2022年11月01日
 11 分

私の人生を変えた腕時計 by RY

RY
Bretling-Navitimer-1-1
BREITLING NAVITIMER A23322

「スマートフォンがあるのに、なんで腕時計をする必要があるの?」

こう考える人はきっと多いことでしょう。

ましてや1本100万円以上もするような腕時計を購入するなんて、どうかしている!世の中のほとんどの人はそう考えるに違いありません。

 

私もかつてはそのうちの一人でした。1本の腕時計に出会うまでは。

腕時計との出会い 

私が大学を卒業して、航海士として海に出たのが2013年のこと。

心を躍らせて初めて乗った船、中東のとある国で稼働していました。

日本人はほとんどゼロ。仕事を教えてくれる同僚も先輩も上司もほとんど外国人で、マニュアルも全部英語でした。

 私は英語が大の苦手だったので、これには面食らいました。それでも英語を話さなければ仕事になりませんし、下手をすれば生死に関わります。

それこそ死に物狂いで必死に英語を使って、多国籍クルーと一緒に汗水流して働いたものです。

 

そんな過酷な海上生活の中、私は心の底から尊敬できる上司に出会いました。

彼の名はMr. K。オーストラリア人のチーフエンジニアでした。年齢は60歳。

彼の仕事はいつもスマートで的確。どんな問題が起こってもすぐさま解決してしまう凄腕のエンジニアです。

彼の使うツールはいつもピカピカで、整然と並べられていました。

プライベートではオーストラリアのパースに豪邸を持ち、ポルシェに乗ってドライブを楽しむ彼は、私にとってはジェームズ・ボンドのように見えたのです。

 

そんなMr. Kに、私はある時相談しました。

「航海士として海に出てからようやく3年が経過した。記念に何か腕時計を買いたいと思うんだけど、何が良いものはあるかな」

世の男性と同じく、私もジェームズ・ボンドに憧れた一人で、車やバイク、スーツや靴など私の買える範囲でお気に入りのものを購入していたのですが、最後まで残っていたのが腕時計でした。

「こんな小さな、時間を見るためだけのものがなぜこんなにも高いのだろう?そして、なぜそれを嬉々として購入する人がいるのだろう?」と高級腕時計の世界が全く理解できなかった当時の私は、ホームセンターで買ってきた数百円の腕時計を壊れては買い直すという具合でした。

しかし、自分なりのジェームズ・ボンド像を完成させるには、いよいよ腕時計を買わざるを得なかったのです。

「いい質問だね、RYさん。それならロレックスのサブマリーナーのノンデイトを買うといい。かつてジェームズ・ボンドも愛用していた腕時計で、世界中の男が羨む永遠のスタンダード・ウォッチだ。これさえ買っておけば間違いない」

ロレックスと言うと、何だかお金持ちアピールのあまり趣味の良いものではないというイメージがあった当時の私は面食らいました。しかし、あのKさんがそう言うのなら…と、初めてロレックスのホームページを開いてみたのです。

 するとどうでしょう。

今まで何となくのイメージで敬遠していたロレックスでしたが、そのかっこよさにぐんぐん引き込まれていき、あっという間にロレックスの(特にサブマリーナーの)かっこよさに魅了されていきました。

 

ロレックス サブマリーナー ref. 114060

ROLEX SUBMARINER 114060
ROLEX SUBMARINER 114060

この腕時計こそが、私を深い腕時計の世界に引き込んだ主因であり、私の人生を180度変えてくれたかけがえのない時計でもあります。

 

2016年の当時は、ロレックスの二次市場価格は定価と同じくらいでしたが、それでも簡単には購入できませんでした(当時の私はとても驚きました)。

ようやく正規店で購入できた私は、あまりの嬉しさに船に持ち込んで夜な夜な一人でBOXを開けては眺め、腕に着け、ニヤニヤし、しばらくしたらBOXに仕舞って寝る。という行為を毎日のように繰り返したものです。

1953年の誕生以降デザインを大きく変えていない不変性、モダンダイバーズウォッチと言う新たなジャンルを確立した歴史性、切り立ったケースのエッジ、小気味良いベゼルの回し心地、しっとりしなやかな装着感…。目に見えるところ、手に触れるところ、その背景含め、サブマリーナーの全てに魅了されていたのです。

「なるほど、高級腕時計とはこういう世界なのか。最高に素晴らしい」

腕時計の歴史は、これまで購入してきた他のどんな物よりも深く、いつでもどこでも使えて、将来的には子供や孫にまで託せるという寿命の長さに魅力を感じました。

何だか、自分のアイコンというか、形見のようなものができたような気がしてとても嬉しかったのを今でもはっきりと覚えています。

 

セイコー SKX007

ロレックスのサブマリーナーを購入してから、腕時計(特に機械式時計)の魅力にどっぷりと浸かった私は、過酷な海上勤務用の機械式腕時計も欲しいと思うようになっていました(流石にサブマリーナーを海上でガシガシ使う勇気はなかった)。

そこで、安価でタフな機械式時計を探し始めたところ、私の琴線に触れたのが、セイコーのSKX007でした。

2017年当時、1万円台で売られていたこの腕時計は、その価格以上の出来栄えと見た目のかっこよさですぐに私の心を掴み、過酷な海上勤務の頼れる相棒となったのです(世界の海で働いていると、文字盤の“SEIKO”の文字が何だか日本を代表しているような感じがして誇らしく思えた)。

このSKX007という相棒とともに精力的にお金を稼ぎ、この後登場する様々な腕時計を買うに至ったことを考えると、この腕時計は私にとっての母なる腕時計“マザー・ウォッチ”と言えるかもしれません。

ブライトリング ナビタイマー A23322

BREITRING NAVITIMER A23322
BREITLING NAVITIMER A23322
BREITRING NAVITIMER A23322
BREITLING NAVITIMER A23322

ロレックス、セイコーと、“海の時計”であるダイバーズウォッチを購入した私が次に欲しいと思ったのは、“空の時計”であるパイロットウォッチでした。

パイロットウォッチは特に歴史が深く、色々なモデルがあるのですが特に私が心惹かれたのは、ブライトリングのナビタイマー。

“フライト・コンピューター”と呼ばれる航空回転計算尺は唯一無二の存在感があり、万が一の時にはパイロットはこれを使って様々な計算ができるという本物のツール感がたまらなくかっこいいと思ったのです。

しかし当時発売されていた現行品はケース径が43mmと、腕の細い私(腕周り15.5cm)にはやや大きいと感じていました。

そこでケース径41.8mmのA23322モデルを購入することにしたのです。

また、翼の生えた“Bロゴ”や裏蓋に彫り込まれた温度換算表もパイロットの雰囲気を醸し出しており、私にとっては好材料でした。

私は勤務地の船上に向かうのに、飛行機やヘリコプターを乗り継いで向かうのですが、その道中はこのナビタイマーでパイロット気分を密かに楽しんでいます。

ヴァシュロン・コンスタンタン オーバーシーズ 4500V/110A-B128

VACHRON CONSTANTIN OVERSEAS 4500V/110A-B128
VACHERON CONSTANTIN OVERSEAS 4500V/110A-B128

腕時計の沼にどっぷり浸かってはや4年、30歳を迎えた私は記念に何か特別な腕時計を買いたいと思っていました。

これまで購入してきた腕時計は最高金額で70万円(ロレックスのサブマリーナー)。

100万円以上するような時計は自分には縁がないと思っていましたし、いわゆる世界三大時計ブランドはまさに雲の上の存在で、一生手が届かない物だろうと考えていたのです。

しかし、そんな考えを打ち破る腕時計がヴァシュロン・コンスタンタンから発表されます。それが、「フィフティー・シックス」シリーズです。

ジュネーブ・シールを多く獲得する同社が、あえてジュネーブ・シールを獲得しないなど、戦略的アプローチで価格を抑えた同シリーズは、最も価格の安いもので128万円でした。

これなら買えるかも…?と思った私は、継続経営されている世界最古の歴史を誇り、世界三大時計ブランドに数えられる同ブランドのブティックの門戸をくぐることになります。

そこでみたフィフティー・シックスの美しさとオーラは、これまで購入してきた“実用時計”とはまるで別世界のもののように見えました。

「こ、これが世界三大時計の世界か…。」と、クラクラするような衝撃を受けながらも、30歳の記念時計として真剣に購入検討に入ったのです。

検討を進める中で、同ブランドのオーバーシーズというモデルにたどり着きます。

1977年に発表された「222」というモデルを起源に持ち、1996年から続くラグジュアリースポーツウォッチです。

その名の通り“旅”をコンセプトにしたモデルで、高い防水性や耐磁性、インターチェンジャブル・システムなど高い機能性を持ちながら、エレガントな佇まいが魅力で、毎日使える最高のデイリーウォッチだと確信しました。

また、太平洋の真ん中のような深く美しいブルーの文字盤やコンパスを模した22Kのローターなど海を感じられる点も私らしいと思い(思い込み?)、ついに購入を決めたのです。

実際、美しすぎる文字盤からジュネーブ・シールを獲得しているムーブメント、磨き込みが素晴らしいケースからブレスレットまで、360度どこから見てもうっとりする時計で、着けて楽しい・磨いて楽しい最高の時計だと感じています。

グランドセイコー ref. 4420-9000

ある時、自分の時計コレクションを振り返っていると、ドレスウォッチを持っていないことに気がつきました。

やはり30代にもなったし、ドレスウォッチの1本は持っておいた方が良いだろうとの考えから、ドレスウォッチ探しの旅が始まります。

ジャガールクルトやIWC、カルティエなど様々なブランドが候補に上がりましたが最終的には、いつかは絶対手にしたいと思っていたグランドセイコーを選択しました。

一見“普通の時計”のように見えて、普通とはかけ離れた凄まじい磨き込みと煌めきは、日本の美学を体現しているかのようでずっと憧れていたのです。

しかし問題もありました。

当時のグランドセイコーは今のキャリバー9SA5のような比較的薄いムーブメントがあまりなく、どのモデルも分厚く大きかったのです

また、比較的歴史の浅いブランドであることから、グランドセイコーと言えばこのモデル!といった歴史的モデルがラインナップされていなかったことも迷った理由の一つでした

一方で、グランドセイコーの歴史に目を向けると、必ずと言っていいほど登場する伝説的な時計があります。それが通称“44GS”こと、4420-9000です。

詳しくは割愛しますが、歴史的にもサイズ的にもこの時計が自分にはぴったりだと思い、粘り強く中古市場に登場するのを待って、ようやく購入。

手元に届いた時は、ある意味サブマリーナーやオーヴァーシーズを手に入れた時よりも興奮し震えました。

50年以上前のものとは思えないほどの眩い煌めきは、当時の職人魂や心意気が時を超えて伝わってくるようで、感服せずにはいられません。

オメガ シーマスターダイバー 300M ref. 210.22.42.20.01.002

船長に就任したということもあり、心機一転新しい腕時計を購入したいという気持ちが芽生え次なる相棒時計を探し始めます。

候補に挙がったのはSinnU50チューダーペラゴスパネライサブマーシブルなどでしたが、最終的にはオメガシーマスターダイバー300Mのセドナゴールドコンビモデルを購入しました。

購入にあたって悩んだ点は、既にコレクションにあったロレックス サブマリーナーの存在です。

サブマリーナーとシーマスターは共に最高のダイバーズウォッチであり、新旧ジェームズ・ボンドウォッチでもあります。

シーマスターを購入したらサブマリーナーと被らないか?どちらか一方が放置されることにならないか?など色々と考えを巡らせましたが、結果は杞憂に終わりました(両者の比較はいつか書きたいと思います)。

最高の相棒時計として、今日も海上勤務を支えてくれています。

ここまで、私の腕時計遍歴を書かせていただきましたが、いかがだったでしょうか。

ロレックスのサブマリーナーを初めとするこれら腕時計のおかげで、私の人生は180度ひっくり返りました。

腕時計に出会ってからブログやYouTubeなど新しい挑戦をはじめ、今ではこうして世界最大のオンライン時計マーケットプレイスChrono24で記事を書かせていただいているのだから、人生は何がきっかけで変わるかわからないものです。

腕時計は間違いなく、私の人生で出会った最高の幸運です。

これから腕時計の魅力を私なりの言葉でお伝えできたらと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。


記者紹介

RY

1990年生まれ。初めて購入した機械式時計をきっかけに腕時計の魅力に取り憑かれる。2019年にブログ『腕時計のある人生』を、2020年にYouTube『腕時計のある人生Channel』を開設するなど、多方面で活動中。

記者紹介

最新記事

5-High-End-Quartz-Watches-to-Invest-In-2-1
2024年03月22日
時計モデル
 10 分

時代を経て価値上昇!? 投資におすすめの高級クォーツ時計 TOP5

Jorg Weppelink
お手頃価格のブライトリング4選
2024年02月22日
時計モデル
 6 分

80万円以内で購入可能なブライトリング4選

Donato Emilio Andrioli
Jaeger-LeCoultre-Reverso-vs.-Cartier-Tank-Magazin-2-1
2024年02月16日
時計モデル
 4 分

どっちが買い?ジャガー・ルクルト レベルソ or カルティエ タンク

Pascal Gehrlein