2022年02月18日
 8 分

5つの異なる価格帯から入手できる、普段使いに最適な時計

Troy Barmore
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時計コレクターの世界には、しばしばささやき声で語られる伝説的なタイプの人たちがいる。この人たちについては、ある時は畏敬の念をもって語られ、ある時は恐怖の念をもって語られることもある。また、そういう人たちが実在することを信じない人もいる。これは、一体どんな人たちなのか。それは、1本だけ所有する究極の万能時計の持ち主にほかならない。 

しかし、たった1本の時計で満足できるはずがない。そもそもどのように決めればいいのだろうか?結局のところ、究極の時計は1つの時計でしかないので、多目的でダイナミックでなければならない。また、週末にポロシャツやおしゃれなディナージャケットに合わせたりと、どんな場面でも使える時計である必要がある。もちろん、ドレスコードの常識の一部を破ることになるが、それも楽しみのひとつではないのか。  

まとめると、この1本の時計は、毎日着用できてかつ、単なる普段使いの時計以上の感動を与えるものでなければならない。そこで、毎日でも身につけられる5つの時計を、価格帯も全く異なる5つのブランドで紹介していく。 

1. 12万円以下の普段使いに最適な時計

セイコー スピリット

セイコー スピリット: 12万円以下の万能時計として選びたいモデル
セイコー スピリット: 12万円以下の万能時計として選びたいモデル

セイコーは、その歴史的な影響力と革新性にもかかわらず、時計愛好家の間では好き嫌いがはっきり分かれるブランドであった。その一方で、セイコーを安っぽい、大量市場、または使い捨てのブランドと見る人もいる。その背景には、少なからず1970年代から1980年代にかけてのクォーツショックにおけるセイコーの役割に関係していることは間違いない。しかし、近年ではこの日本の高級時計ブランドに対する熱意は飛躍的に高まっており、セイコーは1本持ちの万能時計として、予算的にも最適な選択肢となっている。  

中でも人気 (そして価格) が最も急上昇しているのが、セイコー スピリットSARB033である。もともと日本国内市場 (JDM) 専用に作られたSARBシリーズは、転売者を通じて米国に進出し、カルト的な地位を築いた。2018年に製造中止となった後、SARB033は当初の約2万3千円という価格帯から跳ね上がり始めた。グランドセイコーのキャリバーである6R15を搭載し、”ベイビーグランドセイコー” とも呼ばれるSARB033は、近年のセイコー時計の中で最もエレガントなモデルのひとつである。ブレスレットでもストラップでも、この時計はロレックス デイトジャストの代用のような存在でありながら、その価格は数分の一となっている。そのため、普段使いに最適な時計なのだ。  

2. 60万円以下の普段使いに最適な時計

オメガ シーマスター プロフェッショナル 300M

オメガ シーマスター プロフェッショナル 300M: 60万円以下の万能時計として選びたいモデル
オメガ シーマスター プロフェッショナル 300M: 60万円以下の万能時計として選びたいモデル

実のところ、この普段使いの時計リストはすべて、数十年にわたるオメガ シーマスターに過ぎないかもしれない。1940年代後半にこのシリーズが誕生して以来、オメガ シーマスターの名を冠したモデルやバリエーションは数え切れないほどあり、中には互いに見た目の面でほとんど関連性のないものもある。おそらく、シーマスターが何種類存在したかを正確に言える人は誰としていないだろう。また、私の同僚である記者のドナートは、60万円以下の万能時計としてオメガ アクアテラを推薦している。  

しかし、一つだけ確かなことは、1995年にピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンド役を演じた際、彼がブリオーニの高級スーツに合わせた時計は、ロレックス サブマリーナではなく、オメガ シーマスター プロフェッショナルであったということである。シーマスター プロフェッショナルの特徴的な針、(年々進化している) 文字盤のデザイン、ヘリウムエスケープバルブは、『007 ゴールデンアイ』で使用されたクォーツバージョンから数回のデザイン変更と改良が施されている。このような進化の結果、オメガ シーマスター プロフェッショナル 300Mは独自のアイコンとなり、完璧な万能時計となったのだ。  

3. 120万円以下の普段使いに最適な時計

カルティエ サントス デュモン

カルティエ サントス デュモン: 120万円以下の普段使いに最適な時計として選びたいモデル
カルティエ サントス デュモン: 120万円以下の普段使いに最適な時計として選びたいモデル

時計ブランドや特定のモデルが好まれ、完璧な万能時計として選ばれるのには、さまざまな要因がある。その代表的なものが、品質、デザイン、そして歴史だ。カルティエは、世界で最も名高い歴史を持つ宝飾ブランドのひとつであるだけでなく、高級時計の製造においても魅力的な歴史がある。最も有名なモデルはタンクだが、最も画期的なのは カルティエ サントスだろう。 

ルイ・カルティエが友人で飛行家、社交家でもあったアルベルト・サントス・デュモンのためにデザインしたこの時計は、その後サントスの名を冠した、腕への装着用に開発された初のメンズウォッチ、そして世界初のパイロットウォッチとなったのだ。長年にわたって多くの改良や変更が行われてきたが、デザイン言語はほぼ変わっていない。そのセンスの良いルックスと一体感のあるブレスレットのスタイリングを考えると、サントスが他の高級スチール製スポーツウォッチほど高価でなく、入手不可能でないことが不思議なくらいだ。エレガントでスリム、そして見事なまでにシンプルで、環境や服装を選ばず、決して見劣りすることはない。そして何より、(今のところは) 実際に店舗に足を運んで購入できる時計でもあるのだ。このラインは、歴史がありながら、それなりの値段の時計が欲しいという人にはぴったりな普段使いの時計ばかりだ。もし120万円以下でお探しであれば、カルティエ サントス デュモンを検討してみてほしい。  

4. 170万円以下の普段使いに最適な時計

ロレックス サブマリーナ Ref.16610

ロレックス サブマリーナ Ref.16610: 170万円以下の万能時計として選びたいモデル
ロレックス サブマリーナ Ref.16610: 170万円以下の万能時計として選びたいモデル

ドレスウォッチといえば、時刻表示のみ、2針、日付表示なし、そしてシャツの袖の下にもすんなりと収まるほどの薄さなど、シンプルでエレガントな時計が定番のスタイルである。そのため、ダイバーズウォッチにドレスアップを求めるのは、少し不合理な気がする。しかし、時にはルールを破った方がはるかに面白いことがある。それができる時計があるとすれば、ロレックス サブマリーナである。もし疑問があるなら、ジェームズ・ボンドに聞いてみてほしい。007はおそらく毎日ロレックス サブマリーナー着用しているはずだ。  

1954年の発売以来、ロレックス サブマリーナには30種類近いリファレンスが存在し、中でも最も希少なモデルは8桁の価格に達することもある。多くの純粋主義者が5513や14060のようなノンデイトのリファレンスを好む一方で、ロレックス サブマリーナ Ref.16610は最も ”お手頃な” モデルの一つである。運が良ければ約115万円以下の出品も見つかるかもしれないが、約170万円前後でボックスと書類付きのものが手に入る。このリファレンスは、ロレックスのデザインにおける魅力的な時代を象徴するものでもある。アルミ製ベゼルやドリルドラグなど、ダイバーズツールウォッチの歴史に残るディテールはそのままに、ホワイトゴールドの夜光インデックスが、後にサブマリーナが高級時計のステータスシンボルとなることを暗示している。クラシックなブラックダイヤルと39mmのケースサイズは、どんな服装やシチュエーションにもマッチし、ぴったりの万能時計となっている。タキシードなどの正装にも似合うダイバーズウォッチは、おそらくこのモデル以外にはおそらくないだろう。 

5. 1150万円以下の普段使いに最適な時計: ラグジュアリー部門

F.P.ジュルヌ クロノメーター・ブルー

F.P.ジュルヌ クロノメーター・ブルー: 1150万円相当の万能時計として選びたいモデル
F.P.ジュルヌ クロノメーター・ブルー: 1150万円相当の万能時計として選びたいモデル

最後の1本は予算を上げて、1000万円以上で何が手に入るか見てみたい。F.P.ジュルヌは、スイスのジュネーブに本拠を置く独立系時計メーカーとして長い間高い評価を得ている。1999年の創業以来、F.P.ジュルヌは数々の賞を受賞しており、中でもジュネーブ時計財団から権威ある「エギーユ・ドール」大賞を (3度!) 受賞している。ジュルヌは現代において最も壮大で複雑な時計のいくつかを生み出してきたが、その中でも最も根強い人気を誇る時計のひとつがクロノメーター・ブルーであることに変わりはない。  

その独特なブルーの文字盤、ローズゴールドのムーブメント、ダークグレーのタンタルケースを備えたクロノメーター・ブルーは、お金で買える時計の中で最も印象的な時刻表示のみのモデルのひとつである。しかし、F.P.ジュルヌとよほど良好な関係がない限り、この時計を手に入れるには多額の資金が必要になる。小売価格が約230万円台半ばであるにもかかわらず、流通市場での価格は8桁に達することもある。シンプルな時計としては破格の値段だが、これはなんと立派な時計なのだろうと言いたい。その繊細さ、エレガンス、そして見事な文字盤は、究極の普段使いの時計言えるかもしれない。それは、いつでも身に着けられて、どんな服装にも合う時計。要するに、クロノメーター・ブルーはまさに完璧な万能時計なのだ。もし予算に余裕があり、他のモデルでは満足できないのであれば、ぜひこの時計を検討してみてはいかがだろうか。  


記者紹介

Troy Barmore

私は幼い時から時計ファンでした。その熱中が始まったのは、兄のジラール ペルゴ クロノグラフを買うという目的のためだけに夏休みのアルバイトを引き受けた時です。それ以来、私の好みはヴィンテージ ツールウォッチや現代的な独立系ブランドにまで及んでいます。

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