2023年01月31日
 5 分

それでも私が高級時計を買う理由 by RY

RY
Vacheron Constantin Overseas

Vacheron Constantin Overseas

1本数十万円や数百万円する高級時計を購入するという行為は大抵の人にとって馬鹿げている行為、お金の無駄遣い。なのかもしれません。正確な時間を知りたいのであれば、常にスマートフォンやパソコンに表示されていますし、わざわざ高級時計を買う必要はありません。実際に日本のとあるTV番組で紹介されていた調査によると、外出時に腕時計をする人の割合は43.7%。つまり半分以上の人が腕時計をしない時代なのです。

日本人の約半数は腕時計をしない、それでも…

しかしそれでも私は、高級時計を1本持ってみませんか、と皆さんに伝えたいのです。それは、なぜか。

  • 社会人の身だしなみとして?
  • ステータスシンボルだから?
  • 周りに自慢をするため?

世の中には高級時計を買う意味としてこのような理由が溢れていますが、私が高級時計をおすすめしたい理由はもっと他にあります。そこで今回は、かつては高級時計を買う意味を全く理解できなかった私が、今こうして皆さんにおすすめしている訳を、私の実体験と共に3つ紹介させていただこうと思います。

高級時計をおすすめしたい、その3

ROLEX SUBMARINER 114060
Rolex サブマリーナー Ref. 114060

世界が広がる

「世界が広がる」というとかなり抽象的な表現なのですが、実際に私は高級時計を初めて購入した時から世界がとても広がったと感じています。それは、知識や物事の見方・考え方、精神的なものやコミュニティの幅など様々な世界の広がりです。単に時間を見るためのものではなく、そこには芸術的感性や科学的な知性が同居し、様々な制約がありながらも最適解を紡ぎ出そうとするエンジニアリングの追求や職人の熟練された技などが、僅か40mm程度の世界に詰まっています。それが遥か昔から物語と共に受け継がれており、今度は自分が次の世代へ受け継ぐことができる。

極論、24時間365日いつでもどこでもその世界に触れ、感じ、思いを巡らせることができるのが高級時計なのです。

私は特に、高級時計の持つ歴史性や物語に強く惹かれました。例えば、ライト兄弟が世界で初めて有人動力飛行を成し遂げたのは1903年、1回目のフライトはたったの36.5mであったこと、アポロ13号の事故と生還劇、アールデコやバウハウスというデザインの分野に関することなど、数え上げればキリがありません。きっと、時計を好きになっていなければ知らずに人生を終えていたでしょう。いずれも生きていく上で必要な知識ではありませんが、人生をより豊かにしてくれます。もしかしたら、それが何か新しい仕事やアイデアにつながるかもしれません。実際、不思議なことに私は1本の高級時計を購入したことをきっかけに世界が広がり、巡り巡ってこのChrono24マガジンという場所で記事を書かせていただいております。

高級時計を持つことは、世界を広げるきっかけになるのです。

日々の楽しみが増える

1年を通して各ブランド新作時計を発表しますが、特に春には大規模な新作発表会があり、毎年この時期になると世界中の時計ファンが毎日のようにインターネットをチェックし、新作時計に一喜一憂、あれやこれやと活発に議論がなされます。一般的には夏がお祭りシーズンですが、時計ファンにとっては春もお祭りシーズン。高級時計を買えば自然と新作情報が気になり、年に2回もお祭りシーズンを楽しむことができるのです(笑)。

Geneva
毎年春に、大小の新作発表会が催されるスイスの都市、ジュネーブ

また、日常生活においても楽しみが増えます。例えば通勤の電車の中。人も多くて辛い時間帯ですよね。しかし時計好きになれば、自然と周りの人の時計が気になってくるの、“時計好きあるある”。辛い通勤電車の中でも、「あっ、あの人〇〇の時計してる!」「おっ、この人の時計かっこいいなあ。どこのブランドだろ?」など、まるで市場にいるかのように楽しめます。さらに極めれば、「この人はこの時計だから、こんな性格の人なのかなあ」とか「あの人はあの時計だから、こんな趣味があるのかもしれない」など、もしかすると時計からその人のパーソナリティまでおおよそ想像できるようになるかもしれません。

形見ができる

高級時計は、その存在自体、歴史が非常に深いものですが、定期的にメンテナンスをしたり修理したりして長く使いやすいように作られもいます。つまり、過去から未来へ、モノとして使用できる時間軸がものすごく長いのが特徴です。

また、携帯性に優れ、どこにでも着けていきやすくなっています。仕事、家族と過ごす休日、海外旅行、プロポーズの時、子供が生まれる瞬間、大きなことを成し遂げた時…その瞬間に立ち会うことができるのは、自分自身と時計です。時計は自分と同じ時間を過ごし、同じ経験・歴史を積んでいる分身とも言えるかも知れません。

つまり、高級時計は使用できる時間が極めて長く、思い出やエピソードを重ねやすい。形見として重要な要素を押さえています。さらに、保管場所が小さく済み、維持費も家やクルマに比べれば安い。着ける人の好みやサイズをあまり選ばず、何か困った際には、世界中どこでもすぐに換金することができる……。これほどまでに形見として優秀なものは、なかなかないでしょう。

Patek Philippe and A. Lange Sohne Dress Watches
A. Lange & Söhne のサクソニアと Patek Philippe のカラトラバ

時計ブランドの頂点と言われているパテック・フィリップキャッチコピーの一つに「父から子へ、世代から世代へ」というものがあります。まさに形見、受け継がれていくもの、それが高級時計の真価ではないかと思います。記念すべき節目に思い切って買った高級時計共に人生を歩み、そしてその歴史と物語大切な人へと受け継がれていく……。とても素敵なことではないでしょうか。

いかがでしょうか。

  • 世界が広がる
  • 日々の楽しみが増える
  • 形見ができる

これら3つの理由から、時計不要論が唱えられる現代においても私は高級時計を持つことをおすすめしたいと思うのです。確かになくても生きていけるけど、あると人生が豊かになる。それが高級時計。ぜひ1本、考えてもらえたら嬉しいです。


記者紹介

RY

1990年生まれ。初めて購入した機械式時計をきっかけに腕時計の魅力に取り憑かれる。2019年にブログ『腕時計のある人生』を、2020年にYouTube『腕時計のある人生Channel』を開設するなど、多方面で活動中。

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