セイコーは時計業界の中で特別な位置を占めている。多くの人にとって、これまでもこれからも、この日本ブランドは機械式時計の世界への入り口である。しかし、同社はコレクターの間でも広く高い評価を受けている。この記事ではChrono24で最も人気のモデル5本を見ながら、セイコーの世界を詳しく紹介していきたい。どのモデルがリスト入りを果たしたのか見てみよう。
1. セイコー スピリット SARB033
このリストの最初を飾るのは、セイコー SARB033。この時計の何がそこまで特別なのだろうか?それは全てのセイコーに言えるように、このモデルのコストパフォーマンスが特に素晴らしいということだ。愛好家の中にはこの時計の仕上げをグランドセイコーのモデルと比べている人もいる。小売価格約6万5000円以下というSARB033は、見事なセイコースタイルに、ほとんどの人の手首にちょうどいい38mm径のケース、信頼性のあるセイコーキャリバー 6R15、そして美しい仕上げを誇る。

この時計がこれほどまでに人気であるもうひとつの理由は、セイコーがこのモデルを2018年に生産中止にした後、いまだに同程度のコストパフォーマンスを持つ代替モデルが登場していないからである。そのため、コレクターや熱狂的なファンはSARB033をほとんどのコレクションの必須モデルとして挙げている。セイコーが同じようなコストパフォーマンスを持つ時計をリリースする気配は当分の間ない。
また、SARB033がJDMコレクションの一部であることも、このモデルを特別なものにしている。JDMとは「Japanese Domestic Market (日本国内市場向け)」を意味し、海外のセイコーコレクターの多くがこの特別コレクションのモデルをなんとか手に入れたいと思っているのだ。セイコー SARB033が売りに出されていることはあまりないが、それでも基本的には約6万3000円〜10万円の間で入手可能である。
2. セイコー アルピニスト SARB017
リストの2番目は、またもセイコーJDMモデルから。SARB017はセイコーのアルピニストシリーズの1本である。これには3つのモデルがあり、2006年に初めて日本でリリースされた。グリーンの文字盤とブラウンのレザーストラップが魅力的なSARB017は、すぐさま、ファンに人気の1本となった。

このメーカーの最初のスポーツウォッチであるアルピニストシリーズは、セイコーの歴史の中でも特別な存在である。オリジナルのセイコー・ローレル・アルピニストは1961年に誕生した。それはセイコーが素晴らしい一連のダイバーズウォッチをリリースする4年前。したがって、アルピニストはセイコーの歴史の重要な部分を占め、コレクターの間でも人気のモデルとなっているのである。
では、このSARB017の需要はなぜそこまで高いのだろうか?それは、特に現行のセイコー プロスペックスコレクションにはセイコー アルピニスト (SPB121J1) というSARB017にそっくりなデザインで、かつアップデートされたムーブメントと改良されたスペックを持つモデルがあることを考えれば、当然の疑問である。ここでもまた、なかなか入手しにくいことと、JDMモデルという物珍しさが人気の重要な理由となっている。
さらに、このモデルの間にはひとつ重要な違いがある。セイコーは新しいアルピニストをプロスペックスコレクションの一部として加えることにした。その結果、現行のアルピニストの文字盤にはプロスペックスロゴが加えられた。これは、昔からの頑固なセイコーファンの多くにとって冒涜として写った。というのは、アルピニストはセイコーのダイビングコレクションには属さないからだ。加えて、多くのセイコーファンはプロスペックスロゴがあまり好きではない。よって、SARB017の方がより良いオプションとなるわけなのだ。SARB017は現在では、元々の定価の約6万3000円以下という金額よりもはるかに高い、約6万3000円〜13万円の間で売られている。
3. セイコー SKX007K2
このリストの3番目から5番目までは、同じセイコーダイバーズウォッチの異なるバリエーションがランクイン。セイコーSKXシリーズは世界中のセイコーファンの間で伝説的な地位を確立してきた。ファンはこの時計の素晴らしいコストパフォーマンスを一様に褒め称え、そのためにこの時計は市場で最高の入門クラスダイバーズウォッチとなっていた。ここで「なっていた」と過去形にしたのは、セイコーが2019年にSKXシリーズの生産を中止することを決定し、多くのセイコーファンたちを失望させたからである。

先へ進む前に、セイコーSKXリファレンスナンバーの異なる数字とアルファベットのコンビネーションの意味について簡単に説明したい。この時計はSKX007K2で、このリストの5番目に位置するモデルはSKX007K1である。違いは簡単だ。SKX007K2はステンレススチール製ケース、ブラックベゼル、ステンレススチール製ブレスレットのモデル、そしてSKX007K1は基本的に同じ時計にラバーストラップが備わったものだ。
セイコーはこのSKXシリーズを1996年に初めて発表した。ヒットの秘密は、完璧な42mmというケースサイズ、200mの防水性、信じられないくらいに信頼性の高いセイコーキャリバー7S26、そしてその手頃な価格である。生産量が多いにもかかわらず、新しいSKX007K2は常に簡単に入手できるわけではない。その人気と続く生産終了によって、多くの人が見つけたらすぐに購入したためだ。結果として入手可能な在庫数は多くはなく、価格は約3万6000円から6万3000円のあたりで徐々に上がってきている。
4. セイコー SKX009K2
セイコー SKX009K2はSKXシリーズのもうひとつのモデルであり、009という数字は異なる配色を意味している。このバージョンはダークブルーの文字盤にブルー&レッドのベゼル、別名“ペプシ”ベゼルを持つ。ブラック一色のセイコーSKXがお好みでないという人には、こちらがよりカラフルでおすすめのオプションだ。

この時計もまた、コレクターたちの間でかなりの人気を誇っている。SKX009K2はブラックバージョンと同じ価格帯で購入可能だ。供給に関して、両モデルは同じような状態である。SKXモデルは、セイコーがその後継となるシリーズをいまだに発表していないことから、非常に高い需要がある。付け加えたいのは、セイコーのコレクションには同じような価格帯で購入できるダイバーズウォッチが十分すぎるほどそろっているが、そのうちのどれも、SKX007とSKX009に及ぶような地位を得るに至ってはいないということだ。
5. セイコー SKX007K1
上記で述べたように、SKX007K1はブラックの文字盤とベゼルにブラックのラバーストラップが備わるモデルである。とはいうものの、Chrono24でこのモデルを探してみると、もっとカラフルなバージョンがかなり見つかることだろう。と言うのは、SKXモデルは自分の時計をカスタマイズしたいセイコーファンの間で非常に人気があるのだ。長年にわたり、一部の所有者はこの時計のほぼ全てを変え、ムーブメントを取り換え、針、ベゼル、時には文字盤までをも交換した。この時計は個人的なカスタマイズをするのにまさに理想的なのだ。なぜか?それは比較的カスタマイズしやすいからである。

SKX007K1は通常、スチールブレスレットのバージョンよりも若干手頃な約3万1000円から4万7000円という価格である。もしこのモデルが売られているのを見つけたら、ストラップとブレスは簡単に交換できるため、このモデルをスチールブレスのものにすぐに変えることも可能である。多くのセイコーファンがSKXモデルを改造していることから、元々K1だったがK2に変えられてしまったものがかなりあるだろう。他の人気の時計とは違い、セイコーSKXモデルの世界では、改造は完全に普通のことなのだ。しかしこれらの時計の価格は徐々に、着実に上昇していくだろうと思われるので、買うのをあまり長いことためらってはいけない。
さて、Chrono24で最も人気のセイコーモデルのリストはこれで完結した。しかし、ここに出たモデルだけに注目するのではなく、セイコーブランド全体をチェックしてみることをおすすめしたい。私は個人的にはSARB017が好きだが、この5つのモデル以外にもたくさんのセイコーモデルがあるのだ。あなたが良い時計に出会えることを願っている。