2020年04月16日
 8 分

2020年の時計イベント: 改訂スケジュール

Tom Mulraney
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2020年の時計イベント: 改訂スケジュール

何ヶ月か前、Chrono24の優秀な編集チームから、2020年に (当時) 予定されている時計イベントについて寄稿してくれという依頼を受けた。当時、中国の湖北省では非常に攻撃的なウィルスを対処している最中で、そのエリアだけに特定した問題だと思われていた。そこから現時点まで早送りすると、私たちは劇的にも異なる状況に直面している。今では、この「コロナウィルス 」(正確にはSARS-CoV-2) と呼ばれるウィルスは、恐ろしいスピードで世界中に感染者を増やしている。多くの国では、政府が感染率を低下させるために、全面的または部分的なロックダウンやソーシャルディスタンスを義務付けている。このような規模の事態は、ここ1世紀以上経験していない。

 おそらく当然のことながら、世界の主要なウォッチフェアとその出展者を取り巻く事情は、皆さんにとって最優先事項ではないと思う。それよりも、目先に差し迫った問題がある。とはいえ、少しでも気を紛らすことはできるはずだ。たとえほんの数分でも、現在世界中の誰もが直面している問題から気を逸らす何か。この記事が、できたらそういったことに貢献できることを願う。バーゼルワールドが次いつ開催されるかということより心配するべき重要なことがあるのは私も十分理解してる。だが、こんな時でも私たちは時計愛好家なのだ。だからこそ、この非常に困難な時期を乗り切る為にも時計に対する情熱を共有しよう。

 

それでは、2020年の時計イベントがどうなっているのかを見ていこう。

Impressions of Dubai Watch Week 2020
ドバイ・ウォッチ・ウィーク 2020

簡単に言うと、現時点で予定されているイベントは少ない。2020年は、LVMHウォッチウィーク・ドバイで力強く始まり、2月に開催されたインホルゲンタ・ミュンヘンと続いた。それ以来、2020年の主要な時計イベントは全て2021年までキャンセルまたは延期されている。今この記事を寄稿している時に開催されているはずだったバーゼルワールド2020は、2021年1月28日まで開催されない。その一方でウォッチ&ワンダー (W&W) ジュネーブのウェブサイトには、今年開催される日程が未だ掲載されている。だが、このウォッチフェアの主催者であるフォンダシオン・ドゥ・ラ・オート・オルロジュリー (FHH) は、2月下旬の時点でキャンセルを発表している。現時点では新しい日程は発表されていないが、バーゼルワールドとW&W ジュネーブの両方とも同じスケジュールを調整している為、おそらく2021年の1月に開催されると思われる。

Impressions Baselworld 2019

その一方で、ウォッチ&ワンダー マイアミは、2021年2月12日に開催予定とされている。ただし、FHHがジュネーブのイベントに全てを注ぎ込むことができるように、マイアミ版はCOVID-19以前から延期が予定されていたことはここで述べておくべきかもしれない。

 これがこのような困難な時期に見られるということは、希望の兆しとも捉えられる。時計の販売者やバイヤーにとって、危機を乗り越えた後に開催されるイベントは、はるかに魅力的なものになるであろう。今までは新作商品を拝見できるまで半年以上待つ必要があった上に、その新作の購入は年末までできなかったが、これからはほとんどのビッグな発表は年の始めに行われるようになる。そうなると、多くのブランドは発表できるいくつかのことを今年は控えるに違いないだろう。

 この余分に与えられた時間は、両方のウォッチフェアに十分な準備期間を与える。さらに、出展者たちは多額な出展料を持ち越すことができる。COVID-19が2020年を脱線させる前でさえ主要なウォッチフェアが衰弱していたことは、別に今になってわかったことではない。メジャーな出展者は身を引く傾向が増え、来場者の数も減少し、時代遅れと言われ、市場のニーズにそぐわなくなっていた。そしてこれらは氷山の一角に過ぎない。ある意味では、今年フェアを全く開催できないことは、彼らの存続にとって最大の危機となるのではないか。

 結局のところ、高級腕時計ブランドだけではなく全てのブランドは、今では勧められていない (または禁止されている) 大衆を一つの場所に集める、ということをしなくとも大衆とコミュニケーションを取る新たな方法を持っている。私たちが危機を乗り越えた先には何が待っているのか、いつまた正常に戻るのか、あるいは正常というものが何なのかすらわからないのが現状だ。ただ一つだけ確かなことがある。これを乗り越え生き残る企業は、革新を行い、新しい方法を見つけ、大きく成長するであろう。もちろんこれは試行錯誤の中で行われ、誰もが同じアプローチを取るわけではない。

Rado Product Presentation on YouTube
YouTubeでのラドー商品のプレゼンテーション

例えばスイスの時計メーカーであるラドーは、CEOのマティアス・ブレッシャンを主役とした自社のYouTubeチャンネルで、2020年に新しく発売される商品を紹介した。この記事を寄稿している時点では、この動画の再生回数は数百件であるが、これからより多くの人がこの動画について知るようになれば、その数はおそらく倍増するであろう。今後多くのブランドが、小売パートナーやプレス向けに2020年の商品をパーソナライズされた動画でプレゼンテーションすることや、ズームやインスタなどを使って生のオンラインプレゼンテーションをすることも考えられる。また同様に拡張現実の進歩により、実際に手にすることなくとも、時計があなたの手首でどういう感じに見えるか、かなり現実的に把握することができる。Chrono24 バーチャルショールームをチェックすれば、私が言わんとしていることを理解してもらえるはずだ。

 しかしこれらは、多くの人が一緒に働く大規模な組織にこそ可能な事だ。ある程度ならオンラインで行うこともできるが、通常ブランドは時計を非常に限られた本数のみでしか見本市などで展示または「発表」しない。商品をロックダウン以前に画像または動画で記録していなかった場合、マーケティングチームはこれらの資材を作成することはもうできないだろう。その場合、高画質でレンダリングされたものが頻繁に見られるであろう。

Virtual-Showroom-Visual
バーチャルショールームでは、あなたが望む時計が手首でどのように見えるか体験することができる。

他のブランドは、実際に時計を見ることが一番大切だということを確信しているようだ。バーゼルワールドやW&Wがキャンセルや延期に続き、ブルガリが先導する新種の展示会が発表された。それはジュネーブ・ウォッチデイズと呼ばれ、当初は4月に開催予定だったが、現在は (楽観的な視点から) 8月26日から29日までと予定が変更されている。「分散的でセルフ・マネージ、マルチブランドのウォッチイベント」とされており、いくつかの有名ブランドがすでにサインアップしている。その中には、ブライトリング、ユリス・ナルダン、ジラール・ベルゴ、ジェラルド・ジェンタ、H.モーザー&シー、ドゥ・べトゥーン、MB&F、そしてもちろんブルガリがある。このイベントは、こういったブランドが、異なった場所でだが、同時に新作を公開するものだ。会場となる場所は、大勢の観客が密集するのを避けるために、ジュネーブにある多くのホテルやブティックで行われる。

 4日間のプログラムには、アポ、小売業者、メディア、そしてマルチブランドのディナーに加え、GMTマガジンの夜会や展覧会が開催される。運営委員会は、さらに15から20ブランドが参加する可能性も表明している。さらに最初の会議では、ジュネーブ州当局によって支援が提供される、本格的な時計製造見本市にすることが議論が行われた。もちろん現段階では、このイベントがどれほど成功するか、また2020年に実際に開催することができるのか判断するのは早すぎる。

 いくつかのビッグネームブランドは、2020年に新作を発表しない方がいいと判断を下したようだ。結局のところ、世界中の認定されたほとんどの小売業者は、無期限で販売店を閉店しなくてはならなくなった。まだ実際に確定ではないが、最近の報道によるとパテック フィリップは2020年に新作を発表しない可能性が高い。噂によると、ロレックスも同じようなカードを出すとのことだが、現時点では憶測にすぎない。私たちが知るまた愛すブランドの背後にいる人々は、私たち同様、急速に変化するこの状況に対応しようと切磋琢磨に頑張っている。そこにはベストな解決策など存在しない。誰もが自分自身にとって正しい行動とは何かを考え、決断を下していかなくてはならない。一つだけ確かなことは、この危機を乗り越えたあとの高級腕時計の見本市は、今までとは異なった状況にあるということだ。

 数分の間でも、現実世界から逸らすお手伝いができたのであればとても幸いだ。まだ物足りないという方は、ぜひChrono24のFacebookページへ行き、ここでの話題を続けてもらえる。時計を愛する方すべてに、外出を控えて健康であっていただきたい。  

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記者紹介

Tom Mulraney

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