時計をコレクションするという趣味にはいつも感情がついてまわる。というのも、人は時計に対しロマンチックな思いを込めることが多く、結果として時計コレクションは個人的な思い入れのあるもが多い。そのため、予算ありきでコレクションを構成することはあまりないのではないだろうか。予算内であれこれやりくりする代わりに、思いの詰まったこれという1本を買ってしまうのだ。
“けれども、決まった予算内で時計コレクションを組み立てるというのも面白い試みだと思う。ただ高価格帯の時計ばかり羅列するのではなく、上限がある中でできる限り多くの素晴らしい時計をリストアップするというものだ。
制限があることで、よりクリエイティブになれる。非現実的な桁違いのヴィンテージウォッチや現行品のレアモデルをリストアップするのは簡単だが、現実的であるのは簡単ではない。今回のテーマである2万4000ユーロというのは、十分な予算のように思えるが、かといってどんな時計も選べるわけではない。では、筆者の選んだ時計を詳しく見ていこう。”
チューダー ブラックベイ 58 – 3000ユーロ(約50万円)
“このコレクションを考えている間、筆者は、自分の時計、またはこの記事のように自分が所有すると仮定する時計をどんな目的で欲しいのか考えてみた。カジュアルな服装を好む者として、筆者が時計に求める最初のポイントは、どんなシーンでも着用できるものであるという点だ。
そこで最初に思い浮かんだのはブルーのチューダー ブラックベイ 58だ。ステンレススチール製ブレスレットが備わるヴィンテージ風のダイバーズウォッチであるブラックベイ 58は、まさにいつどんな時にもぴったりな時計の典型である。”

ジーンズにTシャツでも、スーツにネクタイでも、ビーチの水着でも、この時計はどんな服装でも決して場違いにならない。今回のリストにまさにぴったりな時計だ。筆者は、今回の時計コレクションにドレスウォッチをリストに入れていないため、ブラックベイ 58がその役割を果たす。さらにドレスウォッチについて言うなら、ブラックの方がフォーマルな場にふさわしいことは理解しているが、シルバーのアクセントが効いたブルーは、ブラックダイヤルが持つたレトロ風な雰囲気に勝る。また実際には、筆者はそれほど多くのフォーマルなイベントには出席しないため、ブルーこそが筆者に最適なのだ。ブラックベイ 58はモダンレトロなデザインに、チューダーの高い技術が融合したものだ。価格は、二次流通市場で約3000ユーロ(約50万円)と、コスト面でも非常に優秀である。
ロレックス オイスター パーペチュアル 41mm コーラルダイヤル – 1万5200ユーロ(約250万円)
“前述のように、オールラウンダーな時計は筆者にとって最も重要なポイントの一つである。そのため、このコレクションにオールラウンダーが1本だけというのは十分ではない。2本目は、できればブラックベイ 58よりもう少し高級なものにしたい。
複数ある候補から慎重に検討した結果、コーラルレッドのロレックス オイスター パーペチュアル 41mmを選んだ。幸運にもこの時計を何度か着けてみたことがあり、初めて着けたとき以来、ウィッシュリストのトップにある。すごくしっくりくるということ以外に、どうしてそれほどまでにこの時計が好きなのかは説明できない。時計に対してこのような感覚を抱いたことがある人なら、なんとなく分かってもらえるのではないだろうか。”

ロレックスがこのコーラルレッドダイヤルを生産終了にした時、筆者は悲しみに暮れたが、それでも欲しいと思う気持ちは変わらない。現在、グリーンダイヤルのものを持っているが、個人的な意見ではレッドは一段上だ。その文字盤は大胆かつ鮮やかだが、イエローやティファニーブルーほど派手ではない(どちらのカラーも素晴らしいが)。市場価値が約1万5200ユーロ(約250万円)と、残りの予算のかなりを占めてしまうが、時には大胆になることも必要であり、この時計こそがそれなのだと思う。もっと手頃なオプションは存在する。だが、このコーラルのオイスター パーペチュアルのように、自分の内に同じ感情を引き起こすかと言われると、答えはおそらくNOである。
IWC クロノグラフ IW3706 – 3800ユーロ(約65万円)
残りの予算が5800ユーロとなった所で、ここからは賢く時計を選ばなければならない。もちろん、コレクションにG−ショックをいくつかと小規模なインディーブランドの時計を入れることもできただろう。だが個人的に、筆者はただタスクをうまく完了させるのではなく、自分の心に訴えかける時計だけを少数集めたコレクションを作りたいと思っている。
“というわけで、ネオヴィンテージウォッチ市場で最も過小評価されている1本、IWC パイロット クロノグラフ Ref. IW3706を加えたい。
1990年代のパイロットウォッチであるこの時計は、その大型のケース、実用的な文字盤デザイン、そして佇まいでツールウォッチらしさを表現している。それでもなお、夜光塗料にトリチウムが使用された個体はアワーマーカーに見事な経年変化を見せ、そのルックスは好きにならずにはいられない。特に、一部のモデルで展開されていたブレスレット付きのものはなおさらだ。筆者はいまだIW3706を自分のコレクションに加えていないが、その日は意外に早く訪れるだろう。”

オメガ 1987 アートコレクション 40mm セラミック – 750ユーロ(約12万円)
“残りの予算は2000ユーロとなったが、これまでモダンとネオヴィンテージを混ぜ合わせて選んできたので、ここで少なくとも1本、あまり一般的でないヴィンテージウォッチを入れたいと思う。
筆者が選んだのは、市場で最も知られていないヴィンテージウォッチの一つ、オメガ アートコレクションだ。”

1986年にローンチし、最も初期のセラミック製時計の一つ(史上2番目のものだと思う)であるアートコレクションは、オメガが複数のアーティストに依頼した限定のコラボレーションプロジェクトで、999本の時計の裏蓋にアート作品とアーティストの名前を載せたものだ。マックス・ビル、リヒャルト・パウル・ローゼ、カミーユ・グレーザー、ポール・タルマンを筆頭に、複数のアーティストとのコラボを実現させたこのアートコレクションは、市場に出回る中でも最もクールな限定版コレクションの一つつである。大型の40mmバージョンが750ユーロ(約12万円)と、これはお買い得だろう。
まとめ
最終的な金額の合計はおよそ2万2750ユーロで、このコレクションは、筆者が一握りの時計に求めるすべてを体現していると思う。オイスター パーペチュアルとブラックベイ 58の持つ万能さとカジュアルなデザインから、IWC Ref. IW3706の持つ伝統や歴史、そしてタフさまで、筆者の時計コレクションにおけるベースとなる部分がすべてが完璧にカバーされている。そして個性的なオメガ アートコレクションがアクセントとなり、このコレクションを真に筆者だけのものにしてくれる。
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