2022年10月19日
 7 分

チューダーの2022年新作の概観

Pascal Gehrlein
Neuheiten-von-Tudor-2022-2-1

チューダー ペラゴス 39、チューダー レンジャー、チューダー ブラックベイ プロ。これらのモデルの中で知らないものはあるだろうか?もしあるとしたら、それはおそらくチューダーが主要な見本市に直接関わりを持たず、サプライズで新作を発表するようになったからかもしれない。チューダーはとりわけソーシャルメディアと業界のインフルエンサーに注力しており、新製品の型破りな発表が同社に現代的で、ロレックスと比べてほとんど反逆的なイメージを与えている。リリースが早すぎてついて行けなかった人は、この記事をご覧になって、新作についてゆっくりと整理していただきたい。

チューダー ペラゴス 39

チューダー ペラゴス 39、Ref.M25407N-0001

まずはチューダーのコレクションに加えられた最新モデルから始めよう。同ブランドのファンはプロフェッショナルダイバーズウォッチ、ペラゴスのアップデートを長い間望んでいた。この時計と同じダイバーズウォッチであるブラックベイとは、これまでそのサイズによって一線を画していた。39mmではなく42mm、ステンレスではなくチタン、そして防水性能は200mではなく500m。ヘリウムエスケープバルブとリューズガードも忘れてはいけない。ペラゴスは多くの人々にとって市場で最も優れたプロフェッショナルダイバーズウォッチであった。しかし、ダイバーズウォッチの性能を使い切っている人がどれだけいるというのだろうか?

そのため、多くのチューダーファンはとりわけ39mmのコンパクトなケースとごつすぎないデザインを熱望していた。そして、より日常使いしやすく現代的になった39mmの新作チューダー ペラゴスが誕生した。ニッチなモデルから幅広い層に受け入れられるモデルへと変身し、これでようやくブラックベイの本気のライバルとなった。ペラゴス 39のケースの厚みは11.8mmしかなく、ラグからラグまでの長さは47mm、重量はたったの107g。防水性能は200mへと低下し、ヘリウムエスケープバルブもなくなった。セラミックベゼルはマットからサテンになり、ダークブラックでサテン仕上げが施されている文字盤と少々コントラストを見せている。もちろんベゼルと文字盤には夜光塗料が塗布されている。アンティークモデルの面影と歴史を感じさせてくれる赤い「PELAGOS」の文字も特筆すべき点だ。21mmから16mmへと細くなっているブレスレットのクイック調整機能は、ダイバーでなくともその素晴らしさを知っている。ムーブメントには日付表示機能はないが、COSC認定を取得済みの70時間のパワーリザーブを誇るMT5400が採用されている。これと同じムーブメントはブラックベイなどのモデルにも搭載されている。

チューダーはペラゴス 39によって多くのファンの夢を叶えた。そして、技術面でも外観においても最新の水準にある日常使いに適したダイバーズウォッチによって、より多くの顧客にリーチするという目標も達成した。これはウィンウィンな発展なのだろうか?それとも、ブラックベイとの類似性が高まることによって自社内で競合が起きるリスクを高めているのだろうか?それは時がたてば分かることだろう。

チューダー ヘリテージ レンジャー 79950

チューダー ヘリテージ レンジャー 79950

チューダー レンジャーはチューダーのヘリテージシリーズの一部で、同シリーズにはヘリテージ クロノグラフやヘリテージ ブラックベイも含まれている。これは少々まぎらわしく、ヘリテージ レンジャーが一体どのような時計なのか分かりづらくしている。レンジャーはクロノグラフなのだろうか?それとも、ミリタリーウォッチなのだろうか?レンジャーは他のモデルと何が違うのだろうか?

3時、6時、9時、12時の4カ所に数字が配されているレンジャーはミリタリーにインスパイアされた時計で、その外観はかなりシンプルだ。日付表示はなく、時刻しか表示しない。しかし、同じような方向性のチューダー 36とは対照的に、レンジャーは紛れもなくアンティーク時計を彷彿とさせる。また、ブラックベイとは異なり、1960年代と1970年代に作られたオリジナルのレンジャーおよびレンジャーIIの特徴をうまく現代的な時計に取り入れている。サテン仕上げが施されたステンレス製ケースは直径39mmで、防水性能は変わらず最大100m。マットブラックの文字盤に日付表示はなく、リューズにリューズガードは付けられていない。その代わり、秒針の先端は赤色で彩られており、クリーム色のインデックスはアプライドインデックスではなくペイントされている。これを過去の遺物と思うか、魅力的なディテールと思うかは、見る人次第だ。

レンジャーを駆動しているのは70時間のパワーリザーブを持つキャリバーMT5402だ。価格に関して、チューダー ヘリテージ レンジャーはブラックベイラインよりも低く設定されている。要するに、チューダーはここでも独自の路線を突き進み、オリジナルモデルの本質を完全に失うことなく、余分な機能を持たない日常使いにより適したアンティークウォッチを作ったのだ。しかし、それはレンジャーに数多くのライバルが存在するということでもある。

ところで、レンジャーは生産終了となったチューダー ノースフラッグの間接的な後継機だ。ノースフラッグは英国の北グリーンランド探検隊が着用していたチューダー時計からインスピレーションを得ており、冒険家との明確なつながりを持っていたが、その方向性はより型破りなものであった。

チューダー ブラックベイ プロ

ブラックベイ プロ、Ref.M79470-0001

本記事の最後に紹介するのはチューダー ブラックベイ プロだ。名前がすでに示しているように、このモデルはブラックベイシリーズの時計である。しかし、この名前にある「プロ」とは何を意味しているのだろうか?そして、他のブラックベイモデルとの違いは何なのだろうか?

ブラックベイ プロに見覚えがあるとしたら、それはロレックス エクスプローラー II 1655を見たことがあるからだ。これは何を教えてくれるのだろうか?ブラックベイ プロはGMT時計で、チューダー ブラックベイ GMTと異なりケース径は39mm。固定式のGMTベゼルとチューダーのGMTキャリバーMT5652を搭載している。つまり、名前にある「プロ」は、見た目がその他のブラックベイ(GMT)モデルとは大きく異なる時計であることを示唆しているのである。

アンティークな外観とサイズが、ブラックベイ GMTとは少々異なるターゲットグループを対象にしていることは間違いない。とは言え、ブラックベイ プロはもちろん最新の技術を搭載している。このGMT時計の防水性能は最大200mで、パワーリザーブは70時間。チューダーらしいNATOストラップとハイブリッドラバーストラップ、そしてもちろんステンレスブレスが用意されている。ハイブリッドと言えば、ブラックベイ プロはチューダーファンが望むかなり多くのものを1つにしている。ロレックス エクスプローラー IIの外観から影響を受けていることは明らかであるが、他にもノースフラッグのややハードな影響、ブラックベイシリーズのタッチ、そして独自のデザインがブラックベイ プロの中で一体となっているのだ。そして、全体的にこの時計は少々薄く、ラグからラグまでの長さが短くなっており、大型なブラックベイ GMTよりも身に着けやすいため、より多くの時計ファンにとって魅力的な一本に仕上がっている。サイズはコミュニティと数多くのフォーラムにおいて、チューダーのGMTシリーズに対する主な批判点であった。(特に暗闇での)視認性もより強力な夜光塗料とオフホワイトのインデックスによって向上しており、すべてブラックベイ プロのアンティークな外観と調和している。さらに、このチューダー時計はクイック調整機能を備えた「T-Fit」クラスプを搭載しており、現代的な技術とアンティークな外観を完璧に融合している。チューダーはこの時計によっても、同社がターゲットグループと彼らの望みを理解し、それを聞き入れるということを証明しているのである。


記者紹介

Pascal Gehrlein

こんにちは、パスカルです。初めての「高級時計」を探してChrono24のサイトを何時間も見ていた際に、Chrono24の本社が自分の家のすぐ近くにあることを発見しました。…

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