2022年08月26日
 10 分

2022年後半、投資対象になりそうな高級時計5選

Jorg Weppelink
Omega-Seamaster-2-1

高級腕時計はもちろん手首に着けて楽しむために作られるものだが、ここ10年程、投資対象として購入し、利益をあげようという人も急速に増えている。しかし現在の市場が示すのは、一部の時計の価格が極端に落ちることもあるという可能性。オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク ジャンボAudemars Piguet Royal Oak “Jumbo”)や、パテック フィリップ ノーチラスPatek Philippe Nautilus)などの価格は、この数ヵ月の間に随分下がっているし、人気のロレックスモデルもまたその価格を下げ、腕時計投資を若干リスキーにしている印象もある。  

これはつまり、腕時計投資で成功をするのは不可能だということなのだろうか? いや、そうとも言えない。ただし、即座にリターンを得られるという考えは捨てなければならないということだ。著者からのアドバイスは、時計コレクターとして、購入する時計を思い切り楽しむことだ。そうすれば、この先時がたつにつれて、手持ちの時計の価値が上がることもあるだろう。

一方で、いずれ価値が上がる高い可能性を秘めた時計はあるのだろうか?もちろんある。アンティーク時計の資産価値はとても安定している。人気のある限定版もまた価格が上昇する可能性が高い。また、最近コレクターたちの間での人気がどんどん上がってきている小規模なブランドもある。そういったブランドの多くは自社のタイムピースをごく限られた数だけ生産している。

というわけで、長い時間をかけて価値が上がりそうな時計のいくつかを見てみたいと思う。 

1. オメガ スピードマスター ファースト オメガ イン スペース Ref.311.32.40.30.01.001

著者は投資対象として最高のオメガウォッチについての前回の記事で、スピードマスター “ファースト オメガ イン スペース” (Speedmaster “First Omega in Space”)を紹介したが、この時計はいまだに良い価格推移を見せている。この時計はかつて、オメガ スピードマスター ヘリテージラインの一部であり、定価は4700ドル(およそ57万円)というオメガスピードマスターの世界への素晴らしい入門モデルだった。これは良い投資の選択肢ともなるかもしれない。オメガは2年前この時計の製造中止を決定した。結果として、それ以来スピードマスター FOISの需要は高まっている。この時計はバーゼルワールド 2012で初お披露目された。(限定版ではなく)このシリアルナンバーが刻印されたエディションは、宇宙飛行士ウォルター・“ウォリー”・シラーが1962年10月3日にシグマ 7 ミッションで着用したオメガ スピードマスター Ref.CK2998をベースとしている。 

オメガ スピードマスター “ファースト オメガ イン スペース”

というわけで、この時計は39.7mmのステンレススチール製ケースとストレートなラグを備えた、クラシックなオメガ スピードマスターの現代版なのである。これは従って42mmのムーンウォッチより著しく小さい。加えてオメガはこの時計にCK2998に使われたクラシックな針を採用。より正確に言うと、オメガはCK2998の異なるバージョンの針を採用したのだが、全体的な結果には目を見張る。この特別なシリアルナンバー付きのスピードマスターのChrono24での提示価格は昨年よりも上昇しており、現時点で約68万円から100万円の間である。ほどほどの価格で入手できたなら、この時計が良い投資対象となる可能性は高い。 

2. ゼニス クロノマスター A384 リバイバル ルパン3世 セカンドエディション

2020年のゼニス クロノマスター A384 リバイバル ルパン3世 セカンドエディションは、より長い時間をかけて価値が上昇する可能性を持つ時計だ。おそらく、コレクターたちがこの時計がどれほど特別なものなのかに気づくには、少々時間がかかるだろう。では、なぜこれがそんなにも特別なのか?まず、ゼニス(ZENITH)は自社のモダンなアイコンであるA384の3つの異なるバージョンを、日本の漫画&アニメシリーズの『ルパン三世』からインスピレーションを得て作った。それ自体が特別でないというのなら、3つの異なる文字盤は間違いなく特別である。最初のバージョンはブラック&グレーの文字盤にゴールドのアクセントが効いたもの。著者のお気に入りである2本目のバージョンは、見事なホワイトの文字盤にブラックのインダイヤルが備わっている。最後にして最も壮観なバージョンは、先の2つの文字盤を組み合わせたものであり、まさしく真っぷたつに割れる。3番目が最も壮観ではあるが、これは最も意見の分かれるモデルでもある。だが、間違いなくチェックしてみる価値のあるものだ。 

The Zenith A384 Revival Lupin The Third – 2nd Edition
ゼニス A384 リバイバル ルパン3世 セカンドエディション

最も象徴的で最も将来のコレクション価値が上がる可能性を持つものは、セカンドエディションである。確かにゼニスがホワイトの文字盤にブラックのインダイヤルを持つA384を作ったのはこのときだけではないが、このモデルのようなものは他にない。スタンダードなゼニス クロノマスター A384 リバイバルは、ホワイトの文字盤にブラックのインダイヤルを持ち、かつタキメーターを備えたブラックのアウターリングもある。そのうえ、真っ赤なセンタークロノグラフ秒針がある。しかしルパン3世セカンドエディションは、全て真っ白なホワイトの文字盤にブラックのインダイヤル、ブラックのセンタークロノグラフ秒針を備えている。非常にシンプルで素晴らしいデザインだ。それにより、この時計はアンティークの雰囲気を持ちつつ、これまで見たことのない現代の重要性を備えたものとなっている。価格は100万円から160万円までに及ぶ。この価格帯の低い方の金額で購入できれば、その価値はおそらく上がるだろう。この時計は200本限定生産であるだけでなく、ほとんどの人がまだその素晴らしさと投資対象としての可能性に気づいていないということもある。 

3. オメガ シーマスター 300 スペクター Ref.233.32.41.21.01.001

限定版のオメガ シーマスター 300 スペクターは、著者が前回の記事で取り上げたもう一つの投資対象として高い可能性を持つ時計だ。これは今までにリリースされた中で、最高のオメガボンドモデルであると広く見なされている。オメガ(Omega)ファン、ボンドファンどちらからも、現行のシーマスター ボンド ノー・タイム・トゥ・ダイよりもこちらのモデルの方が人気が高い。そのうえ、これはこのスパイが実際に作中で装着した初めての限定版ボンドモデルだったのである。オメガ シーマスター 300 スペクターは2015年に、ダニエル・クレイグ主演の4作目である『スペクター』の公開を記念してリリースされた。7007本全てが即座に完売となったわけではなかったが、過去7年間で需要と価格は着実に上昇してきている。 

オメガ シーマスター 300 スペクター

オメガ シーマスター 300 スペクターは同時代のスタンダードなオメガ シーマスター 300モデルとは異なる。まず、オメガは文字盤を変えた。12時の数字をなくし、ロゴの位置を少し上げた。さらにベゼルはスタンダードなダイビングベゼルではなく、第2タイムゾーンの時刻を確認するための12時間目盛を持つ。オメガはまた、アイコニックなロリポップ秒針を復活させた。時計をひっくり返せば、特別な “スペクター” の刻印が見える。生産本数の多さにもかかわらず、価格は上昇し続け、今では約130万円から160万円の間となっている。ダニエル・クレイグが “元” ボンドとなった今、これは彼が演じた素晴らしい007を思い起こさせる特別なタイムピースである。そのため、この時計の価格はおそらくは時間と共に上昇する可能性を秘めており、投資対象としての価値を持つのだ。 

4. モーザー ストリームライナー センターセコンズ

著者はこれまで、Chrono24マガジンで何度もH.モーザー(H. Mose & Cie)を取り上げてきた。このハイエンドブランドは急速に知名度を上げてきた、人気の小規模時計メーカーである。同社の最も人気の高いシリーズといえば、間違いなくストリームライナーだ。これは新世代のラグスポウォッチに属する。これはジェラルド・ジェンタによるロイヤルオークの素晴らしさからインスピレーションを得たカテゴリーではあるが、H.モーザーのようなブランドは、このジャンルに独自のひねりを効かせている。そのデザインは1920年代の高速鉄道であるストリームライナーから着想を得ているが、全体的な印象は非常に1970年代風である。しかし一旦手首に装着すると、このタイムピースは少しも時代遅れな感じがしないのである。おかしな話だが、ストリームライナーのデザインは全てのモデルに付いてくる、類いまれなブレスレットから始まった。しかしそれはブレスレットにとどまらず、ストリームライナーのモデルは全て、どんな点においても注目に値する。 

The H. Moser & Cie. Streamliner Centre Seconds
H.モーザー ストリームライナー センターセコンズ

絶対にチェックしたいモデルが、H.モーザー ストリームライナー センターセコンドだ。見事なデザインのケース、人の目を引きつけるグリーンの文字盤、優れた自社製ムーブメントがそろうこの時刻表示のみのモデルは、将来のアイコンとなるポテンシャルを持っている。このモデルは2020年にデビューし、需要は度を超えて急上昇。この時計は厳密には限定版ではないのだが、現在では同ブランドでは販売されていない。結果として、一番確実なのはChrono24マーケットプレイスで探してみることである。もともとの定価は286万円だが、現時点での販売価格はおよそ370万円から480万円の間となっている。価格はこの範囲内に落ち着いており、これはストリームライナー センターセコンドが将来、素晴らしい投資対象となることを示している。 

5. チャペック アンタークティック

このリストの最後の時計は、昨年の投資対象になりそうな時計5選のリストでも取り上げられたものである。だが、チャペック アンタークティック(Czapek Antarctique)はコレクターたちの間で信じられないほどの人気を誇ることが証明されたため、再度リストに入れられる必要があると判断した。前回、著者は特にテール・アデリーモデルを取り上げたのだが、今や全てのアンタークティックモデルの価値が安定しているといって間違いない。同ブランドはその最初のラグスポウォッチ、アンタークティック テール・アデリーを2020年に発表した。その後、アンタークティック パサージュ・ドゥ・ドレークをリリースし、それはすぐさま完売。より小さなパサージュ・ドゥ・ドレーク Sとフローズン・スター Sがそれに続いてすぐに完売となり、アンタークティックはこのブランドの間違いないヒットシリーズであることを証明した。 

The Czapek Antarctique Terre Adélie Lifestyle
チャペック アンタークティック テール・アデリー ライフスタイル

前回の記事で、著者はオリジナルのチャペック アンタークティック テール・アデリーがいかにこのブランドの素晴らしさを完璧に体現しているかを説明したが、今では、チャペック アンタークティックの驚くべき全バージョンがそろっているのだ。この素晴らしいデザインのスポーツウォッチは、優れた自社製ムーブメントを持ち、非常に万能である。多くの異なる文字盤カラーがそろい、そのどれもがまさに見事だ。現行のアンタークティックモデルの価格はだいたい450万円から600万円ほどで、昨年から比べると上がっている。入手が困難なことを考えると価格は急には下がらないはず。私個人の意見では、アンタークティックは近年で最もエキサイティングな新作時計であり、非常に高い評価を得ているのもうなずける。  

というわけで、これが私たちが選んだ2022年後半の素晴らしい投資対象になりそうな高級時計5本である。それでは、あとはクレジットカードを手元に、良い時計に出会えることを願っている。 


記者紹介

Jorg Weppelink

こんにちは、ヨルグです。2016年からChrono24で記者として執筆しています。しかし、Chrono24との関係はそれ以前からあって、時計好きになったのは2003年頃からです。私の友人 …

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