2021年03月26日
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安定した価格を誇る時計: A.ランゲ&ゾーネのランゲ1

Mathias Kunz
Lange 1

安定した価格を誇る時計: A.ランゲ&ゾーネのランゲ1

「我々が追求していることの一つは、時計職人が生み出す時計の美しさと職人の技を極めた完成度だ」。これはランゲ・ウーレンGmbHの元経営者ギュンター・ブリュームラインの言葉であり、A.ランゲ&ゾーネのブランド価値を物語っている。ドイツの時計マニュファクチュール、A.ランゲ&ゾーネはパテック フィリップやオーデマ・ピゲのモデルに匹敵する品質の高級腕時計として世界的にも有名だ。永久カレンダー、ミニッツリピーター、ラトラパンテ クロノグラフ機構などのグランド コンプリケーションは、オフセンターやデジタル式の時刻表示といったユニークでクラシックなデザインと同様、A.ランゲ&ゾーネのレパートリーのひとつだ。 

この価格セグメントの時計らしく、年間の生産数は少ない。特に人気のモデルでは、それがさらに価格を上昇させている。これから詳しく紹介するランゲ1の第一世代がその良い例だ。モデルと価格に関する一般的な概要は、A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1 Chrono24バイヤーズガイドを参照していただきたい。 

A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1の3つのファーストモデル

A.ランゲ&ゾーネは1994年にランゲ1を発売した。1990年に創設されたランゲ・ウーレンGmbHが、サクソニア、アーケイド、トゥールビヨン「プール・ル・メリット」と共に発表したファーストコレクションのひとつだ。  

その後年月を経て、オフセンター時刻表示が特徴的なランゲ1はマニュファクチュールの看板モデルとなっていった。特に1994年に発表された3つの初代モデルなどは希少なため、飛躍的に価格が上昇したモデルもいくつか存在する。  

Ref.101.001101.002のランゲ1 イエローゴールドモデルの発売時の価格はそれぞれ2万7000ドイツマルクで、日本円で約170万円に相当する。現在、中古品の価格は約250万円であり、ほぼ45%価格が上がったことになる。過去3年の間だけでも、この2つのモデルの価格はChrono24でおよそ30万円上昇した。 

Ref.101.021のイエローゴールドモデルのような、近年発表された人気の高いモデルは、第一世代の時計と比べて新品でも若干高いくらいで、中古品だと25万円前後安く入手できる。また、101.021は価格の変動が大きい。2019年9月時点ではまだ210万円前後だったが、1年後には200万円近くまで下落したもののすぐに持ち直し、最終的には225万円そこそこにまで上昇した。 

 

A. Lange & Söhne Lange 1 Ref. 101.021
A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1、Ref.101.021

Ref.101.005のプラチナモデルもランゲ1の第一世代だ。この時計の価格は最も堅調な推移を示している。1994年にはまだ3万9000ドイツマルクで、これは日本円で約250万円にあたる。それが今は中古品で630万円近くになっている。つまり150%も価値が上がったということだ。プラチナモデルは長い間275万円ほどの価格で売買されていたが、その後2020年末に飛躍的に上昇した。 

A. Lange & Söhne Kaliber L901.0
A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1 Ref.101.005、プラチナバージョン

現行コレクションのランゲ1プラチナモデルRef.191.025は、Chrono24で未使用品が505万円を超える。この価格も2020年末に数十万円上昇した。 

ランゲ1初代のゴールドあるいはプラチナモデルにはソリッドゴールドのケースバックが使用されているが、これは後の世代との違いを示す重要な特徴のひとつだ。6本のネジが38.5mmのケースと裏蓋をつないでいる。その内部に搭載されているキャリバーL901.0は精緻に仕上げられた自社製の手巻き式ムーブメントで、72時間のパワーリザーブを誇る。現行のキャリバーL121.1も同様に72時間駆動で、サファイアクリスタルのケースバック越しにその姿を眺めることができる。 

The A. Lange & Söhne caliber L901.0
A.ランゲ&ゾーネ キャリバー L901.0

極めて希少: ステンレスケースのランゲ1

1990年代の終わり頃、A.ランゲ&ゾーネはステンレスケースのランゲ1をごく少数生産した。恐らく世界に30本も存在していないだろうと言われているが、正確なことは誰も知らない。この時計は今では非常に希少であり、オークションで10万ユーロ (約1260万円) を超える価格で落札されるほどだ。これまでで最も高い値がついたステンレスのランゲ1は、2019年にニューヨークのフィリップスオークションハウスで落札されたものだ。新古品 (NOS) で落札価格は34万3750ドル (約3800万円) 。希少なランゲ1のコレクターの輪に加わりたいなら、Ref.101.026が出てくるのを見逃さないよう注意することだ。 

希少なハニーゴールドバージョン

2015年、A.ランゲ&ゾーネはランゲ1の特別バージョンを20本限定で発表した。それがRef.101.050の18Kハニーゴールドモデルで、イエローゴールドとピンクゴールドの中間の色合いをもつ特別なゴールド合金を使用している。ハニーゴールドは従来の18Kゴールド合金よりも硬く、傷や衝撃にも強い。ねじ込み式のシースルーバックからは自社製ムーブメントL901.0の姿が見える。これは、第一世代にも搭載された、ランゲ1の時計機構の原型だ。A.ランゲ&ゾーネは2015年以降、標準モデルにはキャリバーL121.1.を採用している。 

ハニーゴールドのRef.101.050に搭載されているキャリバーL901.0には、手彫りの装飾と独特なフロスト仕上げが施されている。文字盤のきめ細かいフィニッシングも独特だ。他の多くのランゲ1には上質なマット感がある。 

A.ランゲ&ゾーネがランゲ1のハニーゴールドバージョンを発表した時、このモデルの定価は税抜きで5万4600ユーロ (約658万円) だった。ドイツでは19%のVAT(付加価値税)が加えられるため、税込みの定価はほぼ6万5000ユーロ (約783万円) だ。2019年、オークションハウスのDr.クロット社はこのモデルを10万4000ユーロ (約1254万円) で競売にかけた。 

どうしてもロレックス、という訳ではない。

価格推移が安定している時計を探していれば、遅かれ早かれロレックスやパテック フィリップに行き着くことになる。しかし、他のメーカーにも価格動向の良いモデルがあることは、ここで紹介したA.ランゲ&ゾーネの数々のランゲ1モデルが証明している。特に、非常に希少な時計、ブランドとしては異色のユニークなモデル、そして初代モデルは良い投資先となっている。よく言われることだが、価格を決めるのはやはり需要と供給なのだ。 

しかし、ランゲ1のすべてが良い投資先というわけではない。現行のモデルは新品同様でメーカー希望小売価格より数十万円も安く手に入る。さらに、モデルによっては価格が変動しており、上がる時もあれば、下がる時もある。つまり、ランゲ1だというだけで、良いリターンが保証されるわけではないということだ。希少性や需要が最終的には価格とその推移を決める。とはいえ、A.ランゲ&ゾーネの時計はすべて、時計師の職人技が生み出す完璧な美しさを備えている。最終的には、時計への熱い思いが購入の決め手となってもいいだろう。投資目的である必要はないのだ。 

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Mathias Kunz

2015年からChrono24の編集者として働いており、毎日時計と関わっています。特に興味を持っているのは、伝統と工芸・工学技術を体現する精巧なメカニズムです。…

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