2024年02月16日
 6 分

ロレックスの価格変動:要因、傾向、予測

Pascal Gehrlein
市場動向:ロレックスの価格変動

市場動向:ロレックスの価格変動

ロレックスはそもそも単なる時計の域をはるかに超えた製品である。ロレックスをはじめとする高級ブランドの時計は、長い年月をかけて目覚ましい発展を遂げてきた。それは価格の面だけでなく「意味合いや利用の仕方」の面でも変化し、例えば投資対象としても発展を遂げた。

この記事では、Chrono24の時計価格指数であるChronoPulseを使って、過去数年間のロレックスの価格変動を観察し、その動向に最も影響を与えた要因とモデルについて分析してみたい。

上昇

ロレックスの価格変動を理解するには、ChronoPulseの時計価格指数を観察してみると分かりやすい。この指数は、注目すべきブランドとモデルの価値変動を示すもので、Chrono24で特に取引量の多かったものを扱っている。ロレックスの価格指数を見ると、過去5年間で著しい上昇曲線を示しており、多くのコレクターや投資家を熱狂させた。人気の高いモデルの価格指数は2019年1月から約42%上昇している。

Rolex Datejust 36 Ref. 126234
ロレックス デイトジャスト36 Ref.126234

特に好調だったのはロレックス デイトジャスト36 Ref.126234、ロレックス デイトナ Ref.116500LN、ロレックス エクスプローラー Ref.16750などで、指数で40%以上の上昇を示している。 

価格変動の主な要因

もちろん気になるのは、この急激な上昇をもたらした主な要因は何だったのかということだ。

  • ブランド価値: ブランドそのものが決定的な役割を果たしている。成功者たちをブランドアンバサダーとしたイメージ戦略で、欲しいという強い欲求が消費者の間に広がる。 ロレックスは成功の代名詞であり成功のシンボルとして名声も高い。
  • 特別感:需要の高さと限られた供給量があいまって、限られた人だけが手に入れられるというロレックスだけが持つ特別感がある。ロレックスは、世界中でこの特別感というオーラを纏うのに成功しているが、それは需要が高いにもかかわらず、あるいは高いからこそ、生産を制限し、ほとんどのモデルを意図的に希少なものにしたためだ。モデルを製造中止にすることで特別感を高める手法は、氷山の一角にすぎない。よくあることだが、人(この場合は時計コレクター)は手に入らないものを欲しがり、物欲のサイクルがそこから始まるのだ。この戦略的なアプローチは需要を高め、価格を安定させるのに役立っている。二次流通市場でも同様だ。
  • 品質:時計愛好家のロマンを傷つけないために言っておかねばならないが、もちろんロレックスが使用する素材の良さも非常に重要な役割を果たしている。堅牢性、耐久性、ひいては時計の寿命が、ロレックスの成功とは関係ないと考えるなら大間違いだ。価値が安定していることと長年にわたる成功の歴史はもちろん、ロレックスの耐用年数の長さと、それによって長期的な投資対象として見られているという事実にも裏付けられている。ロレックスはさまざまな意味で安心感を与えてくれるのだ。
  • 経済性:ロレックスの腕時計の特筆すべき特徴は、経済が不安定な時代でさえ、価値が極めて安定していることだ。他のさまざまな市場が芳しくない時でさえ、ロレックスの時計は長年にわたってその価値を維持し、さらに上昇させるとの評価が高い。そのため、特に資金を安全に逃避させる魅力的な投資先となる。低金利や株式市場の配当が低い時代であっても、高級品などへの投資は成功する。そしてもちろん、業界で最も人気のあるブランドの「最高級品」はその恩恵を大いに受けるのである。

お分かりのように、成功とはブランドの歴史、世の中のトレンド、コロナ禍とそれに伴う実店舗購入の制限、オンライン販売の急増、アクティビティからモノへの消費シフトなどといったさまざまな要因の組み合わせによるものだ。

ただ、状況が変化したら何が起こるのだろうか?

過去5年間のChronoPulseの推移を見れば明らかなように、ロレックス価格のピークは2022年4月だった。多くの国でコロナ対策が緩和され、まずFRBが、そしてその後他の中央銀行も2018年以来初めてとなる公定歩合の引き上げを断行し、従来の株式投資や金融投資を投資家にとって再び魅力的なものにしようとした時期と重なる。

そして2024年1月、時計の価格は2021年8月以来の最低水準まで下落した。

Der ChronoPulse Rolex-Index der vergangenen fünf Jahre
過去5年間のChronoPulse – ロレックス価格指数

ロレックス価格指数全体を見ると、1年間で5%弱下落している。

その理由は、金利の低下や他の投資先の魅力の増大だけでなく、地政学的な緊張の高まりや多くの国のインフレにもある。こうした不確実性と経済成長の鈍化は、高級時計の買い控えを招き、その結果、供給過多と価格下落が起こり、すなわち買い手市場となった。

ロレックスを買うなら今?

恐らく多くの人が知りたいこと、それは、近年最高のパフォーマンスを発揮している時計で、現在入手しやすい価格のものはどれか、ということだろう。

ChronoPulse – 時計価格指数に掲載されているモデルの中で取引量が最も多く、したがって下落傾向が最も強い上位5モデルは、ロレックスデイトナ、デイトジャスト41、サブマリーナ デイト、スカイドゥエラー、GMTマスター IIである。過去1年間で価格指数はそれぞれ3%以上下落している。

もちろんロレックスの希望小売価格と比較すれば、それでもまだ上回っているのだが、以前は非常に高値で取引されていたこれらのモデルについて、二次流通市場での相場や価格の是正が行われた。これは、より多くのモデルが市場に出回り、買い手市場となったことを意味する。

下降トレンドは続くのか?

近年のロレックスの価格推移は、時計業界と金融市場において、緊張感あふれるものとなっている。投資では常に、参入あるいは撤退のタイミングが重要だ。毎年1月に行われる値上げと認定中古プログラムを通じたロレックスの二次流通市場への介入は 、近い将来の金利引き下げに関する議論と相まって、価格の再上昇に繋がるかもしれない。

2023年12月のロレックス価格指数の「損失」はわずか−0.36%だった。価格が底を打ったと考えた専門家は正しかったのかもしれない。時間が経てば分かるだろう。だが現時点で確かなことが2つある。まもなく年に一度の時計見本市が開催され、そこで新作モデルが発表され、生産終了モデルを知ることになる。そして、もし気に入った時計を見つけたら、手に入れる絶好のタイミングはいつでも「今」だということだ。今なら条件は過去2年よりも良いかもしれない。


記者紹介

Pascal Gehrlein

こんにちは、パスカルです。初めての「高級時計」を探してChrono24のサイトを何時間も見ていた際に、Chrono24の本社が自分の家のすぐ近くにあることを発見しました。…

記者紹介

最新記事

cartier-rotonde-2-1
2024年04月16日
 7 分

個性が光るカルティエ時計3選

Thomas Hendricks