スウォッチが2023年3月7日にムーンシャインゴールドを使用したスウォッチ x オメガ ムーンスウォッチの新作を発表したのは、まったくのサプライズだった。世界4都市で限定発売され、スウォッチストアの前にはそれ相応に長蛇の列ができた。新たに大きな熱狂が生まれたわけだが、ムーンスウォッチの大ファンである筆者でさえがもう少し期待していた。2023年のムーンスウォッチは本当にこれで打ち止めなのか。それとも、”Mission to Moonshine Gold”は、まったく新いムーンスウォッチコレクションのためのほんの前触れに過ぎないのだろうか。
ムーンスウォッチの大成功
まずは1年前を振り返ってみよう。2022年、スウォッチ x オメガ ムーンスウォッチは、これまで世界のどの高級時計も成し得なかったことを実現した。高級時計というテーマを多くの人々にとって身近で手が届くものにしたのだ。それまで時計に関心がなかった人も、人気のプラスチック製スピーディ11本のうちの1本を手に入れたいと、突然スウォッチストアの前に行列を作ったのだ。ムーンスウォッチは、あちこちで見かける70年代スタイルのジェンタ・リバイバルとは確かに何かが違う。カラフルな色彩とクールなデザインで人々の心を掴んだ。たとえ時計愛好家の中には小馬鹿にする人がいても、発売から1年経った今でも、ムーンスウォッチは関心の的なのだ。2023年3月7日にムーンシャインバージョンが発表されるまでは、プラスチックのスピーディ界隈はやや沈静化していたように見えた。しかし、その熱狂はまだ続いており、皆様も同じ意見だと思うが、特にムーンスウォッチ “Mission to Moonshine Gold”がリリースされた後では、これほどの大成功を収めたスウォッチとオメガが、何も目論んでいないとは考えにくいのだ。では、2023年の新作ムーンスウォッチはどのような外観になるだろうか。何しろ、ムーンスウォッチは我々の太陽系を既にくまなくカバーしてしまっている。
スウォッチ × オメガ ムーンスウォッチ “Mission to Moonshine Gold”はハードコアなコレクターだけのものだろうか?
皆様と見えない未来を占う前に、新しいスウォッチ × オメガ ムーンスウォッチ “Mission to Moonshine Gold”について簡単に話しておきたい。ムーンスウォッチの大ファンである筆者でさえ、もう少し期待していたのだが、この新しいモデルは既存の”Mission to the Moon”にゴールドの針を採用しただけのものだった。この些細なリニューアルでも多くのムーンスウォッチファンには十分で、ご存知のように世界4カ所のスウォッチストアの前にはまたしても長蛇の列ができたのだ。もしこれがグレーのケースではなくブラックであれば、あるいはタキメーターベゼルの数字をゴールドに統一していたら、筆者もなんとか認めることができただろう。「期待外れだ」という多くのファンの心情は大いに理解できる。スウォッチファンやムーンスウォッチファンは、いずれにしても販売されている12種類すべてのバリエーションを手に入れなければ気が済まないわけだが、2023年にまだ何か登場するのだろうか?筆者の答えは「イエス」だ!まだ流行の熱が覚めていない。おそらく”Mission to Moonshine Gold”は再び注目を集めるための「のろし」に過ぎないのだろう。はっきり言っておこう。まだ何かあるはずだ。
惑星系ではなくシークレットエージェント?
スウォッチ × オメガ ムーンスウォッチがどんなにカラフルでポップなモデルであっても、今年の大きなテーマが太陽系以外の惑星系になるとは考えにくい。大胆なムーンスウォッチにしてもそれはさすがにやりすぎだろう。ダニエル・クレイグが最近、スーツにムーンスウォッチである授賞式に出席したことを考えれば、ムーンスウォッチのシーマスター版の方が現実的な予想だ。これはスウォッチグループ側からのヒントだったのだろうか?それとも、ただもう少し熱狂に火をつけたかっただけなのだろうか。スウォッチにしか分からないことだが、シーマスターデザインのスウォッチという予想もなくはない。様々な色のケースと文字盤の組み合わせがあり得るし、ジェームズ・ボンドの様々なキャラクターや悪役にインスパイアされたものの可能性もある。オメガとジェームズ・ボンドがパートナーシップを組んで以降、そういうモデルは十分過ぎるほど登場し、少なくとも10種類の新デザインをなんなく用意することができるだろう。少々クレイジーだと思うだろうか。しかし、ムーンスウォッチないしはその後継機について話しているのであれば、何でもありだということを忘れてはいけない。場合によってはスウォッチやオメガにとって、ムーンスウォッチの初代モデル以上の大成功も見込めるかもしれない。英国秘密情報部のエージェントはオメガの時計そのものよりも偉大な偶像なのだ。皆様はシーマスターデザインのスウォッチがセカンドヒットとして登場すると思われるだろうか。それとも、筆者が想像の翼を広げすぎているだろうか。
我々の太陽系にはまだやるべきことがたくさんある
正直なところ、筆者はジェームズ・ボンドの大ファンではないので、むしろ宇宙の方が好ましい。とにかく、スピードマスターは終わりにしてしまうにはあまりに大きすぎるテーマだ。そう思わないか?伝説のスピードマスターが宇宙で活躍した偉大な瞬間は数え切れないほどある。そこに敬意を表し、その瞬間を扱ったコレクションというのはいかがだろうか。「ファースト ムーンスウォッチ イン スペース」はあらゆる宇宙ファンが注目するに違いない。エド・ホワイト宇宙飛行士によるアメリカ人初の宇宙遊泳を扱ったムーンスウォッチなら大当たりするのは間違いないだろうし、伝説のアポロ13号の救出作戦にインスパイアされた「スヌーピー ムーンスウォッチ」なら、スウォッチストアの前には昨年の2倍の行列ができるに違いない。ただ、そのデザインは「オリジナル」とはまったく違うものであって欲しいところだ。何しろコレクターはこれらの宝物を手に入れるために、今や法外な金額を支払わなければならないのだから。もし、スウォッチとオメガが本当にムーンスウォッチコレクションの新作を計画しているのなら、路線としてはこの方向なのは確実だろう。このデザインにすれば、スウォッチは新しいケースの形状を作る必要がなく、そのままオメガ スピードマスターという手本に頼れば良い。スウォッチはファンに新しいものを提供することができ、ムーンスウォッチの熱狂は少なくともあと1年は続くことになる。しかし、遅くともその後には、ボンド・シーマスターを登場させて人々を繋ぎとめなくてはならない。そうでなければ、人々の熱が遂に冷めてしまうことになりかねない。皆様も2023年にムーンスウォッチコレクションの新作が登場すると考えているだろうか。あるいは、もう十分だと感じているだろうか。