同時に、このブランドは技術的な前進も心掛けている。その一例として、最近発売されたオメガ シーマスター 300Mがある。オリジナル版のデザインとストーリーを尊重しつつも、今日の標準を満たす技術的な改良を大きくしている素晴らしい一品だ。

大きなブランドと小さなブランド

Grand Seiko Hi-Beat 36000 Professional 600m Diver, Image: Bert Buijsrogge
Grand Seiko Hi-Beat 36000 Professional 600m Diver写真: Bert Buijsrogge

他のブランドで素晴らしいと思うのは、セイコーだ。自社の時計を生産するのに費やす時間や絶対的な情熱、また専門知識には驚かさせる。5万円、10万円という価格に関係なく、それぞれが同じく優れた技巧と伝統を尊重して製造されている。グランドセイコーは多くの国産時計の一つ、と思う人は間違っている。ここでは、そういう人たちに焦点を絞っていない。グランドセイコーのストーリーを理解し、グランドセイコーを選んで購入した人たちが重要なのだ。

Rolex Submariner, Image: David Heitz
Rolex Submariner写真: David HeitzChrono24で出品商品を見る

3つ目に好むブランドは、ロレックス。このブランドが何十年も通してどれだけ多くのアイコニックな時計を生み出してきたかを思うと、どこか途方もなく感じる。ロレックスについて特に気に入っていることは、同ブランドのデザイナーたちが考案する時計はどれも、すぐに真のクラシック時計と感じさせることだ。他のブランドが提供するスポーツウォッチからは、ほぼいつもどことなく不自然な感じを抱き、好きになれない。だが、個人的な意見だが、ロレックスはサブマリーナ、GMT マスター、シードゥエラー、そしてヨットマスターといった多くのスポーツウォッチを典型的なデザインで製造してきている。それと卓越された技術を持ち合わているロレックスが、世界でもっとも大きな高級腕時計ブランドになるのは理解できる。

Grönefeld One Hertz, Image: Bert Buijsrogge
Grönefeld One Hertz写真: Bert Buijsrogge

大きなブランドに加え、個人的には新たな時計製造とデザインに挑む小さめのブランドも好きだ。ハイエンドなブランドであるMB&FHYT、またはウアヴェルクはまさにそうで、各ブランドから新たな商品が発売されるのをいつも楽しみにしている。さらに、優れたデザインを目指し、他のどのブランドより際立った時計をブランド哲学としているセブンフライデーやリンデ ヴェルデリンなどの時計をチェックするのも好きだ。最後に述べておきたい個人的な繋がりを感じるブランドは、グルーネフェルドである。自身の故郷であるオランダのオルデンザール出身の二人の男子が、時計業界で素晴らしく名を挙げていることには感激する。この町は私の両親が住んでいる場所である。近い将来また両親を訪ね、できたら父とオメガ シーマスター デビルについて、あと最近購入したスウォッチ バー オリエンタルについて話す機会を作りたい。

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記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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