時計の世界には、アイコニックなモデルがいくつか存在するが、タンクほどアイコニックな時計はほとんどない。タンクは、全ての時計の母として存在し、長方形のクラシックなアール・デコであり、100年以上に渡ってフランスの高級時計およびジュエリーメーカーであるカルティエの看板商品とされている。
タンクに施されたデザインは独創的な上にとてもシンプルにできており、1918年に初めて発表されて以来ほとんど変わっていない。時計の側面はラグとしても機能するので、ブレスレットとケースは繋がった物として視認できる。また、長方形のシルバーホワイトの文字盤から感じられる幾何学的な緊縮性もある。その文字盤には、形状に合わせて角で傾斜する線路のような分目盛りとローマ数字インデックスが備えられている。そして、ブルーのバトン針とリューズが、タンクの特徴的なデザインを完成させている。
ある伝説によると、ルイ・カルティエが1916年に初めてタンクをデザインした時、第一次世界大戦で使用されたフランスとイギリスの戦車にインスピレーションを得たという。実際、メタルリンクのブレスレットが備えられた時計というところからは、特にイギリスのシャーマン戦車を彷彿させる。だが、本当にそのようなインスピレーションを受けていたかどうかは、記録として残っていない。確かなことは、カルティエはアメリカ軍のジョン・パーシング将軍に、最初のタンクを一本贈呈していたことだ。
入門モデル: タンク ソロ – クラシックなデザイン、モダンなテクニカルスペック
カルティエは、タンクを製造開始した当初から多くのバリエーションを生産していた。タンク サントレやタンク ルイ カルティエなどの一部のモデルシリーズは、現在でも同社の代表作としてポートフォリオに加わえられている。ファンやコレクターの間でタンク ノーマルとして知られている、元祖のデザインに最も近いモデルは、タンク ソロだ。
タンク ソロは2004年に発売され、歴史的な元祖のモデルと同じくフラットなケースが備えられている。また、文字盤、針、そしてリューズのデザインもタンク ノーマルの物が採用されている。だが、いくつかの違いも存在する。タンク ソロのサイズは、S (31 x 24.4 mm)、L (34.8 x 27.4 mm)、そしてXL (41 x 31mm) から選ぶことができる。また、イエローゴールドまたはステンレスケースの選択肢も用意されている。
タンク ソロの心臓部
タンク ソロとノーマルとの最大の相違点は、使用されているムーブメントにある。第一世代のタンクには、エドモンド・ジャガーによって開発されLeCoultre & Ciéで製造されたキャリバーが採用されており、SとLのタンク ソロではクォーツキャリバー 690が時計を稼働させている。このムーブメントは、エベル キャリバー 690と同様に設計されており、特にフラットである。タンク ソロのXLには、自動巻ムーブメント 1847 MCが2015年以降搭載されている。それ以前は、カルティエが改良したキャリバー 049と呼ばれるETA 2892が搭載されていた。ETA版も自社製キャリバーも、タンク ソロ XLの6時位置に日付表示を備え、センター秒針が取り付けられている。
その他のモデル
タンク ソロに最も近い親戚は、タンク ルイ カルティエだ。このモデル名に使用されている人物は、1920年代初頭にこの時計を設計し、のちにそれを自身でも着用した。この時計は、タンク ノーマルより若干大きめに設計されており、丸みを帯びたフォルムにより角ばった印象が少なくなっている。現在、このシリーズは女性用と男性用の様々なサイズで提供されている。これらの時計はホワイトゴールド、イエローゴールド、またはローズゴールドのケース素材で提供されている。女性用のタイムピースには、ダイヤモンド装飾付きモデルもある。
ここ数年、主に自社製の手巻きキャリバーが採用されている。しかし、クォーツキャリバーが搭載されたタンク ルイ カルティエも入手することができる。それを見分ける要素は、3時位置の日付表示だ。
タンク フランセーズ – 角とへりのある時計
タンク フランセーズは、1996年に市場へ登場し、すぐにコレクション内で最も人気のあるモデルの一つとして成長を遂げた。このモデルのケースは、他のタンクに比べると尖ったデザインになっており、より正方形に近いフォルムになっている。同時に、ケースはわずかにカーブを描いており、綺麗に手首を包み込む。この時計は、戦車のキャタピラーを連想させるリンクブレスレットで着用される。
タンク フランセーズには、女性用と男性用のサイズがある。さらに、ゴールド、ステンレス、バイカラーのモデルから選択することが可能で、ダイヤモンドありかなしかで入手できる。ケースサイズの大きいモデルには、主に自動巻きキャリバーが搭載されており、サイズの小さいモデルには、クォーツキャリバーが搭載されている。
タンク アメリカン – ミニからXL
カルティエは、1989年にタンク アメリカンを発売した。このモデルは、タンク サントレといくつかの類似点を持つ。例えば、ケースは明らかに細長く、カーブを描いている。だが、サントレとは対照的に、若干力強さが感じられる。カルティエは現在、24 x 15.2mmのミニサイズから45.1 x 26.6mmの大型モデルまで、合計4つのサイズで時計を提供している。ケース素材としては、ゴールドまたはステンレスで提供されており、また多くのモデルではベゼルまたは文字盤にダイヤモンド装飾されているものもある。そして、高品質のレザーベルトや貴金属性のブレスレットは、時計にエレガントなルックスを与える。
2つのバージョンがある小さいサイズのタンク アメリカンを稼働させているのは、クォーツキャリバーだ。もし、自動巻きキャリバーを好むのであれば、中型および大型モデルをおすすめする。製造年数によっては、自社製キャリバーに加えて、ヴァルフルリエ、ジャガー・ルクルト、オーデマ ピゲ、またはETAのムーブメントで入手することが可能だ。
タンク アングレーズ – 一体型リューズゆえに新鮮なルックス
2012年、カルティエは一つの地域に基づくモデル名を持つタンクを発表した。それはタンク アングレーズである。このシリーズの時計は、他のタンク・シリーズとは全く違う。それは、より横幅の広いケースと、何より新たに設計されたリューズにある。リューズは、ケースの右側に埋め込まれている。タンク アングレーズは、女性用と男性用共に合計3つのサイズバリエーションで提供されている。このシリーズでは、時計をゴールド、ステンレス、または両素材のコンビから選ぶことができ、またダイヤモンド装飾有りか無しかで選べる。
ここでも、カルティエは小型なサイズのモデルにクォーツキャリバーを採用している。大型モデルには自動巻きキャリバーが搭載されており、XLのモデルは自社製キャリバーで駆動される。
タンク ディヴァン – 正方形のタンク
新たなミレニアムの初めに、カルティエはタンク ディヴァンを持ってセンセーションを巻き起こした。この時計は基本的には他のタンクモデルと同じ特性が備えられていたが、一つだけ例外があった。カルティエは時計を横に置いたように設計し、よってケースが縦長でなく横長になっているのだ。
他のタンク同様、タンク ディヴァンは様々なサイズと素材で提供されており、クォーツまたは自動巻きキャリバーが搭載されている。
価格と価格推移
ここでタンクを購入するべきかどうか自問するのであれば、カルティエ タンクはとても特別な時計だということを考慮してもらう必要がある。発売された当初のように、今でもこの時計を手首に着用するということは、現代の歴史を着用していることを意味する。100年以上絶えずカルティエの商品として提供され続けきたタンク・コレクションは、時計業界全体で最も豊富なコレクションの一つである。つまり、タンクにはあらゆる好みと予算に対応できる時計が揃っている。さらに、この時計の価値は比較的安定している。
入門モデル
価格を重視している方には、タンクの世界への入門機とされるお手頃な価格のマストタンクがおすすめだ。この時計は、主に1970年代と80年代に製造されているもので、通常はクォーツキャリバーが搭載されており、レッドゴールドでコーティングされたスターリングシルバー製のケースが備えられている。このケースは、専門家の間でヴェルメイユケースとも呼ばれている。保存状態が良いこの時計シリーズは、Chrono24にて12万円未満の価格で販売されている。例として、Ref. 81006は約11万円で購入できる。
長年人気のあるモデル
タンク フランセーズとタンク ソロは、Chrono24で最も人気のあるシリーズの部類に間違いなく入る。弊社のマーケットプレイスでは、お手頃な価格で様々なモデルの種類が販売されている。未使用のモデルは、平均してメーカーの希望小売価格より15%低い値段で見つけられる。ステンレス製のケースとレザーブレスレットが取り付けられたRef. WSTA0029のタンク ソロ XLは、41万円の物が約34万円で販売されている。Ref. W51008Q3のタンク フランセーズも例に取ると、ステンレス製の女性用モデルはChrono24で約33万円の価格で見つけられる。これは、カルティエの希望小売価格より大幅に安価である。Ref. W5200025のレッドゴールドのタンク ソロ、またはRef. WJTA0023のダイヤモンド装飾が施されたタンク フランセーズは、最大20%も節約することができる。
アメリカンとアングレーズ
タンク アングレーズとタンク アメリカンに関しても、メーカー希望小売価格と比較した場合、約20%は節約できる。Ref. WSTA0017のステンレス製アメリカンは、約49万円の価格で販売されている中、レッドゴールドの大型モデル (Ref. W2609156) は約145万円で販売されている。
タンク アングレーズも同じような価格帯で入手できる。唯一の例外は、Ref. WT100002のようなダイヤモンド装飾が施されたケースを備える時計だ。このようなモデルの価格は約313万円以上に上昇することがある。
ヴィンテージのタンク
多くの時計コレクターが夢見るモデルは、1920年代のタンクだ。これらの時計は非常に稀で、価格は通常360万円を超える。その代替として存在するのが、1950年代と60年代のタイムピースだ。この時代に製造された、保存状態の良いタンク サントレは、約107万円からの価格で入手できる。タンク ノーマルの場合は、製造年、ケースサイズ、そして保管状態によって異なるが、約65万円~198万円の価格帯で購入することができる。
数字で見るカルティエ タンクの人気
タンクは、Chrono24ユーザーの間で誰もが認めるナンバーワンのカルティエ時計だ。このフランスの高級腕時計メーカーが提供する時計の中で、弊社のマーケットプレイスで販売されている30%がこのコレクションによる時計だ。その中でも、タンク フランセーズ (46%) とタンク ソロ (23%) が高い売り上げを誇っている。その次には、タンク マスト ヴェルメイユ (13%) とタンク アメリカン (10%) が人気である。
興味深い情報として、タンクを購入する方の79%は男性である。Chrono24でタンクを購入した女性の割合はわずか21%である。購入者の数が最も多い国はアメリカで、その次にイギリス、ドイツと続く。
ちなみに、カルティエ タンクは無数の著名人によって着用されている。例えば、ジャッキー・ケネディとジョン・F・ケネディ、アンディ・ウォーホル、モハメド・アリ、ダイアナ妃、クラーク・ゲーブル、イヴ・サン=ローランやミシェル・オバマなどがいる。