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IWCは資産価値のあるブランドと言えるのか?

Thomas Hendricks 著
2022年7月8日 | 更新日: 2025/05/23
5 分
3:15

インターナショナル・ウォッチ・カンパニー、または通称IWCは、アメリカ人のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズによって創立された。この事業は、アメリカ人がスイスに渡って時計工房を設立するという野心的なものだった。創業者であるジョーンズは米国の生産技術とスイスの職人技を融合させることを目的に、スイスのドイツ語圏の町シャフハウゼンで時計の製造を始めた。1885年、IWCは時間と分をデジタル表示して時刻を伝える革新的な方法を特徴とする最初のパルウェーバーシステム搭載の懐中時計を発売。しかし、アメリカ市場への時計輸入にかかる高関税はコストがかかりすぎることが判明したのだった。そして、その後数十年間、会社の所有者は何度も変わることになった。 

IWC ポルトギーゼ:アイコンの誕生 

IWC ポルトギーゼ

1900年代に入ると、エルンスト・ヤコブ・ホムバーガーが社長となり、IWCは独自のキャリバーを開発し、それをエレガントなトノー型のケースに収めるようになった。IWCは耐磁性ケースを備えた伝統的なパイロットウォッチにも進出し、1930年代後半にマーク IXの発売とともに本格的にこのカテゴリーへ着手し始めた。このマーク IXは優れた視認性を持ち、のちのイギリス空軍からの要請を受けて後継モデルであるマークXが製造された。パイロットウォッチは今日でもIWCのカタログの大きな部分を占めているが、当時IWCはポルトギーゼやアクアタイマーなど、様々なモデルを開発していた。  1939年、IWCはオーバーサイズの時計への需要に応えるように、懐中時計のムーブメントを搭載したポルトギーゼコレクションを発表した。ポルトギーゼは1993年に復活以降、IWCの代名詞とも言えるモデルへと成長し、時刻表示のみのモデルの他に永久カレンダー、クロノグラフなどがそろっている。 ポルトギーゼは、IWCが他のブランドとは異なり、スポーツウォッチとドレスウォッチの両方の分野に対応できることを示している。 

IWCとジェラルド・ジェンタ:インヂュニアはなぜノーチラスやロイヤル オークほど人気がないのか? 

当時の多くのスイス時計メーカーと同様に、IWCは1970年代にジェラルド・ジェンタの協力を得て、一体型ブレスレットを備えたスポーツウォッチ、インヂュニア SL Ref. 1832を発売した。しかし、この時計は当時の他のジェンタデザインであるロイヤル オークとノーチラスに比べると市場での人気ははるかに低かった。このモデルはChrono24で約480万円から購入できるが、オリジナルのノーチラス Ref. 3700は約1600万円近くする。決して少額ではないが、インヂュニアはジェンタが手がけた他のモデルと比較するとお得な価格だ。  このモデルがあまり注目されない理由は、ノーチラスやロイヤル オークのような独特な形状を持たない丸いベゼルにあるのかもしれない。また、IWCはパテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンから成る「雲上御三家」に属していないため、文字盤の名前にそれほど重みがないことも理由の一つかもしれない。そうは言っても、ステータスよりも価値を重視する人にとっては、同じ理由からインヂュニアがより現実的な選択肢となり得る。  IWCは1980年代に入るまで、才能あるデザイナーたちからの協力を得て、オリジナルのデザインを発表し続け、ポルシェデザインとのコラボレーションブランドではタイムピースを複数デビューさせた。その中にはチタン製ケースを持つ初のクロノグラフや超頑丈なオーシャン 2000などがある。この期間に、IWCはこれまで外注していたムーブメントを自社のデザインにフィットさせるべく改良した。しかしIWCが自社製ムーブメントを使用するようになったのは、2005年にリシュモングループによってブランドが買収されてからであった。 

Watches and Wonders 2025で発表されたIWCのインヂュニアシリーズ最新モデル  

IWCの時計には投資対象としての価値があるのか? 

2005年以来、IWCは部品の内製化、長時間のパワーリザーブ、新しいパイロットウォッチに注力しながら、主力コレクションの開発と改良を続けてきた。2024年にデビューした記録破りのエターナル・カレンダーは、エンジニアたちの優れた技術力を示し、ブランドイメージ全体の向上に貢献した。 IWCは業界内で素晴らしい価値を誇り、数十年にわたるモデルラインアップとさまざまなデザイン言語を誇る。IWC インヂュニアは、歴史的にオーデマ ピゲやパテック フィリップのジェンタモデルと同等のプレミアム価格に達してはいないが、特にこのモデルがセラミックやチタンなどの新しいケース素材を採用していることから、コレクターにとって良い選択肢となる。IWC ダ・ヴィンチなどのシリーズには、他のメーカーでは考えられないような価格で、貴金属製のケースに収められた非常に複雑なムーブメントも搭載されている。 IWCは熱狂的な人気のブランドではないことから、パテック フィリップやオーデマ ピゲなどで見られるような市場の急激な価格高騰や下落を免れている。これらの時計は、ファン以外にはあまり注目されないことが多いものの、高品質で魅力的な歴史を持っている。IWCのカタログやアーカイブには、高級時計のカテゴリーにしっかりと位置づけられながらも、今日の基準からするとそれほど高価ではない、隠れたヒット商品が多くある。これらを考えると、IWCは投資価値のある優れた時計ブランドと言えるのだろうか?少なくとも筆者はそう考えている。読者の皆さんの意見はどうだろうか。  

記者紹介

Thomas Hendricks

Thomas Hendricks

私はもともと時計を見て育ったわけではありません。しかし、大学を卒業してから数年後、私はオンラインポータル「Watchonista」でライター兼マーケターとして就職。同僚は私に向かって冗談半分で「誰も後戻りできない時計の世界へようこそ!」と言いました。現在はChrono24でプライベートクライアントアドバイザーとして、人生の大事な節目に完璧な時計を探す人々のお手伝いをしています。

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