メインページへスキップする

Watches and Wonders特集:注目の限定版「A.ランゲ&ゾーネ ミニッツリピーター・パーペチュアル」

Sebastian Swart 著
2025年4月24日
7 分
A-Lange-Sohne-Minute-Repeater-Perpetual-watches-wonders-2025-10 (1) (1)

Watches and Wonders特集:注目の限定版「A.ランゲ&ゾーネ ミニッツリピーター・パーペチュアル」

2025年4月1日から7日にかけて、国際的な時計見本市Watches and Wondersが再び開催された。スイス国内外の名だたるブランドが一堂に会し最新作を発表するこのイベントでは、ザクセン州グラスヒュッテに本拠を構える高級時計メーカー、A.ランゲ&ゾーネも最新作を発表した。伝統ある同社は、技術的にも視覚的にも完成度の高い時計で知られており、たとえばミニッツリピーターを搭載したツァイトヴェルク・ミニッツリピーター(Ref.147.025F)や、永久カレンダーを備えた1815 ラトラパント・パーペチュアルカレンダー(Ref. 421.025)などが知られている。今回はWatches and Wondersの開催に合わせて、ミニッツリピーターという極めて高度な複雑機構と永久カレンダーを組み合わせた素晴らしい腕時計、ミニッツリピーター・パーペチュアル(Ref. 607.091FE)を発表した。この記事では、わずか50本限定のこの注目の高級腕時計を詳しくご紹介したい。

ミニッツリピーター・パーペチュアルのデザインと機能

ミニッツリピーター・パーペチュアル(画像:A.ランゲ&ゾーネ)
ミニッツリピーター・パーペチュアル(画像:A.ランゲ&ゾーネ)

まずは、ミニッツリピーター・パーペチュアルに採用されている40.5mm径のケースから見ていこう。プラチナ950製で、表面にはポリッシュ仕上げとサテン仕上げが施されている。厚みは12mm強だ。複雑なムーブメントを搭載していることを考えると、かなり薄型と言える。風防にはサファイアガラスが用いられており、シースルーケースバックにも同素材が使用されている。ケース右側にはリューズが配置され、反対の左側にはミニッツリピーターを作動させるための特徴的なスライダーが備えられている。防水性能は20メートル(2気圧)であり、水との接触は極力避けるべきだ。ミニッツリピーター・パーペチュアルの文字盤デザインは、A.ランゲ&ゾーネの時計に共通の特徴を備えており、特にランゲマティックに似ている。12時位置の下にはアウトサイズデイトがあり、永久カレンダー用のインダイヤルは3時、6時、9時の各位置に配置されている。時・分の表示はホワイトゴールド製の槍型針と、同じくゴールド製のローマ数字が担い、ローマ数字は文字盤外周のミニッツトラックの内側に配置されている。文字盤そのものは自社製作されており、いくつか特筆すべき点がある。ベース素材はホワイトゴールドで、その上に光沢のある黒いエナメルがコーティングされているが、よく見ると各インダイヤルとメインの文字盤に繊細な縁取りの装飾が施されていることに気づく。ホワイトゴールド製の細く窪んだ縁取りで、それぞれのダイヤルを明確に分ける役割を果たしている。文字盤全体のレイアウトがクリアになり、視認性も高められている。

ミニッツリピーター・パーペチュアル(画像:A.ランゲ&ゾーネ)
ミニッツリピーター・パーペチュアル(画像:A.ランゲ&ゾーネ)

A.ランゲ&ゾーネ独自開発のキャリバー L122.2

真の主役はもちろん、ランゲ自社製手巻きキャリバーL122.2だ。この実用的な名称の背後には、ブランドがミニッツリピーター・パーペチュアルのために開発した技術の粋が集まっている。ミニッツリピーターは前述の通り、ケース左側に取り付けられたスライダーを使って操作する。機構を作動させると、2つのハンマーが動き出して板バネ(ゴング)を打ち、低音の単音で正時を、2音のコンビネーションで正15分を知らせ、次に高い音色で正15分から経過した分の数を知らせる仕組みである。また、無音の間(ま)を回避する機能も備えている。この機能は、正時を打った後に正15分を打つ必要がない1分から14分までの間は、時を打ったあとに通常少し間を置いて分を打鐘するためにできる無音の時間を回避し、より自然なリズムで時打ちから分打ちへと移行するためのものだ。また、A.ランゲ&ゾーネの技術者たちは、ハンマー打ち機構の損傷を防ぐ特別な安全装置を開発し、リューズを引き出した状態ではハンマー打ち機構は作動せず、逆にハンマー打ち機構が作動している間はリューズを引き出せない仕組みになっている。そして、特許取得済みのハンマーブロッカーにより、ハンマーがゴングを叩いた直後、ほんの一瞬静止位置にブロックされ、不要な振動や余韻が発生するのを防いでいる。

ミニッツリピーター・パーペチュアルのケースバックとムーブメント(画像:A.ランゲ&ゾーネ) 永久カレンダーの各機能は文字盤の3時、6時、9時、12時位置に配置。3時位置には月と閏年の表示があり、6時位置にはムーンフェイズとスモールセコンドがある。特筆すべきは、ムーンフェイズ表示の2つの月が18Kゴールド製で、100個以上の手彫りの星々に囲まれている点である。9時位置には曜日表示と24時間表示が統合されている。そして12時位置にはアウトサイズデイトが配置されている。クラシックな永久カレンダーで、2100年3月1日まで修正を必要としない。特にエレガントな工夫がなされている点は、A.ランゲ&ゾーネのこれまでのモデル同様、ケースにさりげなく組み込まれた調整ボタン一つで、全てのカレンダー表示を同時に進めることができるところだ。機械好きを喜ばせるだけでなく、日常生活での使い勝手も良い高度な工夫だ。A.ランゲ&ゾーネ L122.1のテンプ振動数は毎時2万1600回で、3.0Hzに相当する。640個の部品で構成され、パワーリザーブは72時間だ。

キャリバーL122.2の仕上げ

自社製キャリバーL122.1の繊細な仕上げはサファイアガラス製のケースバック越しに眺めることができる。A.ランゲ&ゾーネらしい特徴は、精巧なハンドエングレービングが施されたテンプ受けとスワンネック形のバネ、ブラックロディウム仕上げのエングレービングが施されたシルバーの4分の3プレート、プレートの表面を飾る四つのビス留め式ゴールドシャトンだ。ハンマー打ち機構には手曲げの板バネと、同じく手作業で仕上げたハンマーが用いられている。ハンマーはブラックポリッシュ仕上げで、光を一方向のみに反射する。これが面白い効果を生み、ハンマーはある特定の角度から見た時のみ黒く見えるが、他の角度から見ると鏡のように輝く。香箱受け、遠心式ガバナーブリッジ、ハンマーブリッジには美しいサンバースト仕上げが施され、視覚的な一体感を生み出している。

市場に出回る可能性と価格

ミニッツリピーター・パーペチュアルは2025年4月初旬に発表されたばかりであり、わずか50本のみの限定生産である。まずはA.ランゲ&ゾーネのブティック限定での取り扱いとなっており、今後、国際市場に出回る機会は極めて限られる。いずれにせよ、この特別な時計を手に入れることができるのは、裕福な時計愛好家だけだろう。価格については「お問い合わせください」と記載されているが、業界内では1億円をゆうに超えると言われている。

まとめ

A.ランゲ&ゾーネはWatches and Wonders 2025で、ミニッツリピーター・パーペチュアルという革新的でセンセーショナルな高級時計を発表した。ミニッツリピーターとパーペチュアルカレンダーの組み合わせは非常に複雑で、パテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ ピゲなどのごく限られた名門ブランドのみが手掛ける領域だ。そこに、A.ランゲ&ゾーネも名を連ねることとなった。わずか50本の限定生産で、価格も本稿執筆時点では推定1億円超とされ、選ばれたごく限られた顧客のみが入手できるモデルだ。それでも、ミニッツリピーター・パーペチュアルは技術的に優れ、外観も極めて美しい一本として、Watches and Wonders 2025でリリースされた数多の時計の中でも特別な存在感を放っていた。

記者紹介

Sebastian Swart

Sebastian Swart

すでに数年前からChrono24のサイトを時計の買取と販売、そして時計について調べるのに使っていました。私は子どもの頃から時計に興味を持っており…

記者紹介

最新記事

特集