ティソ PRXは発売以来、コスパ最高の時計、15万円以内で購入可能な時計、初めての1本におすすめの時計などといったテーマの記事で取り上げられてきた。今回は、この人気の時計について、違ったアプローチをしてみたい。
それは、現行版、ヴィンテージモデルに関わらず、ティソPRXに代わり得る時計を探すというものだ。PRXと同じ雰囲気持ちながら、ユニークさも兼ね備える時計だ。読者の皆さんの中には、ティソ PRXについて十分知っているという人もいれば、実際に持っていて、もう少しこの分野を開拓したいと思っている人もいるかもしれない。これから紹介する時計は、全てがPRXより優れているというわけではないが、人によってはぴったりと言える時計になるかもしれない。
マイクロブランドの現行モデル
クリストファー・ワード ザ・トゥエルヴ
1本目はクリストファー・ワードのザ・トゥエルヴ。筆者は最近、クリストファー・ワードは基本的に有名バンドのカバーソングだけ演奏するバンドのよう、というコメントを見た。おもしろい表現だが、ベル カントやアベンチュリン文字盤を持つモデルなどを考えると必ずしも的を得ているとは言えない。だが、ザ・トゥエルヴに関しては、正しいと思う。実際に、クリストファー・ワードは、この時計が他の一体型ブレスレット付きスポーツウォッチから大きく影響を受けたものだということを公にしている。そして正直なところ、それはこの記事で紹介するの時計の多くにも言えることだ。
ザ・トゥエルヴはPRXよりも約7万円ほど高く、パワーリザーブはPRXの半分以下だ。価格差は、針や文字盤、ケースといった部分のシャープなデザインから来ると思われる。この時計をデザインしたのは、チャペック アンタークティックをデザインした人物であり、アンタークティックは通常約300万円〜370万円ほどで売られている。そう考えると納得も行くが、ザ・トゥエルヴの価格は約18万円であり、PRXより高価な価格がふさわしいと思うかどうかは皆さん次第だ。
ニバダ グレンヒェン F77
ニバダ グレンヒェン F77もティソ PRXに匹敵する時計であり、1970年代のヴィンテージのニバダをルーツに持つ。この37mm径の時計には3つの文字盤カラーがあり、それぞれデイト、ノンデイト版がある。価格は約20万円と、今回の中では高額な方だ。厚みは13mmと分厚く、シースルーケースバックではない。しかし、PRXのバタフライクラスプにはない調整可能なクラスプが備わっており、スモーキーなブラウンの文字盤を持つモデルは、他の時計では見られないヴィンテージの雰囲気を醸し出している。
イエマ アーバントラベラー
フランスのブランド、イエマのアーバントラベラーはケースサイズ39mm径で、価格は15万5000円。42時間のパワーリザーブを備える自社製ムーブメントを搭載している。見た目どおり、一体型ブレスレットを持つ時計として、バランスの取れた時計である。
ブリュー メトリック
このカテゴリーで最後に紹介する2つマイクロブランドの時計は、筆者のお気に入りである。それぞれが、そのブランドらしさを持ち、特定の時代を見事に表現している。1つ目のブリュー メトリックは、メカクォーツムーブメントを搭載したクロノグラフ、または、自動巻きムーブメントを搭載した時刻表示のみのオートマティック、どちらも超1970年代的な時計だ。オートマティックのステンレススチール製モデルは長らく完売しているが、真っ黒に塗られたPVDコーティングのバージョンはまだ購入可能だ。ブリュー メトリック素晴らしい点は、大胆で型破りな存在であろうとしていること、そしてPRXよりも安価で入手できるというところだ。
アウトドローモ グループB
2つ目はアウトドローモ グループBだ。この時計は1980年代のグループB ラリーカーのダッシュボードからインスピレーションを得たもので、自動車ファンや、1980年代風のスタイルが好きな人にぴったりと言える。部品の一部にチタンを使っているために軽量なだけでなく、サテン仕上げとポリッシュ仕上げがバランスよく施されている。現行モデルのアウトドローモ グループBの価格は、16万7200円。
人気ブランドの現行モデル
シチズン ツヨサ
6万3800円というシチズン ツヨサのこの価格は絶対的な強みである。しかしこの価格では、品質面で少々妥協が見られる。防水性は50mで、シースルーケースバックが採用されているものの、ムーブメントには仕上げの装飾が施されていない。この記事で紹介する多くの他のモデルと同じように、パワーリザーブについてはPRXの半分の40時間だ。
チューダー ロイヤル
チューダーは、ブラックベイやペラゴスコレクションなど、特にダイバーズウォッチでよく知られている。チューダー ロイヤルは、あまり見かけたり、聞いたりすることのないコレクションだ。今回の記事の中で最もエレガントな時計で、チューダーであるために、品質も最高峰だ。サイズや文字盤カラーもバリエーションが豊富で、しかもデイデイトモデルもある。価格は33万円からということだが、PRXの3倍も4倍も優れた時計というわけではない。
ヴィンテージモデル
ここからは、オンライン上で安価に購入できる、人気ブランドのヴィンテージモデルを紹介したい。ヴィンテージウォッチを購入する際は、事前の入念なリサーチで時計の機能や状態を確認し、なるべくオリジナルに近いものを選ぶようにしたい。
ヴィンテージモデルの場合、防水性や長時間のパワーリザーブ、夜光塗料が施された針とアワーマーカーといった最新技術は望めないが、その代わりに歴史やブランドネーム、経年変化がもたらす独特の魅力というものを手に入れることができる。
オメガ
オメガは、1970年代に独自のステンレススチール製一体型ブレスレット付き時計を作った。見つけるのはやや難しく、リファレンスナンバーは少々ごちゃごちゃとして分かりづらいが、マーケットプレイスで “オメガ ジュネーブ 166” と入力すれば、十分な情報が得られるだろう。ケースの作りは非常にシャープで、ダイバーズバージョンもいくつか出ている。そしてPRXと同じ価格帯のものが見つかるはずだ。
オメガのもうひとつのモデルが、コンステレーションだ。この時計のデザインは年代ごとに大幅に変わる。オリジナルのパイパンダイヤルバージョンは非常に魅力的で価値も高いが、それほどPRXには似ていない。後にオーデマ ピゲ ロイヤル オークとパテック フィリップ ノーチラスで、一体型ブレスレット付きスポーツウォッチというカテゴリーを生み出すことになるジェラルド・ジェンタは、1960年代後半にオメガ コンステレーション Cラインのデザインも手がけている。
これらはChrono24上で15万円以内で見つけられる。マンハッタン コンステレーションは外見的にPRXに最も近いが、そのデザインはかなり意見が分かれるものだ。これについてはスタイルとサイズの選択肢は少ないが、文字盤の質感が非常に興味深いモデルも含まれており、約15万円〜19万円の間で購入が可能だ。
セイコー
セイコーが素晴らしいのは、自社製ムーブメントを搭載した品質の良い時計で、修理もしやすく、手頃な価格という点にある。おすすめモデルはセイコー ロードマチックで、文字盤バリエーションが多く、漢字での曜日表示を備えたものもある。また、オリジナルのブレスレット付きのものも手に入れることができる。
グランドセイコー
もう少し予算に余裕があるなら、ぜひともヴィンテージ のグランドセイコーを探してみて欲しい。“グランドセイコー” と入力して、検索結果で価格を昇順で並べ替えれば、田中太郎によるグランドセイコーの「セイコー スタイル」を体現する、シャープなケースの時計がたくさん見つかるだろう。日本の時計ブランドのファンなら、きっと気に入るはずだ。
ティソのヴィンテージモデル
まず、筆者の個人的なお気に入りであるロンジンやサーチナなどのブランドの風変わりな小さい1970年代の時計を例に取り上げたい。筆者は自身のコレクションにこのような時計をいくつか持っているが、購入価格はどれも7万円ほどだった。ケースは非常に主張が強く、目を引くディテールが満載だ。こういった時計は、市場にたくさん出回っていて、Chrono24の検索バーにブランド名を入力し、検索結果を自分の好きな年代、例えば1970年〜1979年で絞り込めば見つけることができる。
ティソなら、以下2つのモデルが出てくるはずだ。PRXが好きで、PRXにインスピレーション元のモデルを見てみたいなら、ティソ シースターとティソ PR-516をチェックしてみるべきだ。これらは現行のPRXと同じDNAを持つが、ヴィンテージならではの温かみと個性がある。
今回、たくさんの時計を紹介したが、ティソPRXに匹敵する選択肢が他にも数多くあるということのひとつの手掛かりとしてもらえたと願っている。