ユンハンス

ユンハンスは伝統あるドイツの時計メーカーとして有名で、かつては世界最大の時計製造会社でした。ドイツのバーデン＝ヴュルテンベルク州にあるシュランベルクに拠点を置くユンハンスは、中でも ソーラー電波時計開発における先駆的な偉業を成し遂げたことで、世界的な名声を浴びました。現在に至るまで、このハイテク時計はユンハンスにとって大切な礎石とされています。それらのモデルは「メガ」という名前によって見分けることができます。

さらに、ユンハンスは高級腕時計の分野でも活躍しています。恐らく最も有名なシリーズはマックス・ビルでしょう。このシリーズは、バウハウスデザインの巨匠と呼ばれるマックス・ビルに因んで名付けられ、そのデザインはシンプルで機能的なエレガントさを持っています。フォームとマイスターの両コレクションの時計は、本質にまで削られたスタイルを持ち、かつスポーティーな印象を与えます。

コレクション パイロットとドライバーでは、レトロ風の時計が提供されています。パイロットコレクションには、典型的なパイロットクロノグラフがラインナップされており、ドライバーコレクションの時計は昔のレーシングカーのコックピットからインスピレーションを得ています。

シンプルかつエレガントで読みやすい。これがマックス・ビル コレクションで提供されている時計の特徴です。そのデザインは、グラフィックデザインや彫刻、建築など多分野で活躍したバウハウスの芸術家、マックス・ビルによって考案されました。彼は1956年にキッチン用時計のデザイン考案を任されました。その5年後、それと同じデザインの腕時計が発表され、 そのデザインは現在まで変わらず受け継がれています。文字盤上ではバーインデックスが細い線によって描かれており、はっきりとしたアラビア数字が整って配置されています。この時計は見た目ごくさりげないデザインに見えますが、よく見てみるとどれだけディテールにこだわって作られているか分かります。特に目を惹くのは、数字の4のデザインです。38mmのステンレス時計では数字が全く使用されておらず、さらにシンプルさが際立っています。マックス・ビルの自動巻きキャリバー搭載モデルは約9万円～10万円で販売されており、クォーツ式モデルは約5万円でご購入いただけます。

マックス・ビル メガ のモデルには、ユンハンス独自の電波技術が搭載されています。外見的には、文字盤上に「MEGA」の刻印が施されている以外、この時計の機械式モデルと変わりません。ムーブメントには、高精度の多周波電波機構が搭載されています。この機構により、世界のどこにいても正確な時刻が表示されます。このハイテク時計のスタンダードモデルの価格は、約8万円になります。

マックス・ビルには クロノグラフ モデル も提供されており、ユンハンスはこれをクロノスコープと呼んでいます。ケースサイズは3針モデルよりもやや大きめの40mmで、機構にはETA社のバルジュー7750ベースの自動巻きキャリバーJ880.2が搭載されています。文字盤上の12時位置には30分カウンター、6時位置には12時間カウンターが配置されています。また、3時位置には日付表示も備えられています。この美しいタイムピースは、約16万円～18万円で提供されています。

フォーム コレクションには4つの基本タイプがあります: 自動巻きの3針モデルであるフォーム A、クォーツ式のクロノグラフであるフォーム C、同じくクォーツ式のモデルであるフォーム クォーツとフォーム レディです。このコレクションで提供されている時計にも、バウハウスデザインが表現されているのは一目瞭然です。しかし、フォームの時計では分目盛り部分に穴が開けられており、これが時計にややスポーティーな印象を与えています。コレクション内で低価格な部類に入るのはクォーツ式モデルです。フォーム クォーツおよびフォーム レディは、約4万円でご入手いただけます。フォーム Cはそれより多少高く、4万5000円～5万円ほどで提供されています。自動巻きモデルであるフォーム Aはさらに高価格で、約8万5000円～10万円にてご購入いただけます。

マイスターコレクションは、ユンハンスのプログラムの中でも長い歴史を誇ります。1930年代に、このメーカーは同じ「マイスター」の名を持つ、非常に高級なムーブメントを搭載した時計を発売しました。現行のシリーズはその時代へのオマージュとなっています。コレクション内で提供されている時計の多くには、ETA、ETAバルジュー、ソプロードなどの機構をベースにした、機械式ムーブメントが搭載されています。また、ムーンフェイズやクロノグラフ、デイデイト、パワーリザーブ表示などのコンプリケーションを備えたモデルも提供されています。さらに、 クロノメーター認証ムーブメントを搭載する特別に高精度なタイムピースも提供されています。価格はシンプルな3針モデルで約13万円、クロノメーターモデルで約17万円、特別版のマイスター クロノスコープ テラッセンバウで約24万円になります。

マイスターシリーズの中でも特別なのは、マイスターメガです。このモデルの中で時を刻むのは電波機構J101.65で、この機構は世界中の5つの異なる電波を受信し、これを時刻情報へ変換します。時計が標準電波を受信している場合の 最大年差は0.02秒です。さらに、電波受信がなくてもマイスターメガの年差は8秒以内です。この大変正確な時計は、約9万5000円～12万円でご入手いただけます。

コレクション マイスターパイロットとマイスタードライバーは、「レトロ」な時計を提供しています。価格約24万円の マイスターパイロットは、自動巻きパイロットクロノグラフで、これは1955年に創設された新しいドイツ連邦軍に供給されたモデルを思わせます。当時のモデルと同じく、この時計のデザインは航空機内コックピットの計器からインスピレーションを得ています。明瞭な構造と、夜光の針とインデックスが、そのデザインの主要な特徴です。さらに、特徴的な12角形の手でつかみやすい回転ベゼルも50年代のモデルと変わっていません。

マイスタードライバーコレクションのデザインは、オールドタイマー自動車のタコメーターからヒントを得て考案されました。文字盤のデザインに限らず、ベージュ、ライトブラウン、グレー、ターコイス色のレザーベルトも、歴史的な自動車の内装を連想させるものになっています。そのレトロなスタイルに合わせて、搭載されている機構も機械式のみです。時計のタイプには自動巻き、手巻きキャリバー、デイデイト表示付きのクロノグラフがあります。仕様とモデルによって、マイスタードライバーは約10万円～18万円で提供されています。

モダンなタイムピースをお探しの方には、電波/ソーラーコレクションが最適です。このコレクションには最新の電波/ソーラー技術が搭載されており、セラミックなどのモダンな素材を使用した時計がラインナップされています。時計のデザインはスポーティーかつ現代的に仕上げられています。シリーズ内の時計の特徴は、日付のデジタル表示にあります。時刻の表示は従来どおりアナログです。

このコレクションの中で最もスポーティーなモデルは、ケースサイズ42mmの スペクトルム メガソーラーです。価格約10万円で販売されているこのステンレスとセラミック素材の時計には、最新の電波/ソーラー機構が搭載されています。太陽光線なしの状態でのパワーリザーブは最大21ヶ月です。また、ミラノ メガソーラーとフォース メガソーラーにもこれと同じ機構が搭載されていますが、ミラノのケースはステンレス製で、フォースにおいてはケースとブレスレットが完全にブラックセラミックで出来ています。このため両モデル間の価格差も大きく、ミラノは約3万5000円～6万円で、フォース メガソーラーは約14万円で販売されています。

1972 クロノスコープ ソーラーとクォーツは少々風変わりなモデルです。そのデザインは、ユンハンスが提供した 1972年ミュンヘンオリンピック公認ストップウォッチに似せられています。この両モデルにおいては、5分の1秒単位の正確さでタイムを計ることができ、ベゼルは逆方向回転防止です。ソーラーモデル (約7万円) にはアラーム機能が備わっており、クォーツモデル (約13万円) にはその代わりに24時間表示が搭載されています。

ユンハンスの歴史は、エアハルトとクサヴィア・ユンハンス兄弟がドイツ南西部のシュランベルクに時計製造会社を創立した1861年に始まりました。設立当初、メーカーはシュヴァルツヴァルト地方で時計製造を営む他の工房に供給するための時計パーツの製造に専念していましたが、1866年に自社製の時計の製造を始めました。同社初の大ヒット商品となったのは、1870年に発売された目覚まし時計でした。しかし、メーカーは懐中時計分野においてはなかなか頭角を現すことができませんでした。その後、トーマスハラーAG社との合併を機に、この分野においてもユンハンスの活躍が軌道に乗り始めることになりました。

それ以来ユンハンスの勢いは止まらず、1903年に同社は 世界最大の時計メーカーとなりました。当時ユンハンス社は3000人の従業員を抱え、年間300万本以上の時計を製造していました。1928年に腕時計の製造を始め、初期の腕時計にはテューリンゲン州の都市ルーラで作られたムーブメントを使用していました。自社製キャリバーを搭載した腕時計が登場したのは1930年以降です。

第2次世界大戦中、ユンハンスはヒューズなどの軍事用品や軍用飛行機の機内計器などの生産に従事しました。戦後、同社は再び時計製造業を開始し、1950年代にはロレックスやオメガに並び、世界第3位のクロノメーター生産数を誇る大会社となりました。1956年、ユンハンスはニュルンベルクのディール社に吸収されますが、これがユンハンス時計の成功に影を落とすことはありませんでした。それどころか、同社はマックス・ビルシリーズや初の自動巻きクロノメーターキャリバーJ83の開発によって、数々の金字塔を打ち立てました。

1960年代初頭、ユンハンスはクォーツの分野に強く取り組むようになり、1967年にクォーツ式の卓上時計、アストロ・クロンを発表しました。その3年後、このメーカーは 初のドイツ製クオーツ式腕時計である、アストロ・クオーツの製造を実現しました。それ以降ユンハンスは、世界初の電波腕時計であるメガ1や、初の電波/ソーラー式腕時計メガセラミック ソーラーの開発など、いくつかの画期的な先駆的偉業を成し遂げてきました。

同社の時計部門が2000年にエガナ・ゴールドファイル社に売却され、8年後に倒産の危機にさらされた後、ユンハンス社は2009年以降、シュランベルクの企業家であるシュタイン家の所有下にあります。