2024年01月11日
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中古のチューダー サブマリーナがロレックス サブマリーナよりも高い理由

Jorg Weppelink
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これまでに、サブマリーナを購入することを考えたことがあるだろうか。時計愛好家なら、おそらくどこかの時点で考えたことがあるだろう。しかしそのサブマリーナはきっと「ロレックス」のものだったに違いない。それでは、チューダーのサブマリーナはどうか。1954年から1999年まで、チューダーは独自のチューダー オイスター プリンス サブマリーナを製造し、非常に人気の高いコレクターアイテムとなっている。チューダーの人気はその手頃な価格にあると思うかもしれない。しかし、それではチューダーを過小評価していることになる。チューダーのサブマリーナが持つ歴史は、調べる価値のある興味深いものだ。

ポップカルチャーにおけるロレックス サブマリーナとチューダー ブラックベイ

究極のダイバーズウォッチと言われるロレックス サブマリーナは最も人気のある高級時計であり、現代のダイバーズウォッチというものを定義した。サブマリーナの成功の大部分は、その長い進化の歴史によるものであり、現在のサブはいまだに1953年の初代モデルを思わせるものだ。

The ultimate dive watch: Rolex Submariner
究極のダイバーズウォッチ:ロレックス サブマリーナ

チューダーが1999年にサブマリーナの製造を中止した時、多くの人がその理由を知りたがった。チューダーは1996年にアメリカから撤退しているため、商業的に成功しなかったことが主な原因だったかもしれない。時計ファンたちにとって幸運なことは、現行のダイバーズウォッチであるブラックベイがクラシックなチューダー サブマリーナからインスピレーションを得ているということだ。しかも、ブラックベイはヴィンテージ サブマリーナの人気の火付け役ともなった。こうして、ロレックス サブマリーナとチューダー ブラックベイは共に、それぞれの価格帯で人気のダイバーズウォッチとなった。

類似点と相違点

ご存じの方もいるだろうが、ロレックスの創設者ハンス・ウィルスドルフはロレックスを守るためにチューダーを作った。彼はロレックスの品質や評判を損なうことなく、幅広い顧客層により手頃な価格の時計を届けたいと考えた。最大の違いのひとつはムーブメントだ。時計愛好家なら知っていると思うが、ロレックスがクロノメーター認定の自社製ムーブメントをほとんどのサブマリーナに搭載しているのに対し、チューダーはスタンダードな既製品のETA社製のムーブメントを使用していた。

これが、チューダーのダイバーズウォッチが手頃な価格だった主な理由だ。しかしチューダー サブマリーナには、常にロレックスのケース、リューズ、ブレスレットが使われており、非常に有能なダイバーズウォッチだった。しかしチューダー サブマリーナが製造されていた時代、それは安価なロレックスの代替品にすぎず、ロレックスに匹敵する時計とは決して見なされなかった。

【おすすめ記事】チューダー:安価なロレックス?それとも一目置かれるべき時計?

現在の中古品市場での価格推移

今日の中古品市場では、中古のチューダー サブマリーナはロレックス サブマリーナより安いというわけではない。過去10年間にチューダーの人気は信じられないほど高まり、ヴィンテージのチューダー サブマリーナの需要は急上昇した。結果として、ヴィンテージのチューダー サブの価格も上昇した。注目したいのが、2022年にほとんどの中古時計で価格が半額まで下落した際、ヴィンテージ チューダー サブマリーナの複数のモデルでは、価格が下がらなかったということだ。価格は安定して変わらなかったか、あるいはゆっくりと上昇し続けた。そしてロレックス サブマリーナの価格は下落し、今では一部のヴィンテージ チューダー サブマリーナは、一部のロレックス サブマリーナよりも高額になっている。それはなぜだろうか。

The assumption that Tudor’s pre-owned Submariner is still more affordable is incorrect.
中古のチューダー サブマリーナがいまだに手頃な価格だというのは昔の話だ

ロレックス サブマリーナとチューダー サブマリーナの同年代の類似モデルの価格を比較

同一条件で比較するなら、1950年代の初期モデルのヴィンテージ ロレックスの価格は、チューダーの同時代の似たようなモデルよりもずっと高い。ヴィンテージのロレックス サブマリーナの価格帯には広がりがあり、高価格帯に位置するものもある。しかしチューダー サブマリーナと同じ価格帯のものもあり、時にはチューダー サブマリーナがより高額となる場合もある。

例えば、ロレックス サブマリーナ Ref. 16800のChrono24での価格はおよそ105万円から始まっており、1980年代の状態の良いものは約110万円から140万円の間で購入できる。それに相当するチューダーの同時代のものは、サブマリーナ Ref. 94010で、価格はおよそ160万円からスタートして、すぐに230万〜315万円にまで上がる。

他の初期のリファレンスも同じような価格帯から始まる。ロレックス サブマリーナRef. 1680はおよそ160万円から始まり、徐々に上昇し、いわゆる “赤サブ” と呼ばれるものだとその4倍の価格になる。同時代のチューダー サブマリーナ Ref. 7016を見ると、価格は約140万円からスタートするが、状態の良いもので、違う文字盤のものとなると優に約160万〜230万円まで上がる。

Tudor Submariner ref. 7016
チューダー サブマリーナ Ref.7016

それはまた、同時代のチューダー サブマリーナ Ref. 7928とロレックス サブマリーナ Ref. 5512/3にも当てはまる。ロレックスの価格は約160万〜1310万円と、かなり幅があるが、チューダーの価格も同じように、約130万円~700万円の間となっている。このように、チューダー サブマリーナは必ずしも高額というわけではないものの、価格帯はロレックスと似たようなもので、常々安価なオプションだと考えられてきた時計にとっては注目に値すると言えるだろう。

チューダー サブマリーナの人気の理由

チューダーのモデルの一部が、ロレックスの同等モデルと同じくらい、またはそれ以上に高額なのはなぜなのか。ロレックスサブマリーナは常に他よりも優れた時計であったし、そのネームバリューは価格を保証するものでもあった。しかし、チューダーの一部のモデルにロレックスと匹敵する価格が付けられるのは、とてもシンプルな理由がある。
まず、Chrono24で購入できるチューダー サブマリーナを見てみると、すぐにそれほど数が多くはないことが分かる。チューダー人気の上昇と共に、時計の稀少性が価格に大きく影響していると言える。チューダー サブマリーナが生産されていた当時、ロレックス サブマリーナの人気には遠く及ばなかったことを考えると、とても興味深いのではないだろうか。やや年を重ねた時計愛好家ならご存じかと思うが、当時、チューダー サブマリーナがロレックス サブマリーナの代わりになるなど、決して考えらていなかった。しかし、販売数の少なさが、今日の高価格につながっている。
次に考えられる理由は、チューダーが製造したデザインの多様さである。ロレックスがサブマリーナのデザインを大幅に変えることなく、時間をかけて進化させていったのに対して、チューダーはさまざまなバージョンを作った。その発展には、フランス海軍(マリーンナショナル)のダイバーたちが重要な役割を果たした。その中には、チューダーファンの間で非常に人気の高い、1970年代と1980年代のマリーンナショナルブルーのダイヤルとベゼルを備えたサブマリーナがある。しかしこれらのモデルは非常に希少で、特に実際にフランス海軍のダイバーが使用したもとなると、非常に高額となる。

Tudor Submariner Snowflake 7016 France Marine Nationale with a blue dial from the 1971’s.
1971年ごろのブルーダイヤルを持つチューダー サブマリーナ スノーフレーク 7016 フランス海軍モデル

さらに、ダイバーたちがチューダーに対してデザインの改善を求めたことから、異なる文字版デザインやスノーフレーク針の導入につながった。そのため、チューダー サブマリーナには正方形や長方形のアワーマーカーが組み合わされた文字盤や、ドット型のアワーマーカーのものが見られる。

さらに、チューダー サブマリーナはベンツ針とスノーフレーク針の両方を持ち、同じ時計でもカラー、針、アワーマーカーが違うバリエーションが数多くある。さらに、もっと細かいことを言うなら、文字盤の下部に「メートル」と「フィート」のどちらが先にプリントされているのか、ということも挙げられるが、ここでは詳細には触れないでおきたい。

ロレックス サブマリーナよりもチューダー サブマリーナか

このように、チューダー サブマリーナについて調べると、とても興味深いことがわかる。多彩なデザインと、希少性価値、現在のチューダーというブランドの人気を考えると、なぜ一部のチューダー サブマリーナが一部のロレックス サブマリーナと同じくらい高額なのかが理解できるだろう。現在では中古品市場において、この2社のサブマリーナの価格はこれまでにないほど近づいている。それはおそらく、ハンス・ウィルスドルフがチューダーを立ち上げた際には決して予想できなかったことだろう。「ロレックス サブマリーナよりもチューダー サブマリーナか?」という問いに、みなさんならどう答えるだろうか。


記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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