2022年10月11日
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チューダー ペラゴス 39 レビュー 私がチューダー ブラックベイ フィフティエイトを手放なさないわけ

Donato Emilio Andrioli
Tudor-Pelagos-2-1

チューダーは、ジュネーブ・ウォッチ・デイズで39mmの新型ペラゴスを発表した。スウォッチにインスパイアされたのだろうか?ともかく筆者はこのダイバーズウォッチを一週間借りることができた。本記事ではこのチューダー新作時計について知っておかなければいけないことだけでなく、筆者がこの試用期間の後も引き続きチューダー ブラックベイ フィフティエイトを愛用し続けたいと思った理由をお伝えしたい。  

39mmの新型チューダー ペラゴス
39mmの新型チューダー ペラゴス

チューダー ペラゴス 42の小型モデル? 

小型なダイバーズウォッチに目がない人は、チューダー ペラゴス 39に一目惚れしてしまうかもしれない。ケースの直径は39mmでラグからラグまでの長さは47mm。厚みは11.8mmであるため、心地よいスリムな印象を与える。小さな時計がお好みで、手首が細いのであれば、この新型チューダーはまさにぴったりの時計だろう。この新型チューダー ペラゴス 39が42mmモデルを単純に小型化したモデルであると言えば、それは正しくない。このダイバーズウォッチの小型モデルには異なる点がいくつかあり、そのため大型モデルよりも大幅に削ぎ落とされた印象を与える。39mmモデルは42mmモデルが提供している日付表示機能も500mの高い防水性能も持ち合わせていない。防水性能は「たった」の200mで、ツール感は42mmのペラゴスほど強くない。文字盤にはマットなサンレイサテン仕上げが施されており、セラミックベゼルはサテン仕上げによって見る人を引き付け、絹のような輝きを生み出している。赤い「PELAGOS」の文字はロレックス シードゥエラーを少々想起させ、時計のデザインを上手く和らげている。これらの細かなディテールを見ていくと、新型チューダー ペラゴス 39がどちらかというと派手なツールウォッチであることがはっきりと分かる。  

チューダー ペラゴス 39は派手なツールウォッチだ
チューダー ペラゴス 39は派手なツールウォッチだ

チューダー ペラゴス 39 常に実感できるわけではない最高品質 

チューダー ペラゴス 39は主にチタン製であるため、重さは107gしかない。これは極めて快適な装着感をもたらしており、何時間でも心地よく身に着けることができる。しかし、この軽さは短所となる場合もある。手に取ってみた時に、通常のステンレス時計にあるような高級感が感じられないのだ。それに対して、文字盤ではそのような安っぽさを感じるところはない。サンレイ仕上げは本当に美しく、アプライドインデックスも時針や分針、秒針と同じように高級な印象を与える。セラミックベゼルも時計ファンの心の掴み方を心得ており、操作性に優れ、さらには夜光塗料も塗布されている。ベゼルのさわり心地は素晴らしいが、チューダー ブラックベイの方がわずかにクリック感があり、優れている。マットな斜角面が付けられたケースの仕上げも、ブレスレット同様に一級品だ。また、フルセットには素晴らしい品質のラバーストラップも付属している。チタンケースとブレスレットのマットでくすんだ外観によって、ペラゴス 39はラフでインダストリアルな質感をまとっている。これは時計に非常にマッチしているが、好みが分かれるところかもしれない。新しい「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプは便利なだけでなく、見た目も素晴らしい。この機能によってチューダー ペラゴス 39のブレスレットを工具なしで手首に合わせて調整することができる。さらには、ダイバーズエクステンションのおかげでダイビングスーツの上から着用することも可能だ。「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプはこの現代的にデザインされたチューダー時計にとても似合っており、その品質は最高水準で、機能とスタイルの完璧な融合を見せている。しかし、非の打ち所がないかと言えばそうではない。このクラスプは小さなペラゴス 39には少々大きすぎるのだ。ペラゴスの42mmモデルでこのサイズのクラスプが似合う姿は非常によく想像できるが、39mmモデルにはもう少しスリムな「T-Fit」の方がよかったのではと思う。 

この新しい「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプは便利でスタイリッシュ。しかし、小さなペラゴスには少々大きすぎる。
この新しい「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプは便利でスタイリッシュ。しかし、小さなペラゴスには少々大きすぎる。

チューダー ペラゴス 39 vs. チューダー ブラックベイ フィフティエイト 

チューダーコレクションの新しい39mmダイバーズウォッチとして、人気のブラックベイ フィフティエイトとの比較は避けられない。この2つの39mm時計は技術的にはほとんど変わらない。70時間のパワーリザーブを誇る自社製キャリバーを搭載しており、防水性能は200m、現代のダイバーズウォッチに欠かせないサファイアクリスタル風防も搭載している。チューダー ペラゴス 39はセラミックベゼルと「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプによってブラックベイ フィフティエイトを一歩リードしているが、ブラックベイ フィフティエイトには他に優れている点がある。ポリッシュ仕上げが施されたステンレスの表面とそのずっしりとした重さによって、チタン製のペラゴスよりも高級時計らしく感じられるのだ。いずれにしても、両者はかなり性格の異なるダイバーズウォッチだ。チューダー ペラゴス 39はツール的な性格を持つ完全に現代的にデザインされたチタン製ダイバーズウォッチであり、ブラックベイ フィフティエイトは温かい色味と多くの魅力を持つヴィンテージ感満載のステンレス時計なのだ。これは時計ファンにとって喜ばしいことで、性格が異なるためどちらのダイバーズウォッチもコレクションで共存させることができる。どちらか一方を選ばなければいけないとしたら、筆者はブラックベイ フィフティエイトを選ぶだろう。この時計は今でも変わらずチューダーのカタログで最も成功しているモデルなのである。この時計業界で最も美しいダイバーズウォッチのためなら、セラミックベゼルや「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプを諦めても構わない。どちらにせよ、フィフティエイトのヴィンテージデザインにこれらの機能は似合わないだろう。チューダー ペラゴス 39は美しい時計であるが、筆者には少々ツール感が強すぎるのだ。

この2つのチューダーダイバーズウォッチはこれ以上ないほどに異なっている。
この2つのチューダーダイバーズウォッチはこれ以上ないほどに異なっている。

チューダー ブラックベイ フィフティエイトの勝利 まとめ 

チューダー ペラゴス 39はその軽量素材と少々大きすぎるクラスプにもかかわらず、美しくデザインされた素晴らしいダイバーズウォッチである。そして、心地よいサイズ感で非常に快適に着用することができる。サンレイ仕上げが施された文字盤はこの小さなツールウォッチの外観を際立たせており、「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプと素晴らしく仕上げられたセラミックベゼルも、同じくこの新型ダイバーズウォッチのセールスポイントとなっている。  

しかし、個人的に好きになれない点が1つだけある。それは、この時計が中途半端であるということだ。文字盤とベゼルによって派手なダイバーズウォッチであろうとしているが、使用されているチタンによってツール的な性格を隠せないでいる。美しい融合であるとも言えるかもしれないが、ツール的なダイバーズウォッチとしては、42mmのペラゴスと比べて少々削ぎ落とされすぎている。そして定価は53万7900円と、500mの防水性能と日付表示機能、そして独自開発された特許取得済みのクラスプを備えている42mmモデルに比べて4万円ほどしか安くない。このクラスプは確かに「T-Fit」セーフティーキャッチ付きフォールディングクラスプほど美しくはないが、チューダー ペラゴスの機能的な性格を素晴らしく強調している。個人的にはペラゴスの42mmモデルの方が優れており、妥協のないツールウォッチに思える。それでも、小さなサイズの現代的なダイバーズウォッチを探しているのであれば、チューダー ペラゴス 39は非常におすすめできる時計だ。コレクションにダイバーズウォッチを追加したい時計コレクターも、安心して買うことができるだろう。たとえこの新しいチューダー時計のために筆者がチューダー ブラックベイ フィフティエイトを手放すことはないとしても、ペラゴス 39によってチューダーのカタログにまた1つ美しく素晴らしい時計が追加されたことは間違いない。


記者紹介

Donato Emilio Andrioli

チューダー ブラックベイ41という機械式時計を始めて買って以来、機械式時計の虜になってしましました。特に、古くて感動的な歴史を持つアイコン時計が大好きです。

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