筆者はピンクという色にはパワーがあると感じている。始まりは、オードリー・ヘップバーンの名言である「私はピンクを信じてる」という言葉だ。彼女はピンクという色を、内面の強さと自信を表すものであり、身にまとうべきもの、そして身にまとってもよいものとした。50〜60年代の有名な女優であり、ファッション界を代表する女性であったオードリーの言葉に異を唱える人がいるだろうか。
多くの文化において、ピンクは女性らしさ、愛情、ロマンス、喜び、派手さや奇抜さなど、さまざまな事柄を象徴している。また、最近では映画『バービー』で、さらにピンクという色が注目された。
しかし、このようなピンクの持つ意味合いは時計の世界にも適用されるのだろうか。時計コレクターやブランドの中には、時計の世界を伝統、時代を超えたエレガンス、そしてラグジュアリーの代名詞と見なす人もいる。バービー、ピンク、ラグジュアリーという言葉は、どのように結びつくのだろうか。
そこで今回は、最近注目が集まっているピンクの文字盤を持つ時計について見ていきたい。
ロレックス オイスター パーペチュアル 36
ロレックスは、特に濃色のグリーンを使うことで知られており、多くのモデルに用いられている。しかし、ロレックスのフローラルでソフトなピンクは知られていない。
展開カラーの中でもターコイズやピンク、イエロー、新しい「パズルダイヤル」は特に斬新で目を引く色だ。もし、購入する機会が巡ってきたとしたら、間違いなくその存在感と美しさに引き寄せられてしまうだろう。ステンレス製ケースのサイズは36mm径で、男女問わず手元をエレガントに彩ってくれる。
サイズは控えめだが、特にキャンディピンクダイヤルは主張が強い。そこにポリッシュ仕上げのリンクがない、マットなブレスレットを組み合わせることで、派手すぎない完璧なバランスが生み出されている。またこのカラーなら、ロレックスではあるものの、高級品やステータスにこだわるというよりは、品質、カラー、デザインを重視して時計を選んでいるという事を主張できる。
オリス ダイバーズ65 コットンキャンディ
ロレックスと似たような文字盤の色で、はるかにスポーティーな印象を持つのが、オリス ダイバーズ65だ。ブロンズ製、またはステンレス製から選ぶことができる。前述のロレックスとの違いは、ケース径がわずかに大きい38mmで、その名のとおり、本格的なダイバーズウォッチであるということだ。価格や入手可能性もオイスター パーペチュアルとは異なる。
ブロンズ製ケースにブロンズ製ブレスレットを備えたダイバーズウォッチは、極めて大胆なアイデアだと言える。コットンキャンディ色の文字盤と組み合わせたこの時計は、普通の時計コレクターには理解し難いものかもしれない。しかし、摩擦なくして輝きは生まれない。
オリスの「コットンキャンディ」は時計ファンも納得のスペックを備えている。ユニセックスサイズで、100mの防水性、丈夫な無反射コーティングのサファイアガラス、暗い場所でも確実に読み取れるスーパールミノバ製のインデックス、日付表示付きの自動巻きムーブメント733など、必要な機能をすべて備えている。
また、技術面に加えて、ブロンズの経年変化により、独特の趣が生まれることも一部の愛好家にとって魅力的な要素となっている。
タグ・ホイヤー カレラ デイト 36mm
ライアン・ゴズリングが映画『バービー』で着用しているのはこの時計だ。しかし、映画に登場した3本のカレラのゴールドモデルは、この記事のコンセプトに合わない。また、ライアン・ゴズリングが実生活でどんな時計を着用しているかも興味深い。タグ・ホイヤーのブランドアンバサダーとしてもちろん報酬ももらっているはずだ。
しかし、ここではタグ・ホイヤー カレラがライアンの心を「プライベート」でも魅了した、と仮定しておこう。
36mmのタグ・ホイヤー カレラ デイトは映画の公開に合わせて発表された。ケースはステンレス製、100mの防水性、そして日付表示付きのピンクの文字盤を備えている。またムーブメントにはETA 2892をベースにしたキャリバー7が搭載されおり、56時間のパワーリザーブを備えている。サファイアクリスタルのシースルーケースバックからは、このムーブメントを垣間見ることができる。普段使いに最適な時計かと聞かれたら、答えはイエス。しかし、オリスの時計との違いはどんなところなのだろうか。
タグ・ホイヤー カレラ デイトはオリスと比べてよりエレガントであり、力強い濃色のピンクの文字盤はサンバースト仕上げによって強い輝きを放っている。また、ポリッシュ仕上げのケースとブレスレットがその派手さを一層際立たせている。
ただし、ライアン・ゴズリングのレッドカーペットでの写真を見てみると、服装やシーンを正しく選べば、まったく場違いではないと言える。それどころか、この時計はまさに会話のきっかけとなって、その場を和ませてくれるだろう。
ピンクという色が持つ文化的な意味合いについては、冒頭ですでに紹介した。このこととChrono24が持つ市場データを照らし合わせると、ピンクの文字盤を持つ時計が米国で特に人気があることがわかった。僅差で2位に付けたのがドイツ、3位にはフランス、そして4位にイタリアが続く。 この結果は、バービー映画の影響なのだろうか。それとも、ファッションだけではなく、先に挙げた国々では、人々が個性の主張や自己表現、寛容さを大切にしているからだろうか。 確かではないが、きっと何かしら関係があるはずだ。
ノモス クラブ キャンパス 36 ディープピンク
ピンクの文字盤を持つ時計には、間違いなくあるパターンがある。モデル名によく見られる “36” の記載だ。36mmは、男女問わず最適なサイズと考えら、ノモス クラブ キャンパス 36 ディープピンクに関しても同様だ。実は筆者自身もサーモンカラーではあるが、ノモス クラブ キャンパスを所有している。その理由は、高品質で非常に手頃な価格の自社製キャリバー、そしてノモスで定評のある典型的なバウハウスデザインによるシンプルさにある。
タグ・ホイヤーのピンクはよりトーンは若干暗めだが、サンバースト仕上げではないため、控えめな印象を受ける。まさにエレガントな時計で、フラットなステンレスケースと手巻きムーブメントが、時計との特別なつながりを生み出している。クラブ キャンパスは、スマートでカジュアルな時計の代名詞であり、普段使いにふさわしく、本格的なコレクターにも十分魅力的な1本だろう。
ノモスについては、ラグからラグまでの幅(ラグトゥラグ)についても触れておきたい。47.5mmと通常のサイズだが、手首に付けると、数字から想像するよりも大きく見える。
ゼニス エル・プリメロ クロノマスター オリジナル ピンク
ゼニスといえば、おそらくカラフルな文字盤の時計ではなく、アイコニックなクロノグラフ、エル・プリメロを思い浮かべることだろう。しかし、この2つを組み合わせたピンクの文字盤を備えたクロノグラフはどうだろうのか。
クロノマスター オリジナル ピンクは、伝統と斬新さを兼ね備えたモデルだ。乳がん撲滅を支援するスーザン G. コーメン®乳がん財団とのコラボレーションによる限定モデルは、深い意味を持つ重要な特別なモデルとなっている。
Ref. 03.3202.3600/33.M3200のこの時計は、38mm径のステンレスケースで、典型的なエル・プリメロの形にクロノグラフ特有デザインという外観で、50mの防水性、スーパールミノバが施されたロジウムメッキ針、クロノグラフ機能、日付表示、そして60時間のパワーリザーブを備えている。ムーブメントにはエル・プリメロ 3600が採用されており、シースルーケースバックからも眺めることができる。
そしてサンバースト仕上げのライトピンクの文字盤は、この記事の冒頭でもお伝えした通り、ピンク色が持つ「自信と力強さ」を表現している。