ロレックス ミルガウスは強力な磁気にも耐久する究極のツールウォッチです。従来エンジニアや研究者向けに開発されたこのスポーティで優雅な高級時計は、現在ではデザインやファッションに敏感な時計ファンたちにも人気です。
ロレックス ミルガウスはオイスターコレクションの中でも特別な地位を誇ります。これは、 磁気シールドを使用することによって強力な磁気にも影響されない、ジュネーブ出身であるロレックス社にとって初の耐磁性能時計です。現在では、パイロットウォッチのロレックス エアキングにも同じ保護シールドが使用されています。その他すべての現行のロレックス時計においては、パラクロムヒゲぜんまいが時計を磁気から保護しています。保護シールドによって磁気から守られるミルガウスの名前の由来は、フランス語の「ミル(千)」と単位の「ガウス」の融合であり、1965年の発売当時から1000ガウスまでの耐磁性能を誇っています。
それに加え、この時計はねじ込み式の裏蓋とツインロック ねじ込み式リュウズ使用で水深100 m (10 気圧防水) までの防水機能を持ちます。ミルガウスは強い磁場で働く研究者のみでなく、水泳やその他のスポーツを趣味とする人たちからも好まれる万能な時計です。また、そのスポーティで優雅なデザインはオフィス環境にも合い、企業トップやマネージャーの日常用時計としても愛用されています。デザインの特徴としては、ケース径40 mmのオイスターケースと3連リンクのオイスターブレスレットが挙げられ、ポリッシュされたミドルリンクは時計のエレガントな輝きを強調しています。特に象徴的なのはオレンジ色のイナズマ時針、そして同じくオレンジ色で刻印された「MILGAUSS」の刻印、また文字盤に配置された同色のミニッツマーカーです。また、緑色のサファイアガラスも ロレックス ミルガウス の特徴的なマークとなっています。
リファレンスナンバー | 価格 (約) | 特徴 |
6541 | 1970万円以上 | 初期型はめったにない希少品 |
1019 | 265万円以上 | 珍しいヴィンテージ時計 |
116400GV | 85万円 | 緑のサファイアガラス |
116400 | 76万円 | 普通のサファイアガラス |
ロレックス ミルガウスの リファレンスナンバー 116400GV でZ-Blueダイヤル使用のモデルは新品で約85万円です。中古は約75万円です。黒い文字盤で3時、6時、9時の位置にオレンジ色のインデックスが施された Ref. 116400GV のモデルも同様の価格帯です。 リファレンスナンバー最後の「GV」は「Glace Verte」の略であり、緑のサファイアガラスを意味しています。この特別なガラスを持たない Ref. 116400 は新品で約76万円、中古で約66万円になります。
ミルガウスの初代モデルである Ref. 6541 は1956年から1960年初期まで製造されていました。このリファレンスナンバーを持つモデルは今日では非常に珍しい時計とされており、オークションでは1970万円以上の入札が入るほどです。それよりもさらに希少な Ref. 6543 は6541以前の短期間のみ製造されており、その本数は小数に限られていました。このリファレンスナンバーを持つモデルにも、同じく1970万円以上の価格が付けられることがあります。このモデルは黒い回転式ベゼルとオイスターケース、またオイスターブレスレットを持ち、初期のロレックスサブマリーナー・コレクションの時計を連想させます。
ヴィンテージ時計のコレクターが注目するのは、ロレックス ミルガウスの リファレンスナンバー 1019 です。このモデルは1960年初期から1988年までという比較的長い製造期間を持つにもかかわらず、希少な時計です。その理由は、当時ミルガウスは好んで購入される時計ではなかったため、市場で販売された本数が限られていたことにあります。現在ではその希少さがコレクターを特に注目させています。中古の Ref. 1019は約265万円でご購入いただけます。ヴィンテージ時計は最新のモデルよりもはるかに高額です。
ミルガウスの特徴は、特殊ヒゲぜんまいと金属シールドの使用によって時計が磁気の影響を受けないことです。初代モデルは1956年に リファレンスナンバー 6541 として発表されました。このモデルの本数は極度に少なく、高価格で取引されています。その当時ミルガウスは、 研究者や技術者など強い磁気のある場所で働く必要のある人々のために作られていた時計でした。1957年にロレックスの本社があるジュネーブに、欧州合同原子核研究機構 CERNが設立されましたこともミルガウスの発展に影響しました。
磁力の強さを表す単位 – 正しくは磁束密度 – は科学者カール・フリードリヒ・ガウスにちなんで名付けられました。初代ミルガウスは1000ガウスまでの耐磁性を持っており、この性能がモデル、ミルガウスの名称の由来です。このモデルの生産は1988年に一時中断しましたが、その後2007に再開されました。
磁気は腕時計の精度に大きな影響を及ぼします。中でも特に影響を受けやすいのがヒゲぜんまいです。磁気は特殊な場所のみでなく、日常環境にも存在します。ドイツの時計メーカー「ジン」は、その顧客サポート活動において約1000本の時計を検査したところ、その約60 %が磁気を帯びていたことを発見しました。またその内半数が強磁気の影響で故障していました。スピーカーやドアノブなどは強く磁気を帯びており、これらが強磁気の原因と言えます。また、主電動機も同様に強い磁気を帯び、鉄道や電車においても同じことが言えます。
磁気に対する対策としてロレックスは近年のミルガウスに パラクロムヒゲぜんまいを採用しました。メーカーは5年の開発期間を経て、2005年にこのヒゲぜんまいを発表しました。ニオブ・ジルコニウム合金と酸化膜からできているブルーのヒゲぜんまいは磁気の影響を受けることがありません。もうひとつの磁気対策には、ファラデーケージの原理でムーブメントを包んで磁気から保護する 磁気シールドがあります。ロレックスはこのクラシックな方法を補足使用していますが、このシールドに使われる合金成分と割合に関しては極秘となっています。他のメーカーはこれに軟鉄を使用しています。ミルガウスの耐磁インナーケースは上部分と下部分二重構造になっており、ムーブメントが搭載された後に時計技師が両部分をねじ込み式で密閉します。隙間は時計の軸とリュウズ部分にのみに限られています。
ドイツ工業規格DIN 8309は、耐磁性能時計は60ガウスの磁気に晒された後の精度誤差が一日につき± 30秒以内でなければならないと規定しています。ロレックスの特殊時計であるミルガウスはそれを大幅に上回る1000ガウスでこの規格を満たしています。またその精度もDIN 8309に規定されたものよりもはるかに正確で、一日につき± 2秒となっています。このミルガウスの高精度はスイスクロノメーター検定協会 (COSC) によって証明されています。
時計針を正確に動かしているのは 自社ムーブメント 3131 です。このキャリバーは48時間のパワーリザーブを保ち、一時間につき2万8800回振幅 (4 Hz) します。キャリバー 3131はミルガウスの製造が2007年に再開された時点から搭載され始めました。中秒針には、例えば時報に合わせて時刻を正確に設定できるように停止機能が備わっています。キャリバー 3131に類似したムーブメントには、ダイバーズウォッチ シードゥエラーに搭載された日付表示付きのキャリバー 3135があります。日付表示はカプセル式に保護された機構に隙間を与える原因となりシールドに影響を与えるため、ミルガウスではこの機能は意図的に省かれています。
ミルガウスの直径は40 mmです。このミドルサイズは細めの腕にも太めの腕にも似合います。ケースは904Lステンレス製でポリッシュ仕上げされています。ロレックスによると、この素材である904Lステンレスは頑丈で錆びにくいということです。ミルガウスは水に濡れても問題ありません。何故ならこの時計は10気圧防水、即ち水深100 mまでの防水機能を持つからです。このためミルガウスは水泳やシュノーケルダイビングの際にも着用できます。防水を可能にしているのはねじ込み式の ツインロックリュウズで、これには2重のパッキン構造システムが使用されています。
ミルガウスではポリッシュされたベゼルがサファイアガラスを縁取っています。そしてこのベゼルの内側にブラック、ホワイト、ブルーの3色から選べる文字盤が設置されています。ホワイトカラーの文字盤には明るいオレンジ色のアワーマーカーが採用されています。ブラックの文字盤では3時、6時、9時のみがオレンジ色で、その他の目盛りは白です。ブルーの文字盤ではすべての目盛りが白になっています。 ロレックス ミルガウス の象徴として、イナズマの形をした時針があり、これは全てのモデルでオレンジ色に統一されています。その先には矢印のような形になっており、まさにイナズマを連想させます。このイナズマ針は、比較的控えめでシンプルなこの時計のデザインとは対照的に際立ちます。
ミルガウスに取り付けられている3連リンクのブレスレットは、ケースと同じく904Lステンレス製です。これはオイスターブレスレットと呼ばれ、このブレスはロレックスのほかの多くのモデルにも採用されています。ミルガウスではミドルリンクがポリッシュされ、両側のリンクはマットに仕上げられています。このブレスには イージーリンクと呼ばれる5 mmの延長コマがバックル部分に配置されており、ブレスの長さを簡単に調節できます。
耐磁性能は他の時計ブランドにとっても課題のひとつでした。特にオメガは例えばシーマスターコレクションのアクアテラ 1万5000ガウス以上においてその成果を発揮しました。オメガはスイス連邦計量・認定局 (METAS) と協力し、2014年に時計の新しい認定制度までも共同開発しました。METASによって認定されたすべての時計には 「Officially Certified」という証明が付けられます。METASのたくさんのテスト基準の中のひとつには1万5000ガウスの磁気に耐久するという項目があります。
IWCブランドの耐磁性能時計をお探しの方は、インヂュニア・オートマティックというモデルをご覧いただくと良いでしょう。このモデルには軟鉄製シールドが用いられ、1000ガウスまでの耐磁機能を持ちます。またこれと同じ値の耐磁性を持っているのは、ジン社のモデル756です。耐磁性能時計のトレンドとしては、シリコンなどの磁気に影響を受けない素材をより多く使用する方向に向かっています。
ロレックス ミルガウス は 1950年代に特殊な用途のために考案されました。当時少数しか製造されなかったこの時計は、現在ではとても高価で注目のヴィンテージ時計となっています。今日では、磁気の影響で精度に誤差が出るのが稀ではないことが分かっています。ミルガウスは耐磁のパラクロムヒゲぜんまいとシールドによるムーブメントの保護を用いてこの問題に対抗しました。ステンレス製のケース、緑のサファイアガラス、イナズマ針を搭載したこの時計は、スポーティで優雅なデザインを持つ並外れたロレックス時計をお探しの方のすべてに最適な時計です。