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ジェームズ・ボンド ウォッチ: 1本では足りない
ジェームズ・ボンドの手首には、長い年月の間にたくさんの腕時計が着用されてきました。ロレックスとオメガは、最も有名な007ウォッチです。実際、サブマリーナとシーマスターは多くのシーンで見られます。しかし、秘密工作員ボンドが腕に着けた時計はこれだけではありません。
目次
ジェームズ・ボンドの手首を飾る時計
スパイ映画シリーズ『007』は、1962年以降多くの観衆を映画館に集めています。主役の秘密工作員ジェームズ・ボンドが大変な人気を集めてきたのと同じく、映画内で着用されてきた時計もファンや愛好家の間でカルト的な人気を誇ります。その際007は、特定のブランドに忠実とは言えません。初期の映画ではよくロレックスのサブマリーナが着用されていたのに対し、1970年代~80年代にはセイコー、ハミルトン、ブライトリング、タグホイヤー、ギュレンなどの時計が使用されました。
1995年以降、英諜報機関MI6のエージェントであるジェームズ・ボンドは、スイスの時計メーカーオメガを着用しています。言い伝えによると、当時オメガの専務であったジャン・クロード・ビバーが、007映画のプロデューサーとの交渉を持ちかけたとのことです。そして、俳優のピアース・ブロスナンはシリーズ17作目となる『007 ゴールデンアイ』の中で、クォーツ式のオメガ シーマスター プロフェッショナル 300Mを着用することになりました。
これに続き、ボンドはシーマスター 300からアクアテラ、そしてプラネットオーシャンなど様々なダイバーズウォッチを着けてきました。シリーズの25作目である『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021) にて、ダニエル・クレイグはシーマスター ダイバー 300Mの特別007エディションを着用しています。オメガはさらに、ファンやコレクターから熱い人気を誇るリミテッドエディションのボンド時計を過去数年間、定期的に発表してきました。
ジェームズ・ボンド ウォッチの時計は?
モデル / Ref. | 価格 (約) | 映画タイトル |
ロレックス サブマリーナ 6538 | 1325万円 | 『007 ドクター・ノオ』 |
ロレックス GMTマスター / 6542 | 650万円 | 『ゴールドフィンガー』 |
ロレックス チェリーニ キングミダス / 9630 | 120万円 | 『007 黄金銃を持つ男』 |
オメガ シーマスター300 スペクター / 233.32.41.21.01.001 | 110万円 | スペクター |
オメガ シーマスター ダイバー300M 007エディション / 210.90.42.20.01.001 | 105万円 | 『ノー・タイム・トゥ・ダイ』 |
タグホイヤー ナイトダイバー / 980.032 | 25万円 | 『007 リビング・デイライツ』 |
ブライトリング トップタイム / 2002 | 35万円 | 『007 サンダーボール作戦』 |
オメガ シーマスター プロフェッショナル / 2541.80.00 | 30万円 | 『007 ゴールデンアイ』 |
ハミルトン パルサー / P2 2900 | 15万円 | 『007 死ぬのは奴らだ』 |
グリュエン プレシジョン / 510 | 6万円 | 『007 ロシアより愛をこめて』 |
ボンド ロレックスの価格
007映画の第1作目『007 ドクター・ノオ』で、ボンドを演じるショーン・コネリーはロレックス サブマリーナで時刻を確認しています。専門家によると、モデルは Ref.6538だと言われています。その特徴は大型のリューズ (”ビッグクラウン”) と、リューズガードがないこと、そしてやや厚みのあるケースです。このモデルは、コレクターの間で非常に人気でス。状態の良い中古時計には、約1340万円の価格が付けられます。
安い価格のヴィンテージモデルには、例えば サブマリーナ Ref.5510 と Ref.6205があります。両モデルともボンド ロレックスに非常に良く似ていますが、価格には大幅な差があります。状態の良いRef. 5510モデルは、約480万円でご購入いただけます。状態の良い中古のRef.6250は約940万円でご入手いただけます。
オメガのボンド時計の価格
オメガのジェームズ・ボンド ウォッチには色々なモデルがあります。007が着用した初めてのオメガ時計は、 シーマスター プロフェッショナルRef.2541.80.00 でした。このケース径41mmのステンレス時計の防水性は300m (30気圧) で、ヘリウムエスケープバルブを搭載しており、ETA 255.461ベースのクォーツ式キャリバー1538で駆動されています。この時計は、スイスのビエンヌに拠地を置くオメガの商品カタログからすでに何年も前に外されてたモデルです。Chrono24では状態の良い中古モデルが多数提供されており、約30万円でご購入いただけます。
ピアース・ブロスナンに代わって、ダニエル・クレイグが2006年に始めて007役を演じたのと同時に、ボンドの世界における新しいシーマスターモデル「シーマスター ダイバー 300M」が採用されました。このモデルはプロフェッショナルと大変よく似ていますが、自動巻きの自社製ムーブメントによって駆動されています。Ref.212.30.41.20.01.003の標準モデルは、未使用約50万円、中古約40万円でご購入いただけます。これに対し、2006年に映画『007 カジノ・ロワイヤル』が公開された際に発表された007エディションRef.2226.80.00は、約75万円の価格が付けられます。このモデルの中古時計は、約43万円でご購入いただけます。その文字盤には、映画のオープニングシーンでお馴染みのピストルのシルエットが見られます。また、秒針には007のロゴが付いています。
『007 スペクター』に登場するジェームズ・ボンド ウォッチ
2015年に公開された007映画に登場する2つの時計の1つ、『007 スペクター』には、オメガ シーマスター アクアテラ 150Mが登場します。この時計には直径41.5mmのステンレスケースと青い文字盤が備えられており、防水性は150m (15気圧) です。この時計は、 1万5000ガウスの磁器にまで耐久するコーアクシャルキャリバーで駆動されています。このアクアテラモデルは Ref. 231.10.42.21.03.004で、未使用品の価格は約80万円です。このモデルは1万5007本に限定されています。状態の良い中古品は約70万円です。
『007 スペクター』に登場するもう1つのモデルは、 シーマスター 300 スペクター です。このモデルも、7007本に限定されています。シーマスター 300 スペクターには、直径41mmのステンレスケースが備えられており、グレートブラックのストライプが見られるNATOストラップで腕に装着されます。この時計は300m (30気圧) までの防水性を持ち、機構にはコーアクシャルキャリバー8400が使用されています。このスペクターモデルには Ref.233.32.41.21.01.001が付けられています。時計を入手するのは容易ではなく、価格は約110万円です。
『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』に登場するダイバー 300M
2021年公開の25作目の007映画、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のために、オメガがまたダイバー 300Mの特別モデルを作成しました。その1つが ジェームズ・ボンド リミテッドエディション Ref.210.22.42.20.01.004 です。この時計の文字盤にも、オープニングのピストルの渦が描かれています。オメガはさらに、ボンド家の紋章を時計の12時位置に設置しており、7時位置には有名な007のロゴに見せかけられた日付表示が見られます。7007本に限定されたこのコレクター時計は、約90万円の価格が付けられます。
オメガは同時に、ダイバー 300Mの007エディションを提供しています。 Ref.210.90.42.20.01.001のモデルは直径42mmのチタン製ケースを備え、自社製ムーブメント 8806で駆動されています。文字盤とベゼルはマットブラックで統一されており、文字盤上のインデックスと数字、並びにベゼルには、暗い場所で光を放つベージュ色の蓄光塗料が塗布されています。
文字盤上にも、チタン製のケースバックにも、上向きの矢印マーク ”ブロードアロー” が表示されています。このマークは、16世紀以降、イギリス政府の官有物である旨を示す印しとなっています。また、裏蓋には007のロゴと数字の62がエングレービングされています。この数字は、1962年に公開された007映画の第1作目である『007 ドクター・ノオ』の公開年数を思い出させます。この時計の価格はNATOストラップ付きで約91万円、チタン製のミラネーゼブレスレット付きで約103万円です。
クォーツ時代のボンド時計
1970年代にクォーツ技術が腕時計の世界に参入して成功を収めた時代に、ボンド・ウォッチにもそのトレンドの影響が出ることは明らかでした。1973年に公開された『007 死ぬのは奴らだ』では、 ハミルトン パルサー P2 2900 が着用されました。この時計ではプッシュボタンを押すことによって、赤いLEDインデックスで時刻がデジタル表示されます。普通の状態ではディスプレイは暗く無表示のままになります。このモデルは比較的希少で、Chrono24では約12万円で販売されています。また、2020年に発表されるハミルトンのPSRを選ぶこともできます。このモデルは、ハミルトンが初代パルサーの50周年を記念して1970本の数量で発売したパルサーを現代風にアレンジしたリニューアルモデルです。価格は約9万円です。
70年代後半~80年代は、セイコーの時代でした。1977年に公開された映画『007 私を愛したスパイ』の中で、ジェームズ・ボンドは セイコー 0674 5009 を手首に巻いています。その次の映画作品 (『007 ムーンレイカー』1979年) に登場したセイコー時計は、データバン クを搭載する SFX003 (M354-5019) です。『007 オクトパシー』 ( 1983年) に登場したセイコー G757 5020 スポーツ 100は、ファベルジュの卵を探知するのに役立ちます。1985年に公開された『007 美しき獲物たち』までジェームズ・ボンドによって着用されたセイコーの時計ですが、007ファンの目にはロレックスのボンド・ウォッチほど焼き付いてはいないようです。セイコーのボンド・ウォッチの大半は現在販売されていないモデルで、これらを見つけるのは困難です。その価格にも幅があり、状態の良い中古時計には約5万円~25万円の価格が付けられます。
その後ちょっとした方向転換があり、タグホイヤーのダイバーズウォッチ Ref. 980.032 が採用されました。このモデルの特徴は文字盤全体に蓄光塗料が塗布されていることで、その理由から「ナイトダイブ」というニックネームが付けられています。ブランドの変更は、主役の男優にティモシー・ダルトンが起用されたのと同時に行われました。この時計の中古モデルは約25万円でお買い求めいただけます。蓄光塗料の文字盤はいらない場合、それより安い価格で提供されている Ref.980.013のモデルをご覧ください。このモデルは蓄光文字盤のボンド・ウォッチと機能面では変わりませんが、文字盤は従来のブラックになっており、インデックスのみに蓄光塗料が塗られています。未使用品の価格は約14万円で、中古品は約15万円です。
007のためのグリュエンとブライトリング
その他いくつかのモデルも、007映画シリーズに登場しています。その1つであるグリュエン プレシジョン モデル 510は、『007 ドクター・ノオ』、『007 ロシアより愛をこめて』 、『ゴールドフィンガー』で着用されました。ケース径31mmのこの手巻き式ドレスウォッチは、約6万円の価格でご購入いただけます。
『007 サンダーボール作戦』(1965年) では、ボンドはハイジャックされた原子爆弾を探し、MI6の兵器マスター「Q」がガイガーカウンターを装備した ブライトリング トップタイム 2002.3 / N で放射能を測定します。そして、ショーン・コネリーの手首に巻かれた腕時計は、ただのトップタイムではありません。これは、この映画のために特別に作られたケースを使った一点ものです。この特別な時計は、2013年にロンドンで開催されたオークションで、1585万円相当の記録的な価格で落札されました。これと同じアンティーク・クロノグラフは、保存状態の良いスタンダードモデルの場合、より安い価格で手に入れることができます。価格は状態や文字盤の仕上げにもよりますが、30万円~40万円になります。ブライトリングは、2020年に最新のクロノメーター認定キャリバーを搭載したトップタイム・リミテッド・エディションを発表し、2021年にはトップタイム・デウス・リミテッド・エディションと別のモデルを発表しました。前者はいわゆるゾロ・ダイヤルを搭載しており、価格は約55万円です。デウスモデルは、パンダをイメージし、針とひし形の部分にオレンジ色のアクセントを加えています。また、積算計は正方形とも円形とも言える形になっています。この時計の価格は85万円前後です。
敵役が付ける時計
ロレックスを着用するのはボンドのみでなく、映画に登場する悪役も同じくこれを愛用しています。『007 黄金銃を持つ男』では、殺し屋のフランシスコ・スカラマンガ (クリストファー・リー) が ロレックス チェリーニ キング ミダス を腕に着けているのが見られます。このチェリーニは、007映画に登場する数少ないレザーストラッ付きドレスウォッチの1つです。18Kゴールドのブレスレットとケースを備えるキング ミダスは、約120万円です。レザーストラップ付きのモデルはそれよりずっと安く、約55万円でご購入いただけます。
007映画の定番である『ゴールドフィンガー』では、ロレックス GMTマスター Ref.6542が、悪役オーリック・ゴールドフィンガー (ゲルト・フレーベ) の女性パイロットであるプッシー・ガロア (オナー・ブラックマン) の腕に巻かれています。GMTマスターは、ロレックスの中でも絶大な人気を誇るヴィンテージモデルです。この映画に登場するRef.6542などのモデルには、約540万円の価格が付けられます。
ボンドに敵対する側で着用された パイロットウォッチで有名なもう1つのモデルは、ブライトリング ナビタイマーのRef. 806です。この時計は、『007 サンダーボール作戦』においてパイロットのアンジェロ・パラッツィの腕に着用されています。彼は、2人の悪人エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドとエミリオ・ラルゴが、原爆を手に入れるのを助けます。このシリーズの時計は、現在約75万円~85万円で販売されています。
ボンドの作家イアン・フレミングと彼のロレックス
007映画シリーズの初期に、ボンドがロレックス時計を着用していたのには様々な理由があります。まず、控えめなスタイルはジェームズ・ボンドらしくないということが挙げられます。スポーティーな高級時計は、アストンマーティン DB5のようなスピーディーな車、オーダーメイドのタキシード、そしてマルティーニを揺らす腕に、まさに最適だったのです。理由の2つ目に、小説の設定があります。
ボンドの作家 イアン・フレミング (1908年-1964年) は、1953年に出版された『カジノ・ロワイヤル』にて、主人公ジェームズ・ボンドが活躍するシリーズの第1作を世に送り出しました。1963年に出版された小説『女王陛下の007』の中に、ボンドがロレックスのオイスターパーペチュアル コレクションの時計を着用している、という記述があります。さらに、この時計には大型の夜光インデックスと金属ブレスレットが付いている、と記述されています。従って、多くの人は小説内のボンドが着用していたモデルは映画で使用されたサブマリーナとは別のモデルであり、これはおそらく作家のフレミング自身も所有していたエクスプローラーだろう、と推測されています。このため、エクスプローラーはボンド・ウォッチとして有名ではないものの、正真正銘のボンド・ウォッチとされています。