2023年04月05日
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Watches and Wonders 2023:注目の新作モデル

Kristian Haagen
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Watches and Wonders 2023:注目の新作モデル

今年もまたWatches and Wondersが開催された。念のために説明すると、初年度のWatches and Wondersは延期され、2021年にはオンラインで行われたため、”対面式” だったのはまだ2回目である。それでも、Watches and Wonders 2023は、今年50社近くの出展ブランド数を誇り、昨年は参加できなかったアジア地域からの来場者も集まり、好評に終わった。また、一般公開日には約1万5000人が来場し、スイス製機械式時計への関心の高さがうかがえた。いつも通り、イベントでは素晴らしいタイムピースがたくさん発表された。他より目を引くモデルもいつかあった。早速筆者のお気に入りを紹介しよう。

1. ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ 35mm

35mm径のヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ

驚く方もいるかもしれないが、筆者は34.5~35mm径のヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズが気に入っている。ヴァシュロン・コンスタンタンはこの中型時計をデザインした時、女性の手首を意識したと思われる。しかし、手首が細めの男性として、この時計の装着感は嬉しいものだ。37mmのバージョンは9時位置にスモールセコンドを備えていたが、この新モデルは中央に秒針を備えている。つまり、34.5~35mmのオーヴァーシーズは41mmのバージョンよりも小さい。サイズに関して言うと、宝石のベゼルを備えたモデルの直径は35mmだが、標準バージョンは34.5mmとなっている。

サイズをそこまで心配する必要はない。そこまで女性らしい着用感にはならない。

2. ロレックス デイトナ

ロレックス デイトナの新作
Rolex Daytona Caseback
デイトナには新しい、サファイアクリスタルケースバック

ロレックスは、すべての期待を裏切ることとなった。新しいサブマリーナも、新しいミルガウスもない。実際に、後者は生産中止となり、新しい40mmのエクスプローラーに置き換わったようだ。デイトナのサイズは1ミリも伸びていない。しかし、60周年記念のデイトナでは、インデックスを細くすっきりさせた文字盤レイアウト、時計と同じ素材で作られたセラクロムベゼル周りのリング(アンティークのデイトナ ref. 6263を思い起こすものであると思う)、改良されたケースデザインなど、いくつかの新たなデザイン調整が見られる。

新たなref. 126500は、ref. 116500よりも分厚い。残念なことに、新しい時計のシルエットは1976年~1991年にかけて製造されたチューダー ビッグ ブロックを思い起こさせる。しかし、そう思うのは筆者だけかもしれない。多くの人が新しいケースの厚みを高く評価するだろうと確信している。

プラチナモデルのサファイアクリスタルのケースバックが気に入っているかと聞かれたら、それは分からない。それでも、これはロレックスにとって初めてのことであり、注目すべきであることは間違いない。言うまでもなく、スケルトン化されたローターとロレックスのジュネーブストライプを備えた新たなデイトナキャリバー 4131で人目を惹くのに最適な方法だ。見た目も確かに素敵である。

3. チューダー ブラックベイ 54

Tudor Black Bay 54
チューダー ブラックベイ 54

チューダーは、2010年にヘリテージシリーズを発表して以来、飽きることのないブランドだ。まずはクロノグラフ、そしてその後絶大な人気を誇るブラックベイ コレクションを発売している。当初は41mmのケースで提供されていたが、ブラックベイはより中型のサイズで提供されるようになった。例えば39mmのブラックベイ 58、そして今回は37mmの新たなブラックベイ 54だ。

繰り返しになるが、”小さい” にもかかわらず、あえてこの時計を好きにならないでほしい。大人の男性向け時計であった1954年発売の初代モデルを考えてみよう。次に、この新作を試着してサイズを確認し、自分が当時の軍の潜水士であると想像してみてほしい。すると、オリジナルのチューダー サブマリーナのスタイルを踏襲した、ラバーストラップまたは美しいリベットブレスを備えた完璧なモデルであるとわかるだろう。

4. IWC インヂュニア

IWC Ingenieur
IWC インヂュニア

IWCは、1976年にジェラルド・ジェンタがデザインを手がけた新しいインヂュニア SLを発表し、一部のファンを驚かせた。しかし、ジェンタの未亡人がロンドンでの会合で筆者に言っていたように、彼女の亡き夫はこのシリーズのファンではなかった。そのために、IWCは有名な1976 SLのデザインの復刻モデルを作っていなかったのだ。その代わりに、IWCはブレスレットのデザインを変更し、ケースも40mmとオリジナルほどトノー型らしくないものを採用した。しかし、文字盤は1976年のオリジナルととてもよく似ている。

IWC インヂュニアは高級時計として宣伝されているが、IWCがそう宣伝しているのではない。しかし、その高級感は価格に反映されており、1万3000ユーロ(約187万円)という驚きの価格設定だ。これはステンレススチール製のロレックス デイトナとほぼ同じだ。

皆さんは、スチールのデイトナは一般人には手の届かない存在であるとお考えのことだろう。しかし、それは日付表示付きでわずか500ガウスの耐磁性を持つ3針時計の高額な価格を正当化するものではない。とはいえ、IWC インヂュニア 40mmはきっとよく売れると思う。なぜかと聞かれたら、特にチタン製のバージョンがとても魅力的な外観であるからだ。

5. ボーム&メルシエ リビエラ パーペチュアルカレンダー

Baume & Mercier Riviera Perpetual Calendar
ボーム&メルシエ リビエラ パーペチュアルカレンダー

ボーム&メルシエ リビエラは2023年に50周年を迎えた。この記念に同ブランドは素晴らしい新作をいくつも用意している。中でも傑作は40mm径でスチール製のリビエラ パーペチュアルカレンダーである。

このモデルは単に素晴らしいだけでなく、1973年より有名な一体型ブレスのデザインを備えた完璧なサイズだ。また、わずか1万7000ユーロ(約245万円)という魅力的な価格で購入できる。この価格でボーム&メルシエがお手頃価格の永久カレンダームーブメント(デュボア・デプラ 55102モジュールを搭載したボーム&メルシエ キャリバーBM12-1975AC-1)を提供することで、スイスの同業他社に挑戦していることを疑う余地はないだろう。また、たとえ価格が500万円だったとしても、素晴らしい文字盤と完璧な視認性を備えた美しい時計であることに変わりない。

5. カルティエ タンク アメリカン

Cartier Tank Américaine
カルティエ タンク アメリカン

カルティエは筆者が子供の頃から好きなブランドの一つで、多数のサントスモデル、マスト ドゥ カルティエ タンク、タンク クラシックを所有してきた。今年の初め、ホワイトゴールドのタンク アメリカンを、Chrono24で1年以上前から在庫を所有していたフランスの販売事業者から購入した。なぜ今まで売れなかったのか、私にとっては不思議で仕方ない。

確かに、タンク アメリカンはサントレではない。しかし、タンク クラシックでもない。代わりに、この二つの素晴らしい組み合わせとなっている。アメリカンの湾曲したケース形状は1921年のサントレに着想を得たもので、文字盤はタンク クラシックのものだ。

今年、カルティエは、主に内部のキャリバー 1899 MCがスリムになったことにより、タンク アメリカンのサイズを少し小さくし、より薄型にして一新することを決定した。タンク アメリカンの最新の貴金属バージョンとは対照的に、新作モデルには中央の秒針や日付表示がない。

結果、非常に高価で美しいサントレに代わる中堅価格帯のモデルとして、エレガントなタイムピースが誕生したことは言うまでもない。

Watches and Wonders 2023について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。 

Watches and Wonders 2023:チューダーの新作ラインナップ

Watches and Wonders 2023:カルティエが多様性に富んだ新作を発表


記者紹介

Kristian Haagen

私は20歳の頃から時計を収集しています。一番好きなのはヴィンテージの時計です。ヴィンテージの時計には魅力的な歴史やクールな由来があることが多く、このような由来のある時計は新品の時計よりもずっと興味深いものです。

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