時計の世界王者といえばひとつしかない。それはロレックスだ。しかしそれに近い、あるいはそれより贅沢なイメージさえ持つ時計ブランドと言ったら、それはカルティエだろう。ブランドはジュエリーブランドとしてスタートしたが、20世紀初頭から時計を作り始めた。するとすぐに有名人、王族、その他にも重要人物たちがカルティエの時計を着用し始めた。そして、それは今も変わっていない。私に言わせれば、カルティエは贅沢さを体現するという点において、王者であるロレックスと張り合える唯一のブランドである。
近年、カルティエの人気は大きく上昇している。人気の高いカルティエ タンクとカルティエ サントスモデルのChrono24マーケットプレイスにおける価格が上昇。それに加えて、今年初めのWatches & Wonders 2022でカルティエは最も称賛されたブランドであり、私はそれはごく当然のことだと思っている。過去数年間、カルティエは自社のアイコニックな定番をアップデートすることで影響を与え、史上有数のエキセントリックな時計を復刻することで自社のアーカイブの素晴らしい万能性を示すことに成功してきた。今年も例外ではなく、同ブランドからはいくつかの見事な新作リリースがあった。しかしカルティエは何十年もの間人気を保っており、長年の間、数多くの有名人たちがカルティエを手首にまとってきた。ここ最近の人気の高まりを受けて、これまでの著名なカルティエ愛用者の一部を見てみるいい機会ではないかと思う。
クラーク・ゲーブル
銀幕上でカルティエを着用していた最初の映画スターの1人は、俳優のクラーク・ゲーブルだ。ゲーブルは1932年の映画『紅塵』で、アラビア数字とスモールセコンドを備えたカルティエ タンクを着けている。ほとんどのモデルがローマ数字を持つため、これはかなり独特なタンクである。また、当時のタンクモデル全てがそうであるように、レアなタイムピースだ。というのは、カルティエは高価だったため、それは富とステータスを示すために買うものだったのだ。それこそが、世界の最も著名なセレブや王族たちがカルティエを欲しがった理由である。
オードリー・ヘプバーン
カルティエを愛用したもう1人の映画スターは、オードリー・ヘプバーン。彼女は史上最大のスタイルアイコンとして知られている。『ティファニーで朝食を』での彼女の役は、間違いなく人々の記憶に長く残るものだろう。この映画は1961年に公開され、真珠のネックレスとダイヤモンドの指輪を着けたヘプバーンが、60年代ファッションを完璧に表現している。作中のある時点で、ゴールドのディテール、ブラウンのレザーストラップ付きのカルティエ タンクがヘプバーンの手元を美しく飾っているのが見られる。それは彼女が愛し、後に自分の時計コレクションに加えたという時計だった。
スティーブ・マックイーン
再度のリメイクが待たれる映画のひとつに『華麗なる賭け』がある。1999年、ピアース・ブロスナンは1968年のクラシックのアップデート版『トーマス・クラウン・アフェアー』でトーマス・クラウンを演じた。それからほぼ25年がたった現在、今一度のリメイクにまさしく最適なタイミングなのではないだろうか。そうなれば、おそらく1968年のオリジナル版でスティーブ・マックィーンの手首を飾ったカルティエ タンク サントレがその栄光とともに返り咲くのを見られるかもしれない。マックィーンと言えば、いうまでもなく『栄光のル・マン』でホイヤー モナコを着用したことが有名で、また誤ってロレックス エクスプローラー II Ref.1655とも関連づけられている。しかし『華麗なる賭け』はそれらよりも前に存在した。その役はマックィーンが通常演じたタフなキャラクターとは違ったが、エレガントなトーマス・クラウンとしての彼にその時計は非常にフィットしていた。
モハメド・アリ
もう1人の有名なタンク愛用者に、モハメド・アリがいる。伝説のボクシングチャンピオンは、カルティエ タンク JCを着用していた。JCはジャン-ジャック・カルティエを意味する。しかしここで一つ豆知識を。同ブランドはもともとこの2番目のタンクモデルをルイ・カルティエにちなんでタンク LCと名付けたが、彼が亡くなった後で、名前がタンク JCへと変えられたのだ。70年代に、アリがこの時計を装着しているのが何度も見かけられた。彼の手首にはこの時計はかなり小さめに見えるが、それはあくまでも個人的な好みの問題である。それに加えて、それでもこれはカルティエとして非常にはっきりと分かるものだった。
アンディ・ウォーホル
世界的に有名なアーティスト、映画監督、そして音楽プロデューサーのアンディ・ウォーホルは大の時計愛好家だった。彼はさまざまなブランドの時計を集めていたが、ウォーホルと言えば常に、ホワイトの文字盤、ブラックのローマ数字、そしてブラックのアリゲーターレザーストラップを備えた彼のイエローゴールド製カルティエ タンクで記憶されているだろう。それはウォーホルのお気に入りであり、彼はかつてこう言った。「私は時間を知るためにタンクを着けているのではない。実は巻き上げたこともないんだ。身に着けるための最高の時計だからタンクを着けているんだ」今日のスタイルに影響を与えた男の言葉だけに、これは非常によく表現していると言える。
ダイアナ妃
英国王室もまたカルティエ好きとして知られている。キャサリン妃を含め、英国王室ファミリーの多くの女性たちがカルティエを愛用してきた。しかし中でも最も有名な女性はダイアナ妃であり、彼女はゴールドのカルティエ タンクをさまざまな場面で着用していた。カルティエの時計は英国の上流階級にとっては、定番の “ユニフォーム” の一部なのだ。しかしダイアナ妃はいつもクラシックな英国スタイルに現代的な捻りを加え、よりモダンに見えるようにしていた。それが彼女をスタイルアイコンにしたのだ。
ジャッキー・ケネディ
ジャッキー・ケネディと、彼女の夫、ジョン・F・ケネディはどちらもカルティエの時計を装着していた。しかし元大統領はオメガもまた愛用し、ロレックスの時計とも関連づけて考えられるのに対して、彼の妻のお気に入りと言えば、間違いなくカルティエだった。彼女のゴールドのカルティエ タンクは史上最も有名なカルティエウォッチのひとつとなった。彼女はその時計を義理の弟、スタニスラス・ラジウィル王子から贈られたのだった。この時計の裏蓋には「Stas to Jackie / 23 Feb. 63 / 2:05 AM to 9:35 PM.」と刻まれている。この刻印は、ファミリーがそろって参加した80キロメートルウォークにちなんだものだ（とはいっても、ジャッキーと夫はその一部しか歩いていない）。この時計は2017年にオークションに出され、379,500ドルという驚きの金額で落札され、史上最も高額なカルティエ タンクとなった。
ミシェル・オバマ
カルティエ愛用者として知られるより最近のアイコンを考えてみると、最初に浮かぶ名前のひとつがミシェル・オバマである。彼女は8年間のファースト・レディの任期中、ステンレスのカルティエ タンク フランセーズを愛用していた。夫のバラク・オバマはあまり印象的ではない時計を選んだが、ミシェル・オバマはホワイトハウス内ブルールームでのアメリカ合衆国ファースト・レディとして最初の公式ポートレートにもタンク フランセーズを着用した。オバマは素晴らしいスタイルを持つ女性として知られるようになり、カルティエはまさに完璧な証明だった。
カニエ・ウェスト
このリストに入るもう一つの名前はカニエ・ウェスト。彼はロレックス、オーデマ・ピゲ、パテック フィリップなどのさまざまなブランドの時計を着用してきていることで知られている。しかし彼はより控えめな時計も好む。例えば、アイクポッドである。そして彼はアイコニックなカルティエ クラッシュをかなり定期的に着用する人間なのだ。クラッシュの着想は、1960年代にロンドンで起こった車の事故（カークラッシュ）から来ていると言われている。異常な高熱の結果、現場から回収された1本のカルティエタイムピースの形が完全に変わってしまっており、それがクラッシュのデザインのインスピレーションとなったのだ。それは奇妙な、サルバドール・ダリのようなデザインであり、一目で見分けのつくものだ。というわけで、カニエ・ウェストの手首にあるのも見つけやすかったのだ。
カルティエは優れた時計ブランドなのか？
これは言うまでもなく、何十年もの間にカルティエ時計を愛用した有名人をごく一部集めたリストである。その他のスターには、ミック・ジャガー、デューク・エリントン、トルーマン・カポーティ、ウォーレン・ベイティ、アンジェリーナ・ジョリー、トム・フォード、ジェイク・ギレンホール、トム・ヒドルストン、ジェレミー・ピヴェン、フィネアスなどがいる。そしてリストはもっと続くのだ。カルティエは史上最も際立つラグジュアリーブランドの一つであり、これからもそうあり続けるだろう。そして素晴らしいのは、ばかげた金額を支払わずに購入できるということ。それが、このブランドをさらに魅力的ななものにしているのだ。
