ナビタイマーは、スイスのグレヒェンに本社を構える時計メーカー、ブライトリングが提供する時計の中でおそらく最も人気のあるモデルだ。この印象深いクロノグラフは、世界で最も有名なパイロットウォッチの一つである。このモデルの特徴と言える機能は、様々に機能する回転計算尺ベゼルだ。近年ブライトリングは、同社のスタンダードモデルに対して、様々なリバイバルモデルを提供している。ブライトリングは、自社製ムーブメントB01をナビタイマー コレクションに導入して以来、時計マニュファクチュールとして存在している。
ブライトリング ナビタイマーについて
ナビタイマーという名称は、「ナビゲーション」と「タイマー」という二つの用語から構成されている。パイロット用に設計されたこのタイムピースは、1952年に初めて世に紹介された。この時計は、1942年に発売されたクロノマットを後継する時計と見なされている。ナビタイマーは、いくつかの数式計算に使用できるため、手首に着用する計測器、または小さなコンピューターのようだ。例えば、パイロットであれば、飛行速度、上昇率と降下率、また燃料消費などを計算することができる。
電子計測器は、ずっと以前から現代の航空機のコックピットに搭載されている。だが、ナビタイマーは依然としてパイロットや有名人にとても人気がある。ハリウッドスターでありながら趣味で飛行機を運転するジョン・トラボルタは、ブライトリングの最も有名なブランド・アンバサダーの一人だ。
ナビタイマーの中で最も重要なモデル
とても人気のあるモデルは、文字盤の色とブレスレットの種類が豊富にあるナビタイマー GMT 46だ。Ref.A24322121B1A1には、ブラックの文字盤とステンレスブレスが備えられている。ケースも同じくステンレス製で、その直径は46mmある。両方向に対応する回転計算尺ベゼルもステンレス製だ。
この時計の心臓部分には、ETA 7754をベースとしたブライトリング キャリバー 24が搭載されている。このムーブメントでは、文字盤の中央に時、分、秒針とGMT機能が設置されている。クロノグラフとスモールセコンドのインダイヤルは、12時、6時、そして9時位置にある。機能がたくさんある中でも、日付表示は3時位置に設置されている。このナビタイマーの防水性は30m (3気圧) で、水しぶき程度であれば全く問題なく使用できる。
ナビタイマー B01 クロノグラフ 43mm
Ref.AB0121211B1X1は、ブライトリングの自社製キャリバーB01が搭載されたナビタイマーだ。ステンレス製のケースは、直径43mmとなっており、標準モデルの41mmよりもやや大きくなっている。文字盤はブラックで、回転計算尺はホワイトの色となっている。アプライドインデックスはアワーマーカーの機能を果たし、その両端は暗闇で光る。ストップセコンドの秒針と回転計算尺ベゼルの10、35、60の位置には、赤いアクセントが施されている。白いインダイヤルは、3時、6時、9時位置に設置されており、日付表示は4時30分の位置にある。このモデルは、防水性は30m (30気圧) で、白いステッチが施された黒いレザーストラップが取り付けられている。
ブラックのインダイヤルを備えたホワイトの文字盤に魅力を感じる場合は、Ref.AB0121211G1A1の詳細を一度見てもらいたい。このバリエーションには、ステンレス製のブレスが備えられている。ケース径43mmのナビタイマーの他のバリエーションには、Ref.UB0121211F1P2がある。この時計は、上で述べた2つのモデルと機能の面では全く同じだが、とても印象的な18Kのレッドゴールドが採用されている。この素材で、ベゼル、インデックス、そして針が製造されている。
ナビタイマー B03 クロノグラフ ラトラパンテ 45
ブライトリングは、2017年にスプリットセコンド・クロノグラフ (フランス語でラトラパンテ) を備えたB03 クロノグラフを発表した。このB03キャリバーに至る究極のコンプリケーション機能には、2つのクロノグラフ針が上下に配置されており、互いに独立してタイムを測ることができる。
Ref.AB03102A1F1P2はステンレス製で、ケース径は45mmとなっている。「ストラトス・グレー」という名称で知られる色の文字盤には、アプライドのバーインデックスが施されており、その先端部はスーパールミノバが施されており、暗所でも時刻を確認できるように光る。3時、6時、9時位置にあるインダイヤルはブラックで、グレーの文字盤と微妙な色合いを形成している。文字盤に見られるスケールとストップセコンドの針にはレッドが控えめに配色されており、スプリットセコンドの針は完全にレッドの配色が施されている。この時計には、白いステッチが施されたブラックのレザーストラップが付属されている。
ナビタイマー Ref.806 – 1956 リ・エディション
ナビタイマーの中でおそらく最も興味深いモデルの一つは、Ref.AB0910371B1X1である。一見とても複雑に組み合わされている数字の列には、1959年に発売されたナビタイマー806が忠実に再構成されている。ステンレス製のケースは、オリジナル同様に直径41mmとなっている。文字盤とインダイヤルはブラックとなっており、計算尺のみホワイトに配色されている。アラビア数字のインデックスは、人工的に劣化されたスーパールミノバが施されており、文字盤に直接設置されている。機械式手巻きキャリバーB09が時計を駆動させている。
搭載されているキャリバーとブライトリング自社製キャリバーB01とその他
時計に搭載されているキャリバーによって、ナビタイマーの価格は変動する。ある特定のキャリバーが搭載されたモデルは、他のものよりも需要が高く、とても高い価格が付けられている。1952年の初期のモデルでは、スイスのマニュファクチュールが製造する手巻きキャリバーが採用された。ブライトリングは、最初の806だけではなく、トップタイムのような他のモデルに、ヴィーナス178を搭載していた。その他にも、数十年間に渡りETAによる手巻きキャリバーが採用されていることもあった。また、最もよく知られているのは、バルジュー72とバルジュー7740だ。ちなみに、バルジュー7740は、ナビタイマーに初めて日付表示を与えた。
ブライトリングは、1960年代の終わりに最初の自動巻きキャリバーを搭載したナビタイマーを発表した。採用されたキャリバーは、有名なクロノマティックキャリバーである。この機構は、ウィリー・ブライトリング、ジャック・ホイヤー、ビューレン、そして時計職人のジェラルド・デュボアが開発した、クロノグラフモジュールが搭載されたムーブメントである。1990年代には、とても有名な自動巻きキャリバー バルジュー77が追加された。
2009年は、時計キャリバーの供給という点においてターニングポイントとなった。ブライトリングはこの年に、初の自社製キャリバーB01を発表した。それ以降、ブライトリングはこの機構にいくつかの改良をし続けている。近年、同社はB04 (GMT機能)、B05 (ワールドタイム機能)、そして806のリ・エディションで採用されている手巻きキャリバーB09というB01のバリエーションを発表している。クロノグラフには、垂直クラッチ付きのコラムホイールが採用されている。B02は、チューダー MT5612が基盤となっている3針ムーブメントだ。これらの機構は、スイスのラ・ショー=ド=フォンにあるブライトリングのクロノメトリーで製造されている。全てのキャリバーは、70時間のパワーリザーブを誇り、COSC (スイスクロノメーター検定協会) によるクロノメーター認定証を保持している。
2018年には、続いてナビタイマー 8が発表された。この時計には、目を引くナビタイマーの特徴であった計算尺ベゼルが採用されていない。それにより、文字盤はさっぱりした印象を与え、ナビタイマーが全体的にもう少しエレガントに見える。自社製キャリバーB01を搭載するクロノグラフ時計に加え、承認されたETAキャリバーを搭載する3針時計、ワールドタイム時計、そしてデイデイト時計から選択することができる。2020年、ブライトリングは、ケース径わずか35mmのスリムなケースの3針モデルを発表した。これらのナビタイマーは、様々な色と素材の組み合わせで利用可能で、主に女性用として設計されている。
価格と価格推移
ブライトリング ナビタイマーの価格推移は、リファレンスナンバーと大きく関わっている。ヴィンテージ時計などの珍しいモデルは、元の販売価格と比べると価値が大幅に上がっている。だが、このような価格上昇が現行モデルにも当てはまるということは言い難い。いずれにせよ、ナビタイマーの価格は比較的安定していることは確かだ。ナビタイマーを購入する際には、未使用の時計で最も安値の物を探すか、新品同様の中古時計を探すことをお薦めする。転売を検討している方は、全ての付属品とそれ相当の書類が揃ったフルセットのナビタイマーを購入することをお薦めする。
ここで肝心なことは、数年間着用していても、モデルによって最善の注意を払っていれば、通常の転売価格が見込められる。多くの商品同様、需要と供給が時計の価格を決定する。そのため、本数が限定された特別な時計であれば、その希少性によって販売価格は上昇する。
この一例となるのが、1959本限定で発売された806 (Ref.AB0910371B1X1) だ。Chrono24では、新品の状態のこの時計を約91万円で購入でき、使用された状態の物は約77万円で販売されている (図を参照) 。定価は105万円となっている。これは価値が増加してる訳ではないが、メーカー価格よりも4%安いだけだ。比較参照として、Ref.AB0127211B1P1のナビタイマー B01 クロノグラフ 46のメーカー価格は91万円となっている。Chrono24ではこのモデルを新品の状態で約69万円で購入でき、これは定価より約28%安いことになる。
ナビタイマー 1とGMT 46の価格
ブルーの文字盤とブラックのレザーストラップ (Ref.A13324121C1X1) のナビタイマー 1 クロノグラフ 41は、Chrono24にて約49万円で販売されており、ブライトリングの定価68万円よりも30%安くなっている。ステンレス製のブレスを備えたRef.A24322121B1A1のナビタイマー クロノグラフ GMT 46の新古品の価格は、約54万円となっている。ブライトリングのメーカー価格は82万円で、30%も値段差がある。
ナビタイマー B03 ラトラパンテの価格
B03 クロノグラフ ラトラパンテ 45 (Ref.AB03102A1F1P2) の未使用品の価格は、およそ111万円 (メーカー価格: 130万円) する。搭載機能は同一で、ローズゴールドのケースの Ref.RB0311E61F1P1は、250本限定で販売されている。少ない本数ということと、上質な素材が使用されていることで、このモデルの新古品には約245万円の価格が付けられている。Chrono24では、メーカー価格よりも約74万円低い値段で販売されている。
コレクター向け: ヴィンテージ・ナビタイマー
冒頭ですでに述べたように、ブライトリングは2009年まで様々なメーカーによるスイス製のムーブメントをそのまま採用していた。初期のナビタイマーの値段は、搭載されているムーブメントによって多くの場合異なってくる。1950年代と60年代の初期モデル、特にRef.806は、コレクターや愛好家にとって特に興味深い時計のはずだ。これらの時計には、ヴィーナス178か希少なバルジュー72が搭載されている。値段に貸しては、搭載されているムーブメント、時計の状態、そしてオリジナルの備品によって、37万円から122万円の価格が付けられている。もし初期のナビタイマーに興味がある場合、1960年代と70年代のクロノマティック版を探していただくことをお薦めする。これらのモデルは、約30万円から122万円の価格で見つけられるだろう。
ナビタイマー モンブリラン ダトラのRef.A21330は、ネオヴィンテージ時計の一つである。このモデルは、ETA 7751をベースにしたブライトリング21のキャリバーを搭載し、従来モデルとは多少異なる特徴がある。最も印象的なのは、12時位置のデイデイト表示と、文字盤状でもう一つの針が示す日付表示だ。この時計を入手したいのであれば、中古品であれば約43万円で見つかるはずだ。