ロレックスのカタログにはアイコニックなモデルが満載だ。ロレックスの成功の大きな秘密は、そういった多くの定番モデルのオリジナルデザインを変えないことである。ロレックスは自社の時計が持つ最もわかりやすいデザイン的特徴を変えることなく、定期的にアップデートを行うことで伝説のブランドとなった。また言うまでもなく、同社は自社の時計が今日の頼れるアイコン時計として存在できるよう、技術的な開発にも大規模な投資を行ってきている。
しかしどんな巨大な伝説でさえも、時には変更の必要に迫られる。この記事では、私がデザイン的なアップデートあるいは大変革の必要があると思われる3本のモデルを取り上げたい。もちろんこれは個人的見解にすぎないが、どうなるかは誰にもわからないことだ。Watches & Wonders 2022が間近に迫り、このリストに上がったモデルが変更されるかどうかも、もうすぐわかるはずだ。それについては随時お知らせしていこう。
1. ロレックス エアキング
ロレックスのコレクションの中でモデルチェンジすべき時計がひとつあるとしたら、それはロレックス エアキングである。現行モデルはロレックスのラインナップ内でも非常な変わり種であり、常にこれに関する人々の意見は二分化されてきた。私の推測では、このタイムピースに関しては好きな人よりも嫌う人の方が多いが、好きな人は非常に熱心にこのモデルを支持している。私個人はこの時計のファンではないので、何かより良いものに変更されることを嫌だとは思わない。エアキングの名前は、1945年までさかのぼる。これはもともと、イギリス空軍のために開発された “エア” シリーズモデルのひとつだった。そのうちロレックス エアキングだけが長期にわたってロレックスのカタログに残ることになったのだが、2014年になって生産が中止された。当時このモデルは、オイスター パーペチュアルとエクスプローラーに似ていて、あまりはっきりとした違いがなかったのである。そのうえ、エアキングの34mmというサイズもまた、男性用腕時計にしては時代遅れとなっていた。
ロレックスは新しいエアキング Ref.116900を2016年に発表し、以来、それはコレクションにずっと載っている。この時計はロレックス ミルガウスと同じ40mm径のケースを持つ。際立った特徴は、間違いなくその文字盤だ。それはアイコニックな3、6、9の数字が並ぶロレックス エクスプローラーダイヤルと、ブラッドハウンドSSCジェットエンジン自動車プロジェクトのために同社が開発した計器を組み合わせたものだ。結果は非常に奇抜で、ほとんどロレックスらしくない文字盤のデザインとなった。
さらに、エアキングの名前とレースカーの繋がりは奇妙でしっくりこない。最後に、ロレックスはブラッドハウンドプロジェクトにすでにしばらくの間関わっていないため、その繋がりはもう期限切れと言っていい。私の意見では、そろそろこれまでのエアキングモデルの栄光をモダンな方法で復活させ、ロレックス エアキングのデザインをアップデートすべきときだ。反対にエアキング Ref.5500は、34mm径のタイムピースを着けこなせる人にとっては、アイコニックな入門レベルの時計である。やはりエアキングという名前には、過去代々のアイコニックなエアキングのきちんとした後継者を持つ価値がある。それが達成されるかどうか、今後を楽しみにしていよう。
2. ロレックス シードゥエラー
次のチョイスはやや議論を呼ぶものである。というのは、これは商業的な可能性ではなく、純粋に個人的な郷愁によるものだからである。歴史的に見て、ロレックス シードゥエラーは常にアイコニックなロレックス サブマリーナの兄貴分であった。ここで「兄」と言うのはサイズが大きいからというわけではなく、防水性という点からである。過去、ロレックス サブマリーナとシードゥエラーはどちらも40mmのケースを備えていた。しかしシードゥエラーのケースはより分厚く、そのためにより高い防水性を誇っていた。その結果、ロレックス シードゥエラーは長い間、同ブランドの究極のプロダイバー用ツールウォッチと見なされていたのである。
そのような機能的な点に加えて、その完璧な40mmサイズを尊重しながらも、若干分厚いケースのおかげでより太めの手首にもよく合うことから、多くの高級時計購入者たちがロレックス シードゥエラーに興味を持ったのだ。さらにこの時計には、あの好き嫌いの分かれる有名なロレックス サイクロップスレンズが付いていない日付表示窓が備わっている。シードゥエラー ディープシーの発表をもって、ロレックスは機能的なスペックにおいてシードゥエラーをしのぐ、本当の意味での次のレベルのプロ用のダイバーズウォッチをリリースした。さらに、44mm径とより大型のサイズになったのだ。というわけで、分厚くてラグジュアリーステートメントとなる時計を求めていた人は、ディープシーへと流れた。それによってシードゥエラーは忘れ去られてしまったと言ってもいい。
2014年から2017年まで、ロレックスはすべてのモダンなサブマリーナの特徴であるマキシダイヤルやセラミックベゼルなどを備えた40mmサイズのRef.116600を、より高額な価格をつけて製造していた。結果として、それはどうしてもサブマリーナに代わるふさわしい代替モデルではなく、商業的にも成功しなかった。そこでロレックスはシードゥエラーのサイズを43mmに変更し、サブマリーナと一層の違いをつけるべく一連のスペックを上げるという戦略的な動きを取った。しかしその結果、サブマリーナの代替品を実際に探していた人たちにとって、この時計の魅力は下がってしまった。そのうえロレックスにはより大型のダイバーズウォッチを求める人向けに、すでにディープシーがあった。クラシックなロレックス シードゥエラーはディープシーよりも控えめなことに間違いはないが、それでもかなり大型の時計である。私ならより小型のシードゥエラーの方が好みだし、サブマリーナとディープシーの間のどっちつかずのダイバーズウォッチであるよりは、サブマリーナの “兄貴分” としての存在に戻した方がより良いと思う。もちろん、これが実際に起こりそうなことというよりも、純粋に個人的な好みであることは理解しているつもりだが。
3. ロレックス ミルガウス
このリストの最後の時計は、ロレックス ミルガウスである。今回、エアキングと似たような状況であるためにすでにミルガウスについては触れた。エアキングと似ているもうひとつの点は、これが奇抜な時計であるという点だ。ロレックス ミルガウスは1956年、1000ガウスまでの磁気にも耐えうる技術者のための時計として発表された。この時計は発電所、医療施設、研究所など、強い磁場のある場所で働く人々をターゲットとして開発された。最初のミルガウスリファレンスは極めて稀少なため、非常に人気の高いコレクターズアイテムとなっている。それはとても特殊な時計だったために、これまでごく限られた少数しか製造されなかったのだ。
現行のミルガウス Ref.116400は2007年にデビューした。これは20年で初めて、ミルガウスの名前がロレックスコレクションに復活することを意味した。その比較的新しい時計であるにもかかわらず、このモデルはその兄弟モデルに比べて非常に変わっている。現行のミルガウスは2つの異なるダイヤルカラーで展開されているが、どちらもグリーンのサファイアクリスタル、目立つオレンジの稲妻秒針、オレンジのディテールなどが特徴である。1本目はブラックの文字盤バージョンであり、これはオレンジのアクセントのアクセントが際立っている。2本目は素晴らしい “Zブルー” の文字盤を持つバージョンで、さらに奇抜である。
ロレックス エアキングと比べると、ミルガウスは物語性、そしてブランドのカタログ内の位置づけという点について言うなら、完全に理にかなっている。だからこそ私はこの時計が非常に好きなのであり、ブラックダイヤルバージョンをぜひとも自分のコレクションに加えたいと思っている。しかし、現行のミルガウスはすでにもともとの発表から15年もたっており、ロレックスがモデルチェンジを考えていたとしても驚きではない。正直なところ、現行のミルガウスをどうやったらこれ以上改善できるのか、私にはわからない。この現行バージョンが非常に気に入っているのだ。しかし、もし多大な尊敬を集めるアイコンをアップデートするということに関して、信頼のおける時計会社が一社だけあるとしたら、それはロレックスに他ならない。それこそがこのブランドを世界で最も成功を収める高級時計ブランドにしたのである。私個人としては、次に待ち受けるものが非常に楽しみだ。