高級時計に関心を持ち始めた方は、定評ある高級ブランドや歴史を持つマニュファクチュール、そして独立ブランドの多様性に直面することになる。大抵の人が広告や周りの友人などから知っている時計は、市場が実際に提供しているものの一部だけ。そのため、最も有名な業界最大手のコレクションの1つが、時計趣味の世界に足を踏み入れる入り口となる。
しかし、初めての時計が本当にずっと憧れていたモデルであるかどうかは別の話である。同じブランドの時計を着用している人が多すぎる。時計によってもっと自身の個性を表現したい。もしくは、単に夢の時計が手の届かない価格帯にある。おそらくその様な考えを一度は持ったことがある人は多くいるだろうし、ある特定の時計に代わる他の (もしかしたらより優れた) 選択肢はないのだろうか、という疑問を投げかけたこともあるかもしれない。この新しい記事シリーズでは、有名モデルの代わりにおすすめする他モデルを紹介し、その共通点と違いについて見ていきたい。
第1回はChrono24で最も売れている時計、デイトジャストの代わりにおすすめする他モデルを紹介する。有名人であっても一般人であっても、この定番ロレックスは、その仕様に応じて、上品で時に人目を引くドレスウォッチ、またはスポーティーな日常時計としての機能を満たしてくれる。
ヴィンテージな選択肢: チュードル プリンス オイスターデイト
デイトジャストの代わりにおすすめする最初の1本は、デイトジャストの外観に近い時計をお探しの方にぴったりのモデル。チュードル プリンス オイスターデイトの価格はヴィンテージ時計として非常に魅力的で、さらには多くの人がデイトジャストを連想するフレーテッドベゼルも付けられている。チュードルはロレックス創業者のハンス・ウイルスドルフによって、ロレックスの廉価ブランドとして作られた。それは、デザインの共通性からも見て取ることができる。
チュードルが次第にロレックスから自由になり、独自のデザインとムーブメントによって世間を驚かせ始めて以来、同ブランドの人気はかつてないほどまで高まっている。それによってチュードルのヴィンテージモデルも恩恵を受けているが、その価格はまだ十分許容範囲に留まっている。
さまざまなモデルバリエーションの多様性に関しても、プリンス オイスターデイトはデイトジャストに引けを取っていない。時計の年代によってその直径は小さくなるが、小型サイズは現在のトレンドでもあるので、これがデメリットになることはないだろう。
まとめ: デイトジャストの代わりとなるできる限り近いデザインの手頃なモデルを探していて、ロレックスの格式高い王冠マークが文字盤になくても構わないという方には、プリンス オイスターデイトを強くおすすめしたい。
スポーティーな選択肢: オメガ シーマスター アクアテラ
ロレックスの人気に対抗できるブランドがあるとすれば、それはオメガだろう。スウォッチグループに属するオメガのシーマスター アクアテラはスポーティーでありながらも上品な時計で、デイトジャストファンにも非常に気に入られている。大きな矢先を持つ特徴的な分針、ヨットのチーク材外板を想起させる文字盤のテクスチャー、ラバーストラップ付きのモデルオプション。それらの要素がアクアテラをスポーティーな時計に仕立てている。
ロレックスでは堅牢なねじ込み式の裏蓋が使用されているためムーブメントを見ることはできないが、アクアテラではサファイアクリスタルの裏蓋を通してコーアクシャル機構を見ることができる。繊細なムーブメントの動きを定期的に楽しみたい方にとって、これは絶対条件だろう。
日常的実用性に関して、現行のデイトジャストとアクアテラは70時間および60時間のパワーリザーブと互いに引けを取っていない。オメガの最新のコーアクシャル機構は、データ上では非常に高い耐磁性によって一歩リードしている。しかし、同様に複数の耐磁性コンポーネントが使用されているデイトジャストに対し、これが日常生活における具体的な利点となるかどうかはわからない。
まとめ: シーマスター アクアテラは、デイトジャストの代わりとなるスポーティーな時計をお探しの方にとって素晴らしい選択肢と言える。技術好きな時計ファンも、この革新的なコーアクシャル機構とシースルーケースバックによって満足できるに違いない。アクアテラの価格は平均してデイトジャストより低い。また、貴金属製のモデルでも手に入れることができるが、その場合もいくつかの純金製デイトジャストと異なりスポーティーな外観を変わらずに保っている。
意外な選択肢: ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ
このおすすめは類似性に関してデイトジャストから少し遠ざかり、その価格帯も少々異なる。しかし、まずはヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズについて簡潔に説明しよう。ヴァシュロン・コンスタンタンは250年以上の歴史を持ち、オーデマ・ピゲ、パテック フィリップと並び世界三大高級時計メーカーの1つと呼ばれている。そして「Holy Trinity」または「Big Three」などの愛称は同ブランドの重要性を暗に示している。しかし、オーデマ・ピゲやパテック フィリップが時計業界の外においてもある程度の知名度を獲得した一方、ヴァシュロン・コンスタンタンはまだ少し不当に軽んじられているところがある
これは、オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク、パテック フィリップ ノーチラス、そしてヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズの比較にも現れている。ロイヤルオークとノーチラスが高級時計のアイコンとして見なされており、ほとんど手に入らない (もし手に入るとしてもその価格は定価より非常に高い) 一方で、オーヴァーシーズの市場価格は抑えられたままである。
オーヴァーシーズの原点は、同マニュファクチュールの創立222年を記念して有名時計デザイナーのヨルグ・イゼックがデザインした、限定モデルのヴァシュロン・コンスタンタン 222にある。そのデザインはジェラルド・ジェンタの一体型ブレス付き高級ステンレススポーツウォッチ、ロイヤルオークとノーチラスを明確に受け継いでいた。そして、1996年になって222のDNAを受け継ぐモデル、オーヴァーシーズが誕生した。この時計の主要なデザインの特徴は、ヴァシュロン・コンスタンタンのブランドロゴを取り上げたマルタ十字型のベゼル。最新のオーヴァーシーズ モデルには、複数のストラップが同梱されており、特許を受けたクイックチェンジシステムを持つ、特徴的なミドルリンク付きステンレスブレスがある。ジュネーヴシールが刻印された時計として、オーヴァーシーズは構造および仕上げに関する厳しい基準を満たしている。
なぜオーヴァーシーズがデイトジャストの代わりとして選ばれたのか？デイトジャストに比べ、オーヴァーシーズは断然スポーティーで、その価格は大幅に高く、知名度は低い。しかし、それこそがこの時計を選んだ理由でもある。ロレックスが時計業界以外で時に疑わしき名声を得ている一方で、ヴァシュロン・コンスタンタンはいまだに過小評価されている。さらには、高級ステンレス製スポーツウォッチの中でもオーヴァーシーズは正当に評価されていない。オーヴァーシーズを選ぶ人が、節約したり、他人を感心させるために時計を購入するのではないことは間違いない。それは単に自身のスタイルを持っている証なのだ。
