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Watches and Wonders 2025、今年の時計トレンド

Donato Emilio Andrioli 著
2025年4月22日
7 分
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Watches and Wonders 2025、今年の時計トレンド

Watches and Wonders 2025が終了し、主要かつ最大の時計ブランド各社が今年の新作が出そろった。今年のWatches and Wondersの全体的な印象はどのようなもので、どんな時計トレンドが見受けられ、この先どう発展していくのだろうか?

ロレックスは、多くのリーク画像が流出したにもかかわらず、ランドドゥエラーをリリースして多くの人々を驚かせた。
ロレックスは、多くのリーク画像が流出したにもかかわらず、ランドドゥエラーをリリースして多くの人々を驚かせた。

Watches and Wonders 2025

Watches and Wonders 2025で見た今年の時計トレンドを詳しく紹介する前に、今年のWatches and Wondersについて全体的な印象を少し述べたい。今年は、筆者がここ数年で見た中で最もワクワクするものの一つだったと思う。というのも、単なるモデルのアップデートや文字盤バリエーションの追加をはるかに超えるものが紹介されたからだ。ロレックスは、ランドドゥエラーでまったく新しいモデルだけでなく、まったく新しいムーブメントも発表した。ノモスは新しいクラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーで一部の時計ブランドから注目を奪い、グランドセイコーは新しいスプリングドライブ U.F.A.で時計ファンを魅了した。時計業界はかつてないほど大胆かつ活気に満ちており、これは筆者がWatches and Wonders 2025で最初に気づいたトレンドでもある。

ノモスは、人気のクラブ・スポーツコレクションの予想外の新作で驚かせた。
ノモスは、人気のクラブ・スポーツコレクションの予想外の新作で驚かせた。

トレンド1:新たなものへの挑戦

特に嬉しかったのは、モデルのアップデートや新しい文字盤カラー以外に、まったく新しいモデルや、革新的な技術を搭載した新しいムーブメントが紹介されたことだ。正直に言うと、筆者はロレックス ランドドウェラーに大喜びした一人ではない。イベント前に多くのリーク画像が流出したせいで、「なるほど!」という瞬間が台無しになってしまった。そして、長年にわたるジェンタ人気ののち、ロレックスがこの流れに乗って、ロレックス オイスター クォーツをベースにした時計をリリースするのは、マーケティングとしてはまずい動きだと思う。近年、ロレックスはどちらかと言えば、トレンドセッターという存在であり、他社が仕掛けたトレンドを追うブランドではなかった。ティソもこれに気づき、Watches and Wonders 2025期間中にはロレックス ランドドゥエラーをテーマにした面白いインスタグラムの投稿を公開している。それでもロレックスが今年まったく新しいものを発表し、慣習を打ち破ったということに、筆者は称賛を贈りたい。今年、我々は初めてムーブメントを眺めることができるサファイアクリスタル製のケースバックが付いたスチール製のロレックスを目にすることができた。数年前にはまったく考えられなかったことだ。また、ロレックスが新しいモデルだけでなく、同時に新しいムーブメントも導入したことも、特に注目に値する。7135キャリバーが開発されるまでに要した期間は10年で、この新しいムーブメントは32件の特許を取得している。これはロレックス初の機械式ハイビートキャリバーだ。5ヘルツの周波数で作動し、新しい脱進機が搭載されている。またグランドセイコーも忘れてはならない。彼らは、新作のグランドセイコー SLGB003に搭載された新しいスプリングドライブ キャリバー9RB2で、新たな基準を打ち立てた。新しいスプリングドライブ U.F.A.(Ultra Fine Accuracy:「超高精度」の意)は、年差±20秒という最も高い精度を誇る。

グランドセイコー スプリングドライブ U.F.A. SLGB003
グランドセイコーは、新しいスプリングドライブU.F.Aで、精度に新たな基準を確立した。

トレンド2:大型の時計

直径39mmから41mmサイズの時計が当たり前となり、またヴィンテージウォッチブームによって、小型サイズの時計に対する需要が依然としてある中で、今年のWatches & Wonders 2025では大きめサイズの時計トレンドが確実に見られた。このトレンドは数カ月前に発表されたパテック フィリップのキュビタスですでに予測されていたが、今回のWatches and Wonders 2025でも同様の動きが見られた。ペラゴス ウルトラが標準のペラゴスよりもさらに大きい43mmであること、そして同じく43mm径の新しいブラックベイ 68を見てもわかるように、チューダーは今年のWatches and Wondersで、近い将来、腕時計が再び大型化する(可能性がある)ことを明確に示した。チューダーは、ここ数年37mm〜39mmの小型サイズのトレンドを牽引したブランドであり、そんなチューダーが大型の時計を発表したのだ。しっかりとした手首を持つお時計ファンや、大型の時計を好む時計ファンも取り残されることがなくなったため、このトレンドは特に喜ばしいことだと思う。

大型化の傾向が見られる時計業界。数か月前にパテック フィリップ キュビタスがこのトレンドの先駆けとなり、今では他の時計ブランドもそれに続いている。
大型化の傾向が見られる時計業界。数か月前にパテック フィリップ キュビタスがこのトレンドの先駆けとなり、今では他の時計ブランドもそれに続いている。

トレンド3:カラフルな色

文字盤、ケース、ストラップなど、時計は年々カラフルになっている。ロレックスは、Watches and Wondersでオイスター パーペチュアルの新しい文字盤カラーやホワイトゴールド製のGMTマスターII「スプライト」、イエローゴールドのスカイドゥエラー、レッドのレディ デイトジャストなど、多くのカラーを取り入れた新作を発表した。チューダーも、数多くの新しいカラーを発表し、新しいブラックベイ 58は、大胆なワインレッドの文字盤で来場者を驚かせた。興味深いのは、この印象的な新しいカラーが持つストーリーである。このカラーは1990年代初頭のチューダー サブマリーナーのプロトタイプですでに使用されていたが、結局登場することはなかった。カラフルな色は文字盤に限定される必要はないということは、ゼニスタグ・ホイヤーの両ブランドが証明している。ゼニスはクロノマスター スポーツ、デファイ、パイロット ビッグデイトにブルーセラミック製のケースとブレスレットを採用し、タグ・ホイヤーはフォーミュラ1のクラシックモデルをより大きくカラフルなバリエーションで発表している。

Watches and Wonders 2025:チューダー、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルトの新作
新しいチューダー ブラックベイ 58の印象的なカラーは、90年代初頭に作られた未発表のプロトタイプへのオマージュとなっている。

Watches and Wonders 2025:どのトレンドが残るのか?

Watches and Wonders 2025では、刺激的な新しいトレンドを確認することができた。しかし、何が定着し、何がすぐに過去のものとなるのだろうか?まずは完全に新しいものを発表することこそが、今後あらゆる時計ブランドにとって最優先事項であるべきだろう。だからこそ、このトレンドが単なる一過性のものではなく、今後も続くことを願っている。今後数年間で、大型時計へのトレンドは時計業界の不可欠な要素になる可能性がある。既存のサイズがこれまで通りの規模で維持される限り、このトレンドは一般的に歓迎されるだろう。小型の時計と大型の時計は共存し、互いを補完し合うことができる。このようにターゲット層が拡大されれば、メーカーと時計ファンの双方にとってメリットのある状況となる。一方で、より鮮やかなカラーを求める傾向は、今後数年間でやや衰退する可能性がある。カラフルな文字盤はどんなコレクションも引き立てるが、カラフルなケースやストラップはちょっとやりすぎかもしれない。 

記者紹介

Donato Emilio Andrioli

Donato Emilio Andrioli

チューダー ブラックベイ41という機械式時計を始めて買って以来、機械式時計の虜になってしましました。特に、古くて感動的な歴史を持つアイコン時計が大好きです。

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