リューズ・プロテクター、クッション型のケース、明るい夜行表示 ― これがパネライ ルミノールを最も特徴付けているディテールである。この時計の名前は、パネライが1940年代に放射性のラジウムの代わりに使用したトリチウムをベースとする夜行塗料に由来している。今ではこの人気のダイバーズウォッチにも波乱に富む70年以上の歴史があり、現在ルミノールは時計業界のアイコンの1つとなっている。入門モデルであっても安定した資産価値を持っており、限定特別モデルや希少なモデルはコレクターの中で人気が高く、それに伴って価格も高くなる。
入門モデル: ルミノール ベースロゴ
ルミノール ベース ロゴはルミノールコレクションの手頃なモデルである。この腕時計の主な特徴は44mmのクッション型ステンレス製ケース、明るい夜行塗料が使用されたブラックまたはホワイトの文字盤、そしてもちろん特徴的なリューズ・プロテクター。時計に最大100m (10気圧) の防水性を持たせるために、リューズ・プロテクターがリューズをしっかりとケースに押し付けている。時計を巻き上げ、または設定したい場合は、リューズを緩めるためにまずブリッジの小さなレバーを操作する必要がある。
デザインの特徴
ルミノール ベースロゴは時針と分針によって時刻を表示する。ブラックの文字盤を持つモデル (Ref. PAM00773とPAM00774) ではアラビア数字とバーインデックスが使用されており、3時、6時、9時、12時の大きな数字とその間のインデックスが高い視認性を生み出している。これは暗所においても当てはまり、針と同じく各マーカーにも惜しみなく夜行塗料が使用されている。12時位置の下には「LUMINOR」の文字があり、6時位置の下にはロゴと共にブランド名が記されている。
ホワイトの文字盤を持つモデル (Ref. PAM00775) ではアラビア数字とドットインデックスの両方がアワーマーカーとして使用されている。後者には夜行塗料が塗布されており、12時位置はダブルドットで示されている。ブラックの文字盤との他の違いはミニッツトラックのバーインデックスで、これはブラックモデルには見ることができない。両時計共に風防の素材はサファイアクリスタルで、ベゼルにはポリッシュ仕上げが施されている。また、ステンレス製のずっしりとしたケースバックが内部の自社製ムーブメントを覆っている。
ストラップにはブラックのカーフスキンストラップ (Ref. PAM00773)、ブルーのステッチを持つファブリックストラップ (Ref. PAM00774)、ブラウンのカーフスキンストラップ (Ref. PAM00775) が用意されている。将来的にパネライ時計の売却を考えているのであれば、ストラップの交換を検討するべきだろう。未着用のオリジナルストラップの方が資産価値の安定性が高くなる。
2018年以降搭載された自社製ムーブメント
パネライは2018年からルミノール ベースロゴに自社製ムーブメントP.6000を搭載している。それ以前は手巻き式ムーブメントのETA 6497をベースとし、56時間のパワーリザーブを持つキャリバーOP IとOP Xが使用されていた。自社製キャリバーP.6000は最大72時間、つまり3日間のパワーリザーブを備えている。
P.6000は合計110の部品から構成されており、石数は19石。直径は15.5リーニュで、これは約34.9mmに相当する。振動数は毎時2万1600振動 (3Hz) である。
その他のモデル
スモールセコンドを持つモデル: ルミノール マリーナ
秒表示付きのモデルであれば、スモールセコンドを搭載するルミノール マリーナをチェックしてみるべきだろう。マリーナではスモールセコンドが9時位置に置かれており、アラビア数字と置き換えられている。また、スモールセコンドの針とインダイヤルの4本のインデックス (ブラックの文字盤モデル) にも夜行塗料が塗布されている。ルミノール ベースロゴと同じく、ルミノール マリーナにもブラックとホワイトの文字盤、およびストラップの素材にはカーフスキンとファブリックが用意されている。時計の内部ではパネライによってスモールセコンドが追加された手巻き式の自社製キャリバーP.6000が時を刻んでいる。
時計を数日ごとに手動で巻き上げたくないという場合は、自動巻きキャリバーを搭載するモデル、例えばルミノール マリーナ オートマティック Ref. PAM01104をおすすめしたい。手巻き式モデルと異なり、この時計には3時位置にサイクロップレンズ付きの日付表示が搭載されており、ブランドロゴの代わりに「Automatic」の文字が文字盤の6時位置の上にプリントされている。このリファレンスのステンレス製ケースは同じく44mmであるが、防水性能は最大300m (30気圧) となっている。
ムーブメントにはETA/バルジュー7750ベースのキャリバーOP XXXが採用されており、パワーリザーブは約50時間。このムーブメントは40mmモデルのルミノール マリーナ オートマティック (Ref. PAM01048 ) においても使用されている。4mmのサイズの違いを除いて、この2つのルミノール自動巻き時計は全く同じである。
8日間のパワーリザーブを持つモデル: ルミノール ベース 8デイズ
3日間のパワーリザーブでは十分でない?それならばルミノール ベース 8デイズが最適な1本だろう。驚くべき8日間 (192時間) のパワーリザーブを実現しているのは自社製キャリバーのP.5000。ベースロゴモデルと異なり、ルミノール ベース 8デイズではムーブメントをケースバックのサファイアクリスタル越しに見ることができる。このムーブメントは合計127の部品から構成されていて、石数は21石。2つの香箱を持ち毎時2万1600回振動している。
パネライ ルミノール ベース 8デイズの直径は44mm。そのデザインは「8 DAYS」の文字が追加されていることと、ロゴがないこと以外、ルミノール ベースロゴとほとんど同じである。防水性はルミノール マリーナと同じく最大300m (30気圧) となっている。
ルミノール カリフォルニア 8デイズ DLC (Ref. PAM00779) は、8日間のパワーリザーブを持つルミノール時計の中でも特別なモデルで、ブラックのDLCコーティングされたチタンケースと「カリフォルニア」ダイヤルを備えている。DLCは「Diamond-like Carbon」の略称で、簡単に傷が付かないようにケースの耐久性を高めている。「カリフォルニア」ダイヤルは昔のパネライの文字盤へのオマージュで、その特徴は上半分のローマ数字と下半分のアラビア数字。アワーマーカーとして3時、6時、9時の表示には水平のバーインデックス、12時の表示には上向きの三角形が使用されている。そして、レイルウェイ ミニッツトラックがPAM00779のレトロな外観を強調している。
価格と価格推移
パネライ時計の価格推移をロレックスやパテック フィリップの人気モデルと比較することはできないが、パネライ時計全般の価値は比較的安定しており、これはルミノールにも当てはまる。パネライ愛好家の中で特に人気があるのはケース径44mm、手巻き式、ブラックのサンドイッチダイヤルを持つモデル。サンドイッチダイヤルとは二重の文字盤構造を持つ文字盤のことで、下板には夜光塗料が塗布されており、上板ではアワーマーカーがくり抜かれている。つまり、夜光塗料は暗闇の中でこのくり抜かれた部分を通して光る。このモデルに比べ、自動巻きでホワイトの文字盤を持つ40mmモデルの人気はそれほど高くないため、売却する際の価格も大抵の場合低くなる。
Chrono24での販売数を正確に見てみると、ルミノールがヒット商品であることが分かる。販売されたパネライ時計全体の約40%がルミノールコレクションで、その内の20%がルミノール マリーナモデル、その後に僅差で自動巻きモデルが続く。ルミノール ベース 8デイズを中古で見つけることは稀である。
パネライ ルミノールモデルの新品価格
以下の価格表示はChrono24 Watch Collectionのデータと現在のカタログ記載価格 (2020年3月現在) を参照にしている。新品のパネライ ルミノール ベースロゴまたはルミノール マリーナを購入したい場合、Chrono24では希望小売価格よりも約20%安く販売されており、この価格差はルミノール ベース 8デイズにも当てはまる。新品のルミノール ベースロゴ (Ref. PAM00773) の価格は約45万円、ルミノール マリーナ (Ref. PAM00777) の未着用品は約50万円、ルミノール ベース 8デイズ (Ref. PAM00560) は約57万円となっている。
中古のパネライ ルミノールモデルの価格
中古時計の価格は数万円ほど下がり、新品時計に比べて7~12%の価格下落が予想される。Ref. PAM00561における価格下落は17%で、他のルミノール時計に比べて特に高くなっている。このホワイトの文字盤を持つルミノール ベース 8デイズの新品価格は約56万円、そして中古価格は約46万円である。このモデルの中古価格は過去4年間で7万円ほど下落した。同時計のブラックの文字盤を持つモデル (Ref. PAM00560) の中古価格も2015年から5万円ほど安くなっている。
しかし、入門モデルのルミノール ベースロゴでは様子が異なる。この時計の2019年初頭の中古価格は約37万円であったが、2020年初頭には約41万円と約11%の価格上昇を見せている。この時計のホワイトの文字盤を持つモデルは、昨年の中古価格において大きな変化を見せなかった。
ルミノール マリーナ (Ref. PAM00776) の中古時計も約39万円から42万円と同じく価格の上昇を見せた。また、これまで価格が安定していた44mmの自動巻きモデル (Ref. PAM01104) においては、2019年12月に約53万円であった中古市場価格が2020年2月に約63万円まで上昇した。
特に収集価値の高いモデル: プレ・ヴァンドームとデイライト スライテック
プレ・ヴァンドーム時代 (リシュモンによる買収から1997年まで) のモデルはパネライ愛好家の中で特に人気が高く、一層軍用時計としての雰囲気を残している。この人気はとりわけ1993年から1997年の間に数千本のパネライ時計しか製造されなかったことにも関係している。そのため「プレ・ヴァンドーム」モデルは現在希少で入手が難しく、それによって中古市場での価格が押し上げられている。1993年製のルミノール ロゴ (Ref. 5218-201/A) の現在の価格は、良い / 非常に良い状態で約215万円。さらに、ルミノール マリーナ (Ref. 5218-203/A) では約320万円となっている。
シルヴェスター・スタローンがパネライにオーダーしたルミノール デイライト スライテックも非常に人気の高いプレ・ヴァンドーム時計の1つ。Ref. 5218-207/Aはホワイトの文字盤を持つ200本限定モデルで、その価格は約350万円である。