2020年09月17日
 6 分

ロレックスを求めて: 高需要、高価格?

Tom Mulraney
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ロレックスを求めて: 高需要、高価格?

ロレックスが9月1 日に2020年新作モデルを発表したことは、今となっては誰もが知っていること。最も注目を集めたのは、ロレックス時計にしては大きくアップデートされた主力モデルのサブマリーナ コレクション。更新された点は、大きくなった41mmケース、スリムになったラグ、新世代ムーブメントの起用、そしてほぼ全てのモデルに一貫したブラックの文字盤 (ゴールドとイエローロレゾールのバージョンには、1980年代から続くブルーのサンバースト仕上げがいまだに施されている) 。新たなモデルが発表されたことは、人気ではあるが賛否両論のハルク サブマリーナ、ホワイトゴールドの「スマーフ」など、いくつかのモデルの製造中止も意味する。  

予想したように、インターネット上のフォーラムやソーシャルメディアでは激しい論争がすぐに始まった。大きくなったケースの良しあしは?新作はいつ入手可能になるのか?ロレックスは供給不足に備え、生産量を増やすのか?廃止されたモデルの価格はどうなるのか?論題はまだまだ続く。 

 

Rolex Submariner (no date), ref. 124060, Image: Rolex
ロレックス サブマリーナ (ノンデイト) 、Ref. 124060、写真: ロレックス 

 

実際には多くの人がサブマリーナ コレクションに行われた今年のアップデートを予想していた。ここ10年近く、サブマリーナ デイトとノンデイトは何も変更されなかった。各モデルに新しいムーブメントが搭載されたのは当然の結果と言える。また「スーパーケース」 (2008年にスマーフサブマリーナで初めて登場し、その後他のコレクションでも見られた) と呼ばれる太いラグと分厚いケースはかさばりすぎると長い期間批判されてきた。新作サブのスリムなケースはスーパーケース以前のモデルの薄さに戻り、好評を博している。また、2017年にはサブマリーナと同じくダイバーズウォッチであるシードゥエラーが43mmへと大きくなったため、ケースサイズが41mmへと大きくなることも一部で予想されていた。  

予想外だったのは、ロレックスは126610LVと126619LBにカラフルなセラミックベゼルを残し、それをブラックダイヤルと組み合わせたこと。ハルクが廃止される、またはイエローゴールドのみで提供されるという憶測は多くあったが、グリーンのセラクロムベゼルにサブマリーナ デイト標準のブラックダイヤルを備える、いわばカーミット2.0が発表されるなどということは、ほぼ誰も予測していなかった。このモデルは最も賛否両論分かれた評価を得ている。特徴的なグリーンのハルクダイヤルがなくなることを嘆く声もあれば、ハルクは派手すぎたという声もあった。好きでも嫌いでも、確かなことは一つある。それは少なくとも短期間、需要と価格の上昇が期待できるということだ。 

 

Rolex Submariner Date, ref. 126619LB, Image: Rolex
ロレックス サブマリーナ デイト、Ref. 126619LB、写真: ロレックス 

 

これは、ロレックスのステンレス製スポーツウォッチモデルのいずれかの製造が中止される際にはごく普通のことだ。昨年、GMT-マスター II バットマン (ref.116710BLRO) が廃盤となった際にも同じことが起こっている。下のグラフを見ればわかるように、新作モデルが発表された直後のロレックス サブマリーナ全モデルの需要は2倍以上になっている。それに対してロレックス ハルクの需要は、新作発表前に比べると3倍以上。これまでのところChrono24では、ロレックス時計全体の商品数、またサブマリーナとハルクそれぞれの商品数についても大きな変化は見られない。ハルクだけはより高い中間価格へ向かっているようだが、それ以外のロレックス時計の中間価格は安定している。 

 

Development of Rolex offer requests on Chrono24 
Chrono24でのロレックス商品リクエストの変動 

 

 

Development of Rolex search requests on Chrono24 
Chrono24でのロレックス検索の変動 

  

もちろん、現時点で実際の販売価格と価格推移について最終的な判断を下すのは早すぎる。よって今後またはっきりとした傾向がわかり次第、すぐにこの記事の内容をアップデートしていきたい。 

それを踏まえ、ここからは現時点のデータが表示していることを見ていこう。まず時計市場は全体的に新作サブマリーナを好意的に見ており、従って生産終了となったモデルに対する「一般的な」関心はあまり示されていない。ホワイトゴールドのスマーフはもともとニッチ市場向けのモデル。実際、廃盤となる前、このモデルはセカンダリーマーケットで小売価格を下回る値段で取引されていた (これはロレックスの時計、特にサブマリーナでは珍しい) 。ハルクはもっと幅広い人気を見せているが、投機的な売買が落ち着いたあと、増額した価格がそのまま維持されるかどうかは見どころである。アップデートが発表されたスタンダードなサブマリーナとサブマリーナ デイトに関しても、同じようなことが予想される (114060と116610LN) 。両モデルの価格に若干の上昇が見られるが、現時点ではそれほど劇的なものではない。 

ここで供給力が大きな影響を及ぼすはずだ。ソーシャルメディアでは、すでに新サブを着用している幸せそうな所有者の写真で溢れている。だがこれは実際の供給を示すものではない。また、正規販売店が購入を希望する人にどのモデルがいつ割り当てられるのかまだわかっていないと伝えている、という報告が多数ある。このような不透明性はロレックスが新作をリリースする度に起こることなので、想定外ではないが、それでもいら立たしいものだ。ブラックダイヤルと新しいムーブメントが使用されることによって、生産が合理化されスムーズになる点にいくらか希望が持たれている。だが、今のところロレックスはこれについて公式な見解を示していない。 

 

Development of Rolex page views on Chrono24 
Chrono24でのロレックスページ閲覧数の変動 

  

Percentage Hulk page views compared to total Submariner page views on Chrono24 
Chrono24でのサブマリーナページ閲覧数の合計と比較したハルクページ閲覧数の割合 

供給力が予想より高ければ、中古品市場での新作と製造終了モデルの需要がわずかに弱まる可能性があることは当然のこと。その場合の唯一の例外は、製造が終了される前にすでに供給不足だったハルクだ。繰り返しになるが、具体的な予測をするのは現時点では早すぎる。よって、今後の数週間、数ヶ月間にわたってデータを追跡し、この記事をアップデートしていくつもりである。そして新たな傾向が見られたら報告していきたい。 

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記者紹介

Tom Mulraney

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