2015年01月02日
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オーデマ ピゲ – 伝統と革新

Sebastian Swart
Audemars-Piguet-2-1-Brand

“特別感、革新、情熱。これらはオーデマピゲが持つ3つの特長を表現している。パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンなど、ごく少数の伝統あるブランドだけが、その高度な時計製造技術や独自のデザイン、精緻な職人技で、スイス時計界のトップの座に立つことができた。その中で、オーデマ ピゲが特別なのは、現在でも家族経営を続ける独立したブランドでありながらも、革新性を重視し、常に伝統と最新技術を融合させているというところだ。
2024年1月からは、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)社で幹部職を歴任してきたイラリア・レスタが新CEOに就任。ブランドは昨今新たな顧客層として注目されているZ世代にフォーカスしている。また、オーデマ ピゲが展開しているコレクションは、本質的には2つしかないというところにも注目したい。”

オーデマ ピゲで最も知られているモデルは、1972年に発表されたラグスポウォッチであるロイヤル オークだ。2019年からは新たなコレクションとしてCODE 11.59が登場。このコレクションでは、伝統的なデザインと最新技術を融合したモデルが展開されている。

オーデマ ピゲの歴史と重要なモデル

オーデマ ピゲは、1875年にジュウ渓谷のル・ブラッシュで二人の時計師、ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲが創業。現在の名前である「オーデマ ピゲ」というブランドの登録は、1881年になってからであった。当初から、オーデマ ピゲはその革新的な技術と高度な職人技で知られるようになった。こうして1892年には、ミニッツリピーターを搭載した初の腕時計を作り上げ、時計製造の歴史における画期的な出来事となった。

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ロイヤル オーク – 世界初のステンレス製高級スポーツウォッチ

オーデマ ピゲが頭角を見せるきっかけとなったのは、前述のロイヤル オークだ。この時計をデザインしたのは、パテック フィリップ ノーチラスやIWC インヂュニアを手がけた天才的デザイナー、ジェラルド・ジェンタである。発表当時、ロイヤル オークは世界初のステンレス製高級スポーツウォッチであり、高級時計が貴金属で作られていた時代に大きな話題を呼んた。また、その素材使いに加え、デザインや大きなサイズも話題となった。39mm径というケースサイズは1972年当時では巨大なもので、八角系のベゼルにはビスがあしらわれ、一体型ブレスが時計を実際のサイズよりもさらに大きく見せた。そのため、すぐに “ジャンボ” というニックネームがつけられ、今日ではそのニックネームは、公式にロイヤル オークのさまざまなモデルの一部となっている。

APs Klassiker, die Audemars Piguet Royal Oak Jumbo 15202ST
オーデマ ピゲの定番モデル、ロイヤル オーク ジャンボ 15202ST

発売以来、数十年の間にオーデマ ピゲはロイヤル オークの数多くのバージョンを市場へ送り出してきた。ロイヤル オークコレクションだけでなく、ロイヤル オーク オフショアとロイヤル オーク コンセプトというコレクションも展開している。ステンレス製の時計の他にも、チタンやセラミック製のモデルもある。トップモデルは貴金属製でダイヤモンド装飾が施されており、トゥールビヨンが搭載されている。

CODE 11.59 – クラシックなデザイン、最新の技術

CODE 11.59は2019年に発表されたコレクションで、名前はChallenge(挑戦)、Own(継承)、Dare(追求心)、Evolve(進化)のそれぞれの頭文字を取って付けられた。全く新しいコレクションとして開発されたCODE 11.59は、そのユニークなデザインコンセプトが目を引く。コレクションにラインアップされている様々なモデルのベゼルはラウンド型なのに対し、ミドルケースはかのロイヤル オークのデザインを踏襲した八角形になっている。また、スケルトン仕様のラグのコンセプトも独特である。さらに、ラグのバネ棒部分には六角形のビスで固定されており、これもロイヤル オークのベゼルに見られるデザイン要素だ。

Tradition trifft auf technische Innovation – Audemars Piguet Code 11.59 mit Tourbillon
伝統と革新的な技術の融合 – トゥールビヨンを搭載したオーデマ ピゲ CODE 11.59

オーデマ ピゲはCODE 11.59コレクションをさらに新しいバリエーションを展開し拡大した。イエローゴールドまたはローズゴールド製モデルの他にも、ケース素材がセラミックまたはステンレスのモデルもある。このコレクション向けに、オーデマ ピゲは新たな自社製ムーブメントも開発している。リファレンスによって異なるが、これらは時間、分、秒、および日付のシンプルな表示に加えて、クロノグラフ機能、トゥールビヨン、永久カレンダー、またはソヌリなどの複雑機構を搭載している。

どんな人がオーデマ ピゲを着用しているのか?

オーデマ ピゲには、多くのファンがいる。その中にはもちろんさまざまな有名人も存在する。

  • ジェイ・Z:世界的に有名なラッパーのジェイ・Zは、特にロイヤル オーク パーペチュアル カレンダー “Yves Klein Electric Blue” Ref. 25820STを愛用している。オーデマ ピゲがサファイアブルーのグランド タペストリーと呼ぶ文字盤は、コレクターの間では “Yves-Klein-Blau(イヴ・クライン ブルー)” として知られており、ヌーヴォー・レアリスム運動に参加したフランスの芸術家であり、この鮮やかなブルーカラーを作り出したイヴ・クラインのことを意味している。このモデルはステンレス製で、直径は39mm、価格は約2800万円。
  • ブカヨ・サカ:アーセナルで活躍する人気サッカー選手のブカヨ・サカはロイヤル オーク クロノグラフ 26240CEを所有している。41mm径のケースはブラックセラミック製だ。オーデマ ピゲはこの時計を2022年に50周年記念モデルとして発表。特徴的なのはローズゴールドのインデックスと針を備えたグランド タペストリーの文字盤だ。価格はおよそ2300万円。
  • エド・シーラン:イギリス出身のシンガーソングライターであるエド・シーランは、その豊富な時計コレクションで有名だ。彼はオーデマ ピゲの時計を複数所有している。そのうちの一つがブラックセラミック製のロイヤル オーク トゥールビヨン エクストラシン(Ref. 26522CE.OO)だ。ケース径が41mmのこの時計は100本限定で、価格は5700万円以上。
Audemars Piguet Royal Oak Chronograph41mm Black Ceramic 26240CE.OO.1225CE.02
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフ 41mm ブラックセラミック 26240CE.OO.1225CE.02

オーデマ ピゲの愛用者として知られる有名人は他にもハリウッドスターのウィル・スミスやクリス・ヘムズワース、そしてアメリカのギターリスト、ジョン・メイヤーなどがいる。テニス界の伝説、セリーナ・ウィリアムズもオーデマ ピゲのファンであり、ブランドアンバサダーも務めた。

オーデマ ピゲの職人技と専門性

オーデマ ピゲの高級時計は、時計作りへの情熱と卓越した専門知識によって生まれるものだが、その職人技と専門知識を形作る主な要素は何なのだろうか?いくつか例をご紹介しよう。

  • 高品質な素材:オーデマ ピゲが時計に使用するのは、高品質な素材のみ。ゴールドやプラチナ、チタン、ステンレスの他にも、セラミックなどの革新的な素材も含まれる。さらに、多くのモデルには厳選された宝石が施されている。
  • 精緻な職人技:オーデマ ピゲの時計はすべて経験豊富な時計師により、手作業で仕上げられている。オーデマ ピゲは、すべての時計が完璧に仕上がるように、最高峰レベルの職人技を重視している。
  • 技術革新:オーデマ ピゲは、技術革新、そして先駆的な機能で時計業界をリードする企業だ。トゥールビヨン、ミニッツ・リピーター、永久カレンダー、 クロノグラフなどのコンプリケーションを搭載した複雑なムーブメントが含まれる。
  • 一目でわかるデザイン:オーデマ ピゲは基本的に2つのコレクションだけ展開しているが、デザインには非常に多様性があり、伝統的な要素に現代的なスタイルや素材を組み合わせている。その結果、タイムレスでアバンギャルドなタイムピースが生まれるのだ。
  • 精巧な装飾:オーデマ ピゲは、ケースやムーブメントの装飾を非常に重視している。多くのモデルには、精緻な手彫りやギョーシェ彫り、ペルラージュ仕上げなど、職人による装飾が施されており、それよって、時計一つひとつが芸術作品となっている。

オーデマ ピゲか、パテック フィリップか

多くの時計ファンは、ラグスポウォッチの購入前にパテック フィリップか、オーデマ ピゲのどちらを購入すべきかと自問しており、選択肢として挙がるのは、人気のノーチラス Ref. 5711/1A-010とロイヤルオーク “ジャンボ” エクストラシン Ref. 16202ST.OO.1240ST.02だ。次に価格を比較してみよう。ノーチラスは2024年3月中旬時点で未使用品がおよそ2000万円である一方、ロイヤルオーク “ジャンボ” はおよそ1150万円となっており、その価格差はなんと850万円だ。オーデマ ピゲをパテックと同じくらい気に入っているのであれば、価格を考慮したら、この質問の答えはすでにお分かりのことだろう。

価格を重視しておらず、どちらの時計も気に入っているのであれば、あとは好みで決めるべきだ。両ブランドとも時計業界の伝説とも言われている存在だ。どちらもジェラルド・ジェンタの伝説的なデザインを持つ1970年代のスタイルを表現するものだ。技術的にも品質的にも、両ブランドは世界的に高い評価を受けているトップのスイス製時計ブランドであり、パテック フィリップは名声の点ではやや有利かもしれない。この名声のため、75%も高い金額を払うかどうかは、ご自身で決めてほしい。


記者紹介

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

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